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今月の読書日記(2024.9)
米国債券投資を始めるなら、ピッタリの本?
《債券投資に注目してみる?》
最近では、投資をするという話になると、その対象としてまず話に持ち上がるのは、『株式』です。NISA制度やiDeCoなどによって、株式投資というものが、一般にもだいぶ普及するようになってきました。
そんな中でも特に、話の中心となっているのが、S&P500や日経平均のようなインデックスファンドなのではないでしょうか。NISAやiDeCoなどの話題でもインデックスファンドを中心に話をされることが多くなっていると感じています。
しかし、ちょっと昔の事を思い出すと、株式はリスクが大きいので初心者は債券投資からはじめてみてはという話の流れが、基本的な投資のアドバイスだったような気がしています。
そのため、よく売れていた投資信託も、債券タイプのものが多かったのを思い出します。特に昔よく売れていた投資信託といえば、三菱UFJ国際投信のグローバル・ソブリン・オープンという投資信託です。毎月分配型で、グロソブと呼ばれ人気の投資信託でした。
いつの間にか、グロソブのことは、あまり話題にならなくなってしまいましたが、当時は債券投資が主流だったなと思い出します。
グロソブの人気が落ちていった背景には、世界的な金利の低下があるのかもしれません。リーマンショックの後米国を中心に世界の金利は大きく下落していきました。その結果、債券の利回りに対する魅力が落ちてしまい、債券投資を考える人も減っていったのかもしれません。
しかし、近年債券の金利が上がってきたことで、債券投資にも魅力が出てきたように感じています。むしろこれから金利がまた下がる傾向になることも予想されており、債券投資をするなら今、という雰囲気さえも感じられるようになってきました。
しかし残念ながら、世の中の投資の流れは、まだまだ株式が主流になっているため、債券に目を向ける人は、あまりいないようにも感じています。
そのためなのか、投資の本の中でも、債券投資について詳しく書かれているものは、ほとんどないと感じています。
そのようななかで、米国債券について、債券投資についてよく説明している本の一つとして、今回の本がありました。
《債券投資のポートフォリオ》
債券投資といえば、定期預金のように、買ったら満期まで放置していればいいという簡単なものという印象があります。
確かに、債券投資とは何かと言われれば、なるべく倒産しそうにない発行体が発行している債券を選んで買って、後は満期になってお金が返ってくるまで、利息を受け取っていればいいという、非常にシンプルな投資対象です。
しかし、なぜか債券に対しては、よくわからないと思っている人が少なくないように感じています。
普通に考えるなら、株式資産の方が、債券よりも複雑でわかりにくいものであっておかしくないのに、なぜか債券よりも株式に投資したいと考える人が多いようです。
リスクも高く、内容も複雑、リターンも安定的でない株式に対して、ある程度リターンが確約され、銘柄選択をきちんと考えて投資すれば、元本毀損のリスクもほとんど抑えられる。通常なら株式よりも債券の方が投資対象として好まれるような気もしなくもありませんが、なにせ情報が少なく、わからないと感じやすくなってしまっているのかもしれません。
まず債券投資では、発行体を選ぶことから始まります。本書の中では、倒産リスクを表現している、『格付け』について解説しています。
また、満期までの期間の違いの考え方や、発行体のデフォルトリスク、劣後債などのちょっと変わった種類の債券のことまで説明がされており、債券投資の銘柄選択について大まかなところの知識が学べるようになっています。
またさらに、債券投資であっても、分散投資、つまりはポートフォリオで運用することの必要性も示されていました。
倒産リスクを考えながら元本毀損のない投資先を選んでいても、万が一のことがあれば元本を失うことにもなりかねません。リスクやリターン、さまざまなものを考慮しながら、債券投資を実践する分散投資の考え方についても書かれています。
ただ債券投資に向いている投資家層のイメージが、富裕層という点が、一般的ではないのかもしれません。
債券投資の投資資金は、個別銘柄の株式投資や、投資信託に比べて、初期投資額が大きくなってしまうという問題があります。
またさらに分散投資をするとなれば、より大きな資金を必要とします。本書の中のポートフォリオのイメージも、億の投資資金をイメージしているようです。
債券投資は、成長よりも安定、リスクがあるけどハイリターンの可能性よりも確実性の高いそこそこのリターン、という性質からも、まさに富裕層が好みそうな投資対象と言えるのかもしれません。
そしてさらにレバレッジをかけて債券投資をするという考え方も本書では紹介されており、あまり一般の人向けのものではないのかもしれません。
基本的にこの本は、富裕層を意識して書かれたものであることは、間違いないようです。ですが、債券投資を知る本としては、なかなかないぐらい内容が充実した本のようにも感じました。