映画『LEGOムービー2』感想

『スパイダーバース』評へ

 さて。スパイダーバース評で予告していた通り、観てきました『LEGOムービー2』(以下『レゴ2』)。
 監督マイク・ミッチェル。原案/脚本/製作はご存知フィル・ロード&クリストファー・ミラー。
 物語は前作の数年後。エメットたちの前に謎の宇宙人が現れ、ルーシーと仲間たちを連れ去ってしまう。仲間たちを救うため、誰よりも“フツー”なエメットは、再び“選ばれし者”として立ち上がる。

 予告

 ヒット作の2をやる難しさは今更いうまでもないけれど、前作で“上の人”なる大オチをやってしまい、このあとどーすんだ? と心配していたファンも多かったろうとは想像に難くない。しかし、そこをいい意味で完全に裏切ってくれたのはさすがの一言。
 簡単に説明すると、前作のラストがそのまま本作のOPに繋がり、いちおう数年という時間が経過するものの、ほとんどそのまま奔流のようにストーリーが展開してゆく。
 前作で明かされたメタ構造はがっちりとテーマに絡み、兄妹喧嘩というミニマムな出来事を語りつつ、実はとても大きな話をしている脚本の見事さにはクラクラさせられる。レゴ世界の住人にとっては、神々の代理戦争にいきなり放り込まれた感はあるだろうけども。
 映像面では前作がかなり極まっていたためか、さほどの驚きはなかったものの、「こいつヤベェ! 味方キャラなのに!」という意味でお気に入りだったユニキャットがさらに“ヤバイ”モードチェンジを披露してくれたので満足。

 ひとつツッコミたかったのは、中の人ネタ。ジュラシックワールドで主人公がラプトルを制止するあの有名なシーン、吹替版だったから「ああ、クリス・プラットが声やってるのね」とわかるまですこしかかってしまったじゃあないか。
 もっとも、海外の俳優の肉声を聞き分けるダメ絶対音感はさすがに持っていないので、字幕だとさらにわかんなかっただろうなとは思う。『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』あたりでは、クリス・プラットの役に、本作ではバットマン他を担当している山寺宏一が声をあてているので、なおのことややこしい。
 中の人といえば、ここからはすこしネタバレになるけれど、主人公エメットと同じ人が演じるレックス・デンジャーベストというキャラクターが、本作では重要な鍵を握る。
 レックスは考古学者にしてカウボーイにして恐竜の調教師。長らくアメリカで理想とされてきたタフな男そのものである。彼と対峙することで、本作はアメリカにかけられた呪いをも解こうとしている。『シェイプ・オブ・ウォーター』においてストリックランドが「いつまで証明し続ければいいのです?」と叫んだあの呪いだ。
 よく見れば、同じ家に暮らす兄妹であっても、性別が違えば買い与えられるオモチャも微妙に違うと気づくだろう。両親にはまったく悪意のない、こんな些細な部分からも、すでにステレオタイプな人格形成は始まっているのである。
 だが、レゴの自由な創造性は、そんな垣根さえ易々と飛び越える可能性がある――と、おそらくそこまで見越して製作されているであろうことが、また本作の恐ろしいところなのだ。

 最後に。
 音楽では「すべてはサイコー」でおなじみのあの曲はもちろん、「この歌頭にこびりつくー♪」を延々繰り返す洗脳ソングも必聴。原題は『Catchy Song』というらしい。
 ほんとに。冗談抜きで。頭にこびりついて離れないのでなんとかして。

                             ★★★★☆

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