震災時に食べたうどんの味
震災の時に食べたものって、なんであんなに美味しいんだろう。
地震で停電が続いて、不安な気持ちでいっぱいだった時、
地元のおんちゃんが、停電でしかも寒い中「がんばろうなぁ」と声をかけながら見回りにきてくれて、
差し入れにうどんを持ってきてくれたのは本当に嬉しかった。
お湯で沸かすだけの普通のうどんだし、特別味付けにこだわったわけでもない。私がべらぼうにうどん好きだというわけでもない。
それでも、世界で一番美味しいうどんだと、本気で思った。
初めて、うどんを食べて泣いた。めちゃくちゃ噛みしめた。
というか、食べ物を食べて泣いたのは、あれが初めてだったな。
たったそれだけの出来事と言えばそれまでだけど。
あの時のうどんの味から、本当にいろんなことを思い出す。
思い出すと、想いがあふれて、何から話したらいいか分からず
思わず言葉に詰まってしまう。震災の日は、いつだってこうだ。
いくつもの抱えていた想いが、あの日を境に届かなかった人がいて。
あの日を境に、届けたいという気持ちが芽生えた人がいて。
命を落とした人と、生き残った人、生死の分かれ目ってなんだったんだろう…と今でも分からないことがたくさんある。
生きたかった人の分まで、毎日を味わって、噛みしめよう。
ああ、うどんが食べたくなってきた。こう思えることも、幸せである。
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