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マネーの豆知識:『為替ヘッジ』って何?

 円やドルなどの為替の価格が変動することを『為替リスク』と言います。

 例えば、1米ドルの値段が、円で150円から145円になることを、円高と言い、逆に、145円から150円になることは、円安と言います。
 直感的に、数字が減っているのに円「高」、数字増えていると円「安」、という言い方に、違和感を感じる人も少なくないようです。
 しかし、ドルと円の力関係で見れば、数字が減っているということは、1米ドルに対する円の価値が上がっていることになるので、「高い」という言い方があっていますし、また、同様に円安というのは、1米ドルに対する円の価値が下がったので、「安い」と言うのが正解になります。

 基本的に為替の世界は、米ドルが中心でものを見るようになっています。なぜなら世界の基軸通貨として米ドルが機能していることは、誰もが認めるところだからです。
 日本人であっても、為替の世界では、日本円を中心に考えるのではなく、米ドルを中心に考えるようになっています。そのため、あまり為替の話に慣れていない人にとっては、円高と円安の言い方に違和感を覚えるのも仕方がないのかもしれません。

 今回取り上げた『為替ヘッジ』とは、特殊な金融取引によって、この為替の変動を無視できるように作られた金融商品の事になります。
 たとえば、米国債券に日本国内から投資をしようと思うと、円を米ドルに換えて米国債を買わなければならないために、どうしても円高や円安といった為替変動の影響を受けてしまいます。
 そこで、『為替ヘッジ』という取引を行うことで、日本国内から、米国内で米国債券を買ったような感覚で取引ができるようにしているというわけです。

《為替ヘッジのコスト?》

 為替ヘッジは、為替変動のリスクをほとんど無視できるようになる魔法のような手法ではありますが、それには当然のようにコストを必要とします。金融の世界にフリーランチ(ただ飯)は存在しないという原理原則がここでも働いているようです。

 為替ヘッジのコストのイメージとしては、2国間の「金利差」が分かりやすい例になるかと思います。
 例えば、日本の投資家が、米ドルの為替の影響を低減するために「為替ヘッジ」を行なおうと考えた場合、円と米ドルの短期金利の金利の差が為替ヘッジコストとなります。
 具体的なイメージとしては、日本円は米国ドルよりも、金利が低い傾向があるので、日本の投資家が、米国ドルの為替ヘッジを行おうとすると、「日本円買い、米ドル売り」の取引を行うために、金利の高い米ドルと金利の低い日本円の差額をコストとして支払う感じなります。

 世界的にみても低金利な日本の現状では、日本から米国や欧州といった世界の資産を、為替ヘッジをつけて取引しようとすると、ほとんどのケースで、ヘッジのためのコスト負担があることになります。

《外国債券の取引では、為替ヘッジが基本?》

 外国債券に投資をする場合には、為替ヘッジを行う事が基本だと言われることがあります。
 そのように言われる根拠としては、外国債券に投資をした場合に、為替リスクを取ったことによって得られるリターンはほとんどないのではないかと考えられているところから来ています。

 外国債券に投資をする際のリスクは、大きく分けると、債券のリスクと、為替のリスクの2つのリスクがあると考えられています。そして外国債券に投資をすることで得られるリターンのほとんどは、為替ではなく債券のリスクの影響の方が大きいという調査結果があります。
 つまり、リターンを生み出さない為替リスクをできるだけ排除し、外国債券のリターンを取りに行こうというのが、外国債券に『為替ヘッジ』をつける目的になります。

 ただし、先にも述べたように、為替ヘッジを行うためには、コストがかかるという側面もあります。外国債券に投資をして為替ヘッジをつけると、債券のリターンから、為替ヘッジのコストが差引かれることになるため、トータルリターンは下がることになります。
 そのため、単純に為替ヘッジを付ければいいのかというと、そうではないこともあるという事です。また、円安の時には為替によるリターンが出るので、為替リスクを取った方がいい時もあります。
 実際に為替ヘッジをつけるかどうかは、様々なことを考慮する必要があると言えそうです。