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『高配当株投資』って、実際のところどうなの!?

 配当金という収入を得る目的で行う株式投資のことを『高配当株投資』と言ったりしています。

 配当金で生活をする配当生活なんていう夢のような話もあり、なおかつ投資の利益を『配当金』という分かりやすいもので考えることができることもあるのか、高配当株式は、株式投資初心者からも人気があるようです。

《高配当株式ってなに?》

配当金ってなんだ。

 企業は事業を行うことで儲かった利益を、株主に配ることがあります。それを『配当金』と言っています。配当金と似たようなものとして、『株主優待』というものもありますが、この株主優待の場合には、企業の利益とは関係なく株主に配っているものになります。

 配当金とは、主に『剰余金の配当』のことを言い、企業が事業を行うことで積み上げた利益のことなどを剰余金と言いますが、配当金では、この剰余金の一部を株主に分配している感じになります。
 また、会社法では、この剰余金の配当の支払額に対して限度額が設けられていて、『「純資産額-(資本の額+資本準備金+利益準備金+その決算期に積み立てるべき利益準備金)」』の範囲で配当を行うこととなっています。ざっくりというならば、その企業が今まで積み上げてきた利益の一部が配当として分配してもいい金額ということになります。

 また、配当支払いの対象となる剰余金というのは、企業が法人税を支払った後の利益でもあります。そのため、企業の利益に法人税が課され、その残りから支払う配当金にも、所得税が課されるという、企業の利益という一つの対象に、2重で税金が課税されるような感じになっているため、その2重課税状態を是正するために、『配当控除』という税制が設けられています。

 配当金をとてもシンプルに言い表すとしたら、『会社の利益の分配』といっても、ほぼ間違いありません。
 つまり、配当金とは、株主が投資している会社に利益がなければ、配当金が分配されることもないということになります。

高配当株式とは。

 高配当株式という言葉に対して、どこからが高配当株式なのかという明確な基準はありません。ただ、配当利回りが比較的高い株式のことを高配当株式と呼んでいます。
 なので、3%以上が高配当株式投資の対象になるのか、それとも4%以上が対象なのかというところでは、正確なルールというのは特にありません。

 投資信託やETF(上場投資信託)等の中にも、高配当株式と謳うものはありますが、「配当利回り何%以上が投資の対象」と明確にしているものは少ないように感じています。目論見書などで投資先の中身を確認してみても、他の一般的な投資信託と比べて、内容的にはそれほど大きく変わらないような投資信託もあるようにも感じています。
 
 高配当株式という投資信託の場合に多いのが、流動性などの基準を満たす一定範囲のグループの中で、配当金利回りが高いものの中から選択すると説明しているものが多いようです。
 ただその流動性などの基準を満たすというルールの時点で、超大手の有名企業が投資対象になることも多く、またそれら超大手の有名企業は配当金の支払いを実施していることが多いこともあって、結果的に他の投資信託と中身がそんなに変わらなくなってしまうのかもしれません。

 ところで、高配当を選別する時に使われる『配当利回り』という指標ですが、計算式は、『配当金 ÷ 株価』になります。
 この時の配当金の数字については、予測と実績のどちらかが使われることが多いようです。意味合いとしては、予測というのは、企業が発表している予想の配当金やアナリストが予想している今後の配当金など、未来を予想した配当金の数字が使われ、実績は、前期に実際に支払われた配当金を元に計算しています。
 どちらの数字を使って、配当利回りを計算したほうが良いのかについては、一概に言えるものではないので、その人の好み次第という感じになりそうです。

高配当株と増配株の違い。

 高配当株式と似ているものに、増配株という言葉もあります。しかし両者には明確な違いがあるため、同じ意味合いとして考えることは危険だと思われます。
 高配当株式は、その名の通り、「配当利回りが高い」株式という事になりますが、増配株にとっては、配当利回りは一切関係ありません。

