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お酒の知識・上巻

はじめに

当記事は広く浅くを目的とした、知識としては浅い内容を記している。
知っておくと既知の方々に対して、相槌ぐらいはうてるだろう。
其の程度の効果しか見込めないが、興味のある方はぜひともご覧になって後述の中・下巻とあわせて知識のアップデートを心がけてほしい。
まずは国ごとに地理とあわせてその国酒を紹介し、またそのお酒の原材料がなにかというのを次項で説明している。最後に余談として、酒類がもつ薫香の例え「フレーバーホイール」を紹介している。
つづく中巻では紹介したお酒がどのような製造過程を踏むのかをかんたんに説明する。

当記事について

我が国だけでも日本酒、焼酎、ウイスキー、ワイン、梅酒、ジン、ビールなどが製造されているように、原則としてそれ1つに限定できるものでは無論ないが、ここでは敢えて1つの国と1つのお酒をイコールで結んでいる。

「マスター、ウーゾってお酒知ってるか」
「ああ、確か…東欧のお酒でしたっけ。ブドウが原料だったか」
と言えるだけで、ずいぶん印象はよさそうだ。

加えてハイソサエティなお客様は、当然海外に事情通であることが多い。
であるため、当該記事ではお酒の知識と世界の地理も結びつけた。
そういった方々をお相手する機会に恵まれている我々バーテンダーは、
出来る限りお客様に対して失望の念を抱かせないよう、日々知識の向上を心がけたい。

世界の国と世界のお酒

<東ヨーロッパ>

(参照)https://www.asahi-net.or.jp/

 ギリシャ ー ウーゾ ー 蒸留酒
 セルビア ー ラキヤ ー 蒸留酒
 ハンガリー ー パーリンカ ー 蒸留酒
 チェコ ー ピルスナー ー 醸造酒(ビール)
 ポーランド ミード ー 醸造酒(ワイン)
 ロシア ー ウォッカ ー 蒸留酒
 スカンディナヴィア ー アクアヴィット ー蒸留酒
 スコットランド ー シングルモルト ー 蒸留酒
 アイスランド ー ブレニヴィーン ー 蒸留酒
 アイルランド ー ウイスキー ー 蒸留酒
 イングランド ー ポーター ー 醸造酒(ビール)
 イングランド ー ジン ー 蒸留酒
 イングランド ー カスクエール ー 醸造酒(ビール)
 ブリュッセル ー ランビック ー 醸造酒(ビール)
 ベルギー ー トラピスト ー 醸造酒(ビール)
 ドイツ ー ヴァイツェン ー 醸造酒(ビール)
 ドイツ ー リースリング ー 醸造酒(ワイン)
 ドイツ ー キルシュ ー 蒸留酒
 スイス ー アブサン ー 混成酒

<フランス>

(参照)http://italying.zening.info/

※フランスについては後部に備考がある。
ブルゴーニュ ー ワイン ー 醸造酒
ロレーヌ ー ミラベル ー 蒸留酒
エペルネー ー シャンパン ー 醸造酒
ノルマンディー ー シードル ー 醸造酒
同上 ー カルヴァドス ー 蒸留酒
シャラント ー コニャック ー 蒸留酒
ガスコーニュ ー アルマニャック ー 蒸留酒
アルプス ー シャルトリューズ ー 蒸留酒
プロヴァンス ー ロゼ ー 醸造酒
マルセイユ ー パスティス ー 混成酒
ローヌ ー ワイン ー 醸造酒

<イベリア半島>

(参照)https://ar.europeanwriterstour.com/

 スペイン ー リオハ ー 醸造酒(ワイン)
 ポルトガル ー ヴィーニョ・ヴェルデ ー 醸造酒
 ポルトガル ー ポート ー 醸造酒(ワイン)
 スペイン ー シェリー ー 醸造酒
 スペイン ー アニス・デル・モノ ー 混成酒

<イタリア>


(参照)https://makitani.net/

 イタリア ー トスカーナ ー 醸造酒(ワイン)
 イタリア ー ピエモンテ ー 醸造酒(ワイン)
 トリノ ー ベルモット ー 混成酒
 ミラノ ー カンパリ ー 混成酒
 サロンノ ー アマレット ー 混成酒
 イタリア ー グラッパ 蒸留酒
 フリウーリ・ヴェネト ー プロセッコ ー 醸造酒
 イタリア ー アマーロ ー 混成酒
 イタリア ー サンブーカ ー 混成酒
 カンパニア ー リモンチェッロ ー 混成酒

<アフリカ>

(参照)https://www.asahi-net.or.jp/

 チュニジア ー ブッハ ー 蒸留酒
 ブルキナファソ ー ドロ ー 醸造酒(ビール)
 ベナン ー ソダビ ー 蒸留酒
 ウガンダ ー ウルワグア ー 醸造酒(ビール)
 南アフリカ ー ピノタージュ ー 醸造酒(ワイン)
 レユニオン島 ー ラム酒 ー 蒸留酒
 エチオピア ー タッジ ー 混成酒

