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スケープゴートにされるレガシー保険業界【Lemonadeの戦略】

ソフトバンクグループが支援する米住宅保険のLemonadeをご存知だろうか?先日、ニューヨーク証券取引所で上場初日を迎え、一時は公開価格の2.4倍となる70.80ドルまで上昇した。

このLemodadeの特徴は2つあり、P2P(ピアツーピア)とチャリティだ。

◯P2Pとは?
 P2P(ピアツーピア)とは元々はIT用語で「特定のサーバーを介さずに端末同士が直接通信すること」を指したが、現在はもっと広く「利用者同士を直接つなぐ仕組み」を意味する。つまり、友人や同じ保険に関心のあるユーザーがグループを形成し、みんなで保険料を拠出しあうタイプの保険なのだ。保険金の請求が行われた場合にはグループ内でプールされた保険料から保険金を支払う。ユーザー同士がリスクをシェアし、もしものことが起きた際には支え合う「シェアリングエコノミーの概念を取り入れた保険」という捉え方もできるだろう。

◯チャリティ
 Lemonadeでは、保険の未請求分をすべてチャリティにするという。従来の保険の仕組みでは、未請求分の保険料の料金は全て保険会社の利益となる。しかし、Lemonadeは未請求分の全ての保険料がチャリティに寄付されるという仕組みだ。そうすることで、未請求分の保険料は保険会社の利益とならず、保険金の支払いに対する負のインセンティブは生じない。

◯Lemonadeの戦略
 通常、保険会社はできる限り保険料の支払率を下げたいというインセンティブが発生する。(と一般的に思われている)
「保険金を申請したのに支払われなかった」というユーザーのネットの書き込みを見ることがあるが、このあたりはちょっと難しい問題もある。保険の仕組み上、実際に支払い条件に合致しているか?を審査しないと、請求に対してなんでもかんでも支払っていたら公平性がなりたたない。つまり、誰かがみんなから集めたお金(保険料)を管理する番人の役をする必要があるのが保険という商品なのだ。しかし、この番人の役を保険会社が担っているため、「保険会社が自社の利益を追求している」と思われてしまうのである。

まあ、上記の理解が正しいか否かに関わらず、保険会社をスケープゴートにすることにより、Lemonadeの「チャリティ」というアイデアは余計に消費者にウケている。「保険会社に搾取されるくらいなら、チャリティに貢献しよう!」というスローガンだ。

さらに、同社はユーザーが支払う保険料の一律20%を手数料として受け取るというシンプルかつ透明性が高い利益構造で、これまた手数料が不透明なレガシーの保険会社をうまく踏み台にする。

Lemonadeを批判したい訳ではなく、その戦略がとてもよく出来ていると言いたいのだ。

なお、創設者の Wininger 氏は、以下のように言っている。

「保険業界は存在そのものが嫌われており、それゆえにLemonadeには大きなチャンスがある」

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