 増配株と言われるようになるためには、1株あたりの配当金の額が、毎期増額されていることが、必要になります。つまり、配当利回りとしては、比較的低い方にあったとしても、過去そして今後も、配当金が増額されていくことが期待されている銘柄が増配株ということになります。

 配当金は、企業の利益から支払われていると先に説明しました。つまり増配株のように、毎期配当金額を増やしていくということは、毎期業績が上昇していく必要があるということになってきます。
 それに対して高配当株式の場合は、今後配当金が増加していくことは要件とされていないために、ただ株価と配当金との関係で、配当利回りが高く見えていれば良いということになります。
 そう考えると、株式投資としての正しい姿勢で言うならば、毎期業績が向上していくことが期待されている増配株の方が好ましいということになるのかもしれません。 

《高配当株式投資の問題点》

配当金は嬉しい、でもその取り扱いには注意?

  株式投資家にとっての現金収入となる配当金は、ないよりあったほうが良い。
 著書『株式投資の未来』で有名な大学教授のジェレミー・シーゲルによれば、その著書の中で、株式投資にとって配当金の存在はとても重要なものだと述べています。
 しかし、高配当株式を中心に投資をしたことで、失敗してしまったという話もよく聞く話です。つまり、高配当株式投資という投資法は、学術的に説明できる有益な投資法なのかもしれませんが、実際の投資では、その取扱い方に注意が必要ということのようです。

 高配当株式投資でよく目にする失敗例が、買った後に減配や無配になってしまったというものです。配当利回りの高さに飛びついて株を買ったけど、決算を迎えたとたんに、配当金が減らされてしまったというものです。
 さらに配当金が減らされたことで、株式市場の評価も下がり、株価も下落してしまい、結果2重の痛みとなってしまうことも少なくありません。

 このケースでは、その投資先企業が、今後も配当を維持できるのかどうか、もっと言えば、配当の支払い原資となる業績を維持できるのかどうかの調査を怠ったことが問題だったのかもしれません。
 また、企業の配当金の支払額に無理があったのかどうかを測る『配当性向』という指標もチェックした方が良かったのかもしれません。
 配当性向とは、企業の利益の中からどのくらいの割合を配当金として支払っているのかという指標のことです。健全な割合としては、30%程度と言われていますが、これも一概には言えませんので、その30%を基準にその企業に合わせて、どの程度なら健全だと言えるのかを判断する必要があるのかもしれません。
 
 なんにせよ、高配当株式投資という投資方法は、高配当利回りだからという理由だけで投資するわけにはいかないということです。高配当の裏側にあるものまで、ちゃんと確認したり判断したりすることが出来るかどうかも大切になってきます。
 つまり、高配当株式投資というのは、一見初心者向けの投資であるように見えなくもないけれど、実態としては、案外玄人向けの投資法なのかもしれません。

高配当であることは、株式投資にとっての利益の源泉(ファクター)とはなっていない?

 株式投資にとっての利益の源泉(ファクター)となる者は何かということを調べている人たちがいます。それらの話によると、株式市場にある利益の源泉ファクターには、モメンタム、バリュー、サイズ、といったところでその効果がみられるようだと言っています。
 そしてこれらの効果に投資先を集中させることで、その資産(株式)そのもののプレミアムを上回ることもできると期待されています。

 そしてこれらのファクターの中には、高配当という分類は入っていません。つまり、高配当に集中しても株式市場の平均を超えることは出来ないだろうということです。ただ、高配当という分け方ではファクターの確認はできなかったのかもしれませんが、もし加えるのだとしたら、バリューという括りの中で高配当を含めることはできるのかもしれないということのようです。

 つまり、株式投資でそれなりの利益を求めるならば、高配当株という条件で銘柄を探すのではなく、バリューというグループの中から高配当のものを選択して投資するという考え方が、高配当株式投資を実践する時の、正しいアプローチの仕方なのかもしれません。