<アジア>

(参照)https://www.asahi-net.or.jp/

 レバノン ー アラック ー 蒸留酒
 ジョージア ー オレンジワイン ー 醸造酒
 中国 ー 白酒(バイジョウ) ー 蒸留酒
 中国 ー 黄酒(ホアンジョウ) ー 醸造酒
 中国 ー 中国ワイン ー 醸造酒
 モンゴル ー アイラグ ー 醸造酒
 朝鮮 ー ソジュ ー 蒸留酒
 日本 ー 日本酒 ー 醸造酒
 日本 ー 焼酎 ー 蒸留酒
 バリ島 ー アラック ー 蒸留酒

<オセアニア>

(参照)https://www.asahi-net.or.jp/

 オーストラリア ー シラーズ ー 醸造酒(ワイン)
 ニュージーランド ー ソーヴィニヨン・ブラン ー 醸造酒(ワイン)

<ラテンアメリカ>

(参照)https://www.asahi-net.or.jp/

 チリ ー カルメネール ー 醸造酒(ワイン)
 メンドーサ ー マルベック ー 醸造酒(ワイン)
 アルゼンチン ー トロンテス ー 醸造酒(ワイン)
 ボリビア ー シンガニ ー 蒸留酒
 ブラジル ー カシャッサ ー 蒸留酒
 ペルー・チリ ー ピスコ ー 蒸留酒
 コスタリカ ー グアロ ー 蒸留酒

<北アメリカ>

参照)https://www.asahi-net.or.jp/

 カリブ海 ー ラム酒 ー 蒸留酒
 メキシコ ー メスカル ー 蒸留酒
 アメリカ ー カリフォルニアワイン ー 醸造酒
 アメリカ ー IPA(インディアペールエール) ー 醸造酒(ビール)
 アメリカ ー バーボン ー 蒸留酒
 ケベック ー アイスシードル ー 醸造酒(スパークリング)

世界のお酒の原材料

お酒が何で作られているかを表しています。
かなりざっくりしてます。

<蒸留酒>

ジャガイモ 
→ ウォッカ
→ キャラウェイを浸漬 → ブレニヴィーン、アクアヴィット
  
大麦 → ウイスキー

米 
→ 焼酎
→ ソジュ
→ ジュニパーベリー浸漬 → ジン

トウモロコシ → バーボン

モロコシ → 白酒

イチジク → ブッハ

サクランボ 
→ キルシュ
→ ミラベル → ロレーヌ
       
ブドウ 
→ アニス浸漬 → アラック(レバノン)
→ ウーゾ

アガベ → メスカル(テキーラ)

サトウキビ 
→ グアロ
→ カシャッサ
→ ラム
    
ヤシの樹液 → アラック(インドネシア)

発酵したブドウの絞り粕 → グラッパ

植物を蒸留酒に浸漬 
→ シャルトリューズ
→ アブサン

ワイン
→ シンガニ
→ ピスコ
→ コニャック / アルマニャック

シードル 
→ カルヴァドス → 果汁ブレンド → ピノー(デ・シャラント)

ヤシ酒 → ソダビ

<醸造酒>

はちみつ
→ ミード → タッジ

ミルク → アイラグ

バナナ → バナナビール

ブドウ 
→ スパークリング → プロセッコ
→ シャンパン
→ 非発泡性ワイン 
→ 白ワイン用ブドウ発酵 → 皮ごと → オレンジワイン
             → 皮なし → 白ワイン
→ 蒸留したワインを酒精強化 → シェリー
               → ポート
→ 黒ブドウを皮ごと発酵 → 果物を浸漬 → 赤ワイン
            → 途中で浸漬を止める → ロゼ

穀物 → 黄酒

モロコシ → ドロ

米 → 日本酒

大麦 → 下面発酵 → ピルスナー
   → 上面発酵 → ヴァイツェン
            IPA
            カスクエール
            ポーター
            トラピスト
            ランビック

<混成酒>

スピリッツ 
→ レモン → リモンチェッロ
→ 杏仁など → アマレット
→ 植物、皮など → アマーロ

アニスのオイル 
→ パスティス
→ サンブーカ
→ アニス・デル・モノ

ワインと植物などのスパイス 
→ カンパリ
→ ベルモット

フレーバーホイール

(参照)http://whiskymag.jp/

フレーバーホイールとは、お酒の香りや味わいを表現するためのもので、
プロのブレンダーや評論家も使用するものであり、スピリッツの個性を
詳細に表現するために用いられる。(風味の環とも)
主にお酒を飲みながらホイールを眺め、テイスティングノートを作るために使われるが、例えはあくまでたとえであるということを踏まえ、また
「自国のりんごと他国のりんごは違う」という至極当然の話も理解した上で、無論ながら別の似たような表現を使っても問題はない。
「フレーバーホイールに絶対はない」し「テイスターの表現は所詮個人の感想」ということを建前とし、正解などないのだとむしろ開き直ってお酒を愉しむことを筆者はおすすめする。

