見出し画像

街角の盗電師【アジアンドキュメンタリーズ】

 先月末から来月になったら入ろうと心に決めていたアジアンドキュメンタリーズ。鑑賞一本目は『街角の盗電師』

 300万人の人が暮らすインドの工業都市・カーンプルでは、電線に別の電線を繋ぐことで自宅に電気を引いてくる電気のタダ乗り"盗電"が横行していた。この盗電をするために違法な配線を行うことを生業とするロハ・シン。そして、電力会社の最高責任者として赴任した女性官僚マヘシュワリはこの実情を変えようと強行策に出る。市民と電力会社の闘いを描いたドキュメンタリーだ。

 まず惹かれたのが"盗電師"という、RPGでそういうジョブがあったら真っ先にジョブチェンジしそうなワード。電力会社が供給している電線に別の線を繋ぐ、つまり電線のタコ足配線だ。その違法配線を市民より請負い電気を通す裏の仕事だ。ロハ・シンはこの仕事に誇りを持っており市民の為になっていると信じて疑わない。違法配線し過ぎて蜘蛛の巣のように絡みあった剥きだしの電線。ショート等を起こし停電することも少なくない。すぐさまそれを復旧させるロハは、市民の英雄的扱いだ。泥棒だけどw市民の言い分は電力会社と契約してもすぐに停電するし使い物にならないと言うものだった。

 盗電され続けている電力会社は当然財政難に陥る。その為設備は整わない。だからすぐ停電するし復旧にも時間がかかる。負のループに陥っているわけだ。最高責任者に就任したマヘシュワリは盗電を行っている市民に対し罰金を課し、正規に契約を結ばせるという当たり前の対策を打つ。

 市民は満足な電力の供給を受けられず憤慨する。そしてその怒りを政治に利用する政治家。様々な人間模様の中、一体誰が正義で、誰が悪なのか分からなくなる。

 大きな家に住み、良い服を着て家族と幸せそうに暮らしているマヘシュワリ。自身の信念に基づいて変革を行うことに必死。

 日々食いつなぐのに必死な市民。食べるのに必死で電気や水等ライフラインに使うお金が無い。

 その市民の暮らしを守るために存在する政治家は選挙に必死。市民にさもありなんな公約を宣言して媚び諂い、選挙が終わり当選すれば公約は無視。

 変わろうとしても変われない。変わって欲しくても変わらない。結局変わる術を持たない市民。"盗電"はそんな中で編み出された工夫だったのかもしれない。

 結局1年経っても何も変わらなかった。印象に残ったのは呑んだくれたロハの寂しく切ない背中だけだった...

では、きっと、またいつか

画像1


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?