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内向的直観を駆使するキャリアゆえに転職で苦労した話

面接でされる嫌な質問

私はつい先日まで、ソフトウェアエンジニアの職を得るべく、転職活動をしておりました。その面接で必ず聞かれたのが次の質問です。

「なるほど。素晴らしい。それで…あなたのご専門は結局なんですか?」

もっともな質問です。私の経歴書には、ソフトウェアという一貫性はあるもの、様々なジャンルのプロジェクトに関与したことが書かれており、コレ!というものが見当たりません。だから私は次のように答えたのです。

「点と点を線で結ぶのが専門です!」

無論、キャリア面接の模範回答とは程遠いでしょう。「つまり何もできないってことですか」と顔をしかめる人、答えになっていないと苛立つ人…面接官の反応は芳しくない。上手に説明できない私の問題もあり、なかなか次のステップに進めませんでした。否定され続け、心も荒み始めます。

もがいた末、ようやくとある企業に拾っていただけました。内定から入社するまで時間が空いたので、ダークになった自分の心を見つめ直すべく、心理学について勉強し始めました。そうして16パーソナリティ(MBTI)に出会い、自分がINFJに該当することを知りました。

INFJとは16個ある性格タイプのひとつであり、「内向的直観」と呼ばれる心理機能がメインで働くとのこと。内向的直観とは…?よくわからない言葉なので調べたところ、こんな風に書いてありました。

「内向的直観(Ni)とは、複数の事象や概念を一つに集約する機能である。例えるなら、点と点を線で結ぶような能力である。Niを使わない人にとっては理解が難しく、Niを使う人でも説明することに苦労する」

これを読んだときの衝撃は忘れられません。自分がなぜ、知識を深掘りするよりも、分野を横断しながら知識を連携させることに適性があったのか、ようやく理解することができました。そして同時に、エンジニアとしての私の10年は、内向的直観によって支えられていたことに気付いたのです。

「それ」が降りてくるまで、待ち続ける

前回の記事で少し触れましたが、私の仕事は、お客様のぼんやりとした要望を聞き出して明確化し、それをソフトウェアとして実現することです。

ソフトウェアで実現…とは言っても、容易なことではありません。前例のないソフトウェアの開発は、未踏峰の登山のようなものです。すなわち、誰も登ったことのない山に、新たなルートを見出し、試行錯誤しながら登頂しなければなりません。

私が思うに、ソフトウェア開発は、次の4段階に分けることができます。

  1. ゴールを決めること。
    要望を明確化したのであれば、ゴールは決まったも同然です。

  2. ゴールまでの大雑把な点を打つ。
    ここが一番むずかしい。スタートとゴールの間にありそうな関連技術を探し出します。GoogleやWikipediaで調べたり、論文を漁ったり、時には図書館の司書さんにヒントをもらうこともあります。

  3. 点と点を線で結ぶ。
    ここも難しい。段階2で打った点が線で繋ぐ「余地」があるか確認します。もし「余地」がなければ2に戻ってやり直しです。

  4. ルートに沿って登る。
    段階1から3まで完了して、ようやくこの段階にたどり着きます。超ざっくりに言えば、プログラムを書いて、デバッグして、運用と保守に移ることです。ザ・ソフトウェア開発なら、ここを指すのでしょうかね。

段階2と3では、多くのWeb記事や書籍、論文を入手して、片っ端から頭の中に叩き込んでいきます。それらを頭の中に散りばめて、ひたすら待ち続けます。ずっと待っていると、「それ」が降りてきて、繋がる点と点が浮かんできます。これこそが、内向的直観を使っている状態なのではと思います。

私はこれを「テーブルに書物を撒き散らしてゴロゴロする」と形容しています。

内向的直観を使い倒しているときの、頭の中のイメージ。
※絵心がないのでStable Diffusion Onlineで生成

どうしてこの行為によって、点と点が繋がるのか、私にも理解不能です。最初の頃は「調べる」や「考える」のような能動的なアクションをするものの、次第に行き詰まって放置状態になります。すると三日後くらいに、答えへ受動的に導かれるのです。

これが人に伝わればよいのだが…

まさか、面接でこんな話ができるわけありません。いつも具体的な事例を何個か挙げて説明するのですが、その事例が相手の業務ドメインから外れたものだったり、あるいは、事例同士の関連性が抽象的すぎて、理解していただくのに時間を要してしまう感じです。

何より問題なのが、点と点を繋ぐためにインプットした情報は、体系的に学んだ知識ではありません。したがって、専門家から詰められてしまうと基礎がなってないゆえに一瞬で撃沈してしまいます。そもそも私が言葉の定義を理解していないので、会話が全く成立しないのです。

面接に限らないのですが、第一印象で人柄は評価されても、エンジニアとして過小評価されやすいのは、この「浅さ」があるからでしょう。しかしこの「浅さ」、本当に浅いのでしょうか。もしかしたら、私が正しくアピールできていない、説明し尽くせていないだけなのかも知れません。

第三機能「内向的思考」を鍛えましょう

心理機能の発達過程を説明するウェブの記事を参考にすると、主機能は生まれてから、補助機能は20代から発達すると書かれていました。また、第三機能は30代から、劣等機能は中年期から発達するとも。

INFJの第三機能は内向的思考(Ti)です。この心理機能は、物事を秩序立てて捉える、数値やデータに基づいて考えるなどの働きがあります。まさに今、30代の私が「自分の考え・アイデアを人に秩序立てて説明すること」に苦しんでいるのは、この内向的思考が未発達なためではないでしょうか。

振り返ってみると、私は内向的思考に対し、苦手意識を持っていたように思います。論理的に!データに基づいて!と言われると「いやぁ面倒くさいなあ…」と億劫に感じていました。しかも時折、「こういうことって自分には向いていないんだよなあ」と思うこともありました。

今は状況が違います。私はINFJであって、論理的な説明が下手なのは第三機能の内向的思考が未発達だからであることを知っています。しかもそれは、鍛えれば発達させられることも知っています。だとすれば、あとは実践するだけです。

MBTIによって励まされたのは、心理機能は一生に渡って発達し続けることです。今この瞬間、この時に解決したい…と願ってしまいがちですが、そんなに焦る必要はないんだと、長い時間軸で自分自身と向き合い、成長したいと感じました。






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