ワイン相 - WINEY

オイル系:
亜麻仁油、ロウソク、日焼けオイル、アーモンドオイル
チョコレート系:
クリーム、バター、チョコレート、ココア
ナッツ系:
クルミ、ヘーゼルナッツ、アーモンド、プラリーヌ
シェリー系:
シャルドネ、貴腐ワイン、シェリー、マデイラ、ポート
備考:
ロウソクや食用できないオイルはネガティブセンスとしてよく使われる傾向がある気がします。逆にチョコ系は褒め言葉としてよく使われます。

木香相 - WOODY

焙煎系:
トースト、コーヒーの出し殻、ウイキョウ、アニシード、カンゾウ
バニラ系:
カスタード、プリン、海綿、メレンゲ
古木系:
かび臭さ、段ボール、地下室、鉛筆、コルク、インク、樟脳
新木系:
樹脂、白檀、ショウガ、コショウ、オールスパイス、ナツメグ
備考:
枯木系はネガティブセンスなことが多いですが、古酒に対してよく使う表現で、ワインと同じく時間経過で払拭されることもある気がします。

硫黄相 - SULPHURY 

植物系:
キャベツの青汁、カブ、河口付近の汽水、沼気
石炭ガス系:
炭化物、花火の燃えさし、マッチ箱、コルダイト
ゴム系:
消しゴム、新品のタイヤ、フェノール樹脂、焦げたゴム
砂地系:
洗濯物、洗濯用のり、リンネル、晴れた日の砂浜
備考:
一部を除いてネガティブセンスであることが多く、若い原酒に現れることが多い気がします。我が国の国民は硫黄相に敏感だという話もあります。

蒸溜相 - FEINTY

ハチミツ系:
ハチミツ、ハチミツ酒、蜜蝋、研磨剤
皮革系:
革張りの家具、新品の牛革製品、粗挽き粉、全粒粉ビスケット
タバコ系:
乾燥茶葉、紅茶、タバコ、タバコの灰
汗臭系:
チーズ、イースト、古い運動靴、靴クリーム
プラスチック系:
ビニール合羽、ポリバケツ、燃えたプラスチック
備考:
硫黄相よりネガティブな印象が強いです。あちらは生物学的なものですが、蒸留相は人工・化学的なものなので、全部が悪いわけではないにせよ、同じく若い原酒にありがちな傾向です。酒類に慣れていない多くの人は硫黄相よりダイレクトに蒸留相を看取しやすい傾向がある気がします。

穀物相 - CEREAL 

麦芽汁系:
茹でトウモロコシ、オートミール、麦粥
調理野菜系:
マッシュポテト、茹でたジャガイモ、スイートコーン
麦芽エキス系:
麦芽乳飲料、ミロ(ネスレ)、ぬか、牛の固形資料
もみ殻系:
もみ殻、乾燥ホップ、エールビール
イースト系:
茹で豚、ポークソーセージ、生肉、ゾウモツ
備考:
まさに原材料を感じることができる相でビールを彷彿とさせるかなりポジティブな面ですが、一部イースト系は生臭さを連想させるものもあります。

果実相 - FRUITY

クエン酸系:
オレンジ、みかん、レモン、柑橘類の皮、キウイフルーツ
果物系(非加熱):
リンゴ、洋ナシ、モモ、アンズ、イチゴ、フルーツキャンディー
果物系(加熱):
煮リンゴ、マーマレード、ジャム、大麦糖、砂糖漬けの果物
ドライフルーツ系:
レーズン、イチジク、アンズ、プルーン、柑橘皮の砂糖漬け
ソルベント系:
マニキュア除光液、フーセンガム、飴玉、テレピン油、ペンキ
備考:
多くの生産者が目指すものでしょうか。ただし、ソルベント系は「人工くささ」であり、わざとらしさのようなもので、かぎわけには注意が必要です。

草花相 - FLORAL

芳香系:
香水、洗濯用柔軟剤、理髪店、カーネーション、ココナッツ、ラベンダー
温室系:
ゼラニウム、青いトマト、パルマバイオレット、花屋
草葉系:
葉っぱ、芝刈り、若木、エンドウ豆のさや、もみの木、松の実
干草系:
干し草、ヒースの花、ハーブ、セージ
備考:
果実相と同じくネガティブな面も一部ありますが、感じ方は人それぞれです。芳香系が必ずしも悪いとは言い切れず、ポジティブに使うこともあります。また、フローラルを果実相とないまぜにしている人も見受けられるので、フローラルとは植物由来だということを留意します。

泥炭相 - PEATY

薬品系:
クレオソート、ヨード、病院、衛生用品、タール、ディーゼル油、海藻
スモーク系:
正山小種紅茶、お香、泥炭の煙、焚き火、燃えさし
魚介の燻製系:
貝の干物、牡蠣のスモーク、スモークサーモン、アンチョビ
コケ系:苔清水、樺の木、ヤチヤナギ、芝土、麻縄、漁網
備考:
多くの人が誤解している相です。ピーティはピート(泥炭)を燃やしたときにでるニュアンスのことです。
スモーキーとは、ピーティーさのなかにあるひとつの相にすぎません。

(次巻へつづく)

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