四神相応の地
南京駅の目前に広がる玄武湖は、市民の憩いの場として親しまれている公園です。先月の西安旅行で知り合った西北大学の留学生、Pちゃんが南京に遊びに来てくれたので、私たちはこの一帯を一緒に観光しました。
南京は、風水における理想的な土地の条件である「四神相応の地」として知られています。「四神相応の地」とは、地理的景観が東西南北を司る四神(青龍、白虎、朱雀、玄武)にふさわしいとされる場所を指します。
具体的には、南京の東には青龍に相当する紫金山(中山陵がある山)、西には白虎に相当する石頭山(南京長江大橋に近い丘陵地帯)、南には朱雀に相当する秦淮河、そして北には玄武に相当する玄武湖があります。玄武湖という名前も、この風水思想に基づいて名付けられたのです。
風水は、古代から発展した自然と人間の調和を重視する思想であり、その中で地形や水の配置が重要視されました。
風水と聞くと、オカルトやスピリチュアルの類を連想してちょっと苦手なのだけど、実際には気候条件や環境に適応する実践的な側面もあります。
例えば、北に山を配置することで冷たい風を防ぎ、南に開けた土地を配置することで日光を十分に取り入れることができ、湿気の多い場所や風通しの悪い場所が健康に悪影響を与えるといった考え方は、気候や健康に基づく実践的な知見です。また、地形や水の流れを考慮することは農業にとっても重要であり、経験に基づく科学的な根拠も含まれています。
風水思想は長い歴史の中で得られた経験的知識を、神話的な体系として整理したものといえます。為政者にとっては、統治の正当性を象徴する重要なツールでもありました。風水に基づいて選ばれた首都や宮殿の位置は、天命に基づく正しい支配を示すものとされ、これが統治者の権威を強化したのです。
特に首都や重要な都市の選定においては、風水に基づく都市設計が重視され、理想的な地形が四神相応の条件として求められました。北京や西安、南京などの歴史的に重要な都市では、風水に基づいた都市設計が取り入れられ、四神相応の地形に近い形で都市が作られました。これらの都市は、王朝の首都として国家の安定と繁栄を象徴する必要があったため、四神相応の理念が重要視されました。
ちなみに、京都の地勢も四神相応の地とされています。北には丹波高地、東には大文字山、西には嵐山、そして南にはかつて巨椋池が存在しており、それが朱雀に相当します。
このように、南京は自然発生的に形成された都市ではなく、歴史の中で首都として選ばれ、計画的に発展してきました。
玄武湖一帯は自然をそのまま感じられる場所とあって、湖畔を散歩する人々や、のんびりとボートを楽しむ市民の姿が見られる市民の憩いの場となっています。
湖周辺の自然景観や歴史的な背景が、人々を引き寄せており、ガイドブックには観光地として記載されているものの、これといった商業施設はなく、のんびりした場所です。(2024現在は商業化された一大観光地になっています)
2003年10月22日