遺書
どこかで間違えたんだと思う。何年前の選択肢か分からないけど、ひとつの小さな選択肢、それをとちったんだと思う。人生は選択肢の連続、それは間違いじゃない。ただ成功か失敗の2択という考え方が間違いであると、今の俺はそう理解している。失敗と失敗の2択。それとも失敗がいくつかある状況。それが人生。いや、俺の人生。この場合在り来りな確率の収束などありえない。何億かそれ以上の確率でふと現れる成功の選択肢。それを踏み抜かなければならない状況。俺は踏み抜けないと思う。どこかで失敗してそのままズルズルと失敗し続ける。そんな人生。誰かが言ったよ、大人になれば楽しいことはいっぱいあると。今の現状だけで言わせてもらいたい。バカか?臆病で頭がおかしくて悪くて、全体的に出来の悪い人間に明るいものは見えるか?見えないね。だから消えてしまいたい。死んでしまいたい。天国だの地獄だの必要ない。存在ごと消えさせてくれ、俺という人間の消滅が救いである。少なくとも俺にはこれしか俺という人間の明るい逃げ道はない。もう消えてしまえば有り得る未来も、その希望と絶望の有無も知る必要も期待する必要もない。この先の人生なんて望まないから綺麗にさっぱりとここで消える。エンディングもスタッフロールも要らない。世に出ることなく打ち切ることが望ましい。親にはとても消えるという事実だけを申し訳ないと思う。何も成し遂げられない事を申し訳ないと思う。けど俺に期待したことがあったかは知らないが、見当違いであったことは間違いない。俺の人生様々な観点からして失敗作だと断言しよう。出来の悪い人間として生まれて申し訳ない。それと希望を持てない環境でクソ喰らえ。最後まで悪態を吐く人間で申し訳ない。色々な禍根は我々にあれど、その禍根の根っこを語らないことを許して欲しい。生きていても死んでも臆病で、自分以外の人間を違う生き物としか見れない愚か者で生きていては救いのない人間で申し訳ない。人間は死んでも錆つかない、それは残念だ。美しさも醜さもない灰にはなれる。それはありがたい。出来れば俺が灰になった時吹き飛ばしてどんな神様でもかき集めて元に戻せないようにしてくれ。俺みたいな人間は二度とこの世に必要ない。跡形もなく、思い出もなく。思い出すらも想起出来ない。事務的に後処理してくれ。そして思い出すな。この人生の間違いを否定できなかった当人のためにこの人生を思い出として肯定するな。さようなら。これが一番ちょうどいい。辞世の句なんて綺麗な言い方くらい使わせてくれ。またも今度もない。さよならだ。これが辞世。往生であった。おしまい。