【ASE-Lab.メンバーの声】 #13 〜大阪大学 北川寛樹さん 編〜後編
海外や全国各地から宇宙好きメンバーが集うASE-Lab.
都内に拠点を置かない団体の活動にメンバーは実際どのように参加しているのでしょうか……?
今回は運営メンバーの家本が調査してきました!
メンバーインタビュー企画第13弾!
今回は、学部1年生の時から自主研究を行い、天文学や生物学、医学と広い興味を持ち精力的に活動されている北川寛樹(きたがわ ひろき)さんにインタビューしてまいりました!
前編に続いて後編ではASE-Lab.外での活動や北川さんの将来の展望をお聞きしていきます!
前編はこちらから↓
ー高校時代はどのような活動をされていたんですか…?
高校生の時高校生科学技術コンテスト[4]に参加していて、筆記のファーストステージで僕の学校は2位だったんですね。1位だけが全国大会に進めるんです。残念ながら切符を逃してしまいました。
高校生の頃から漠然と研究をしたいなというふうに思っていました。それこそ先ほど医学部と迷ったという話をしたと思うんですけど、「新しいものを作りたい、発見したい。」という思いがあって。端的にいうと僕の名前を残したいと思ってます。お医者さんになることを考えていたこともあるんですが、それって僕じゃない誰かが医学部に入って医師免許をとって病気を治してくれれば別に地球としてはハッピーなわけじゃないですか。そうではなくて僕だからできることをやりたいと思った時に研究で新しいものをみつけたいという考えが漠然とあったんだと思います。
高校時代は数学が一番得意だったんですが、数学に才能があるとは実は思っていなくて。数学の方が点数としては高いんですけど、物理の方がなんとなく才能がありそうだなと考えてい他のと天文が好きというのもあって物理学科に進みました。
ー大学生になってから今までに行ってきた活動について
◯Keio Astrobiology Camp(KAC)
大学外では大学1年生が終わる春休みにKeio Astrobiology Camp(KAC)[5]というイベントに参加しました。今は宇宙生物学に興味を持っていて、それについて調べる中でこのイベントを知って参加しました。このキャンプで知り合った人とはいまだに交流があります。講師の方の講義を聞いたことで自分自身のモチベーションにもなりました。
◯生物物理若手の会夏の学校[6]
生物物理若手の会夏の学校というものにも参加しました。
もしかしたらプロから怒られる表現かもしれませんが、生物物理学というのは生物を物理学的な手法で考えようという学問です。怒られないような言い方をすると生物学と物理学の学際分野です。
若手の会というのは名前の通り例えば学部生や院生、ポスドクなど比較的若手の方が集まります。講演を聞いたりポスター発表をしたりというイベントで学部2年生の時に運営をしておりました。
先ほども述べたように、自分は繋げるというのをすごく意識しています。高校時代は数学を用いた医学研究がしたいと思っていましたし、今は天文学と生物学を合わせようとしています。
興味分野が広すぎるのも良くない気がするのですが、やりたいことがいっぱいあるならやりたいじゃないですか。「じゃあ合わさったところをやればいいじゃん」という考えで生物物理という分野にも興味をもっていますね。
◯オックスフォード大学春季研修
イギリスのオックスフォードという街に1ヶ月くらい滞在しました。
平日の午前中は語学学校に通って授業を受け、午後はオックスフォード大学やケンブリッジ大学の先生とオンラインで一対一で宇宙の授業を受けるというスケジュールです。このプログラムは大学を通じて申し込み参加しました。
午後の授業はいくつかコースがあったのですが、どのコースもしっくりこなかったので天文をやりたいと言ったら承諾してもらえました。
その後、授業のシラバスをもらったんですがすでに勉強している内容だったので先生を変えてもらい、レベルアップした授業を受けられることになりました。ただそれが宇宙論やブラックホールについての授業で、一気にレベルが上がってしまってコテンパンにされました。
この記号に見覚えがあるぞとかなんとなく知っているなというようなものはあったんですけど、そんなことを考えていると英語がサーっと流れていって…
本当に刺激を受けました期間でした。ホームステイをしていたんですが、いまだにホストマザーとは連絡を取り合っています。
◯国立天文台科学研究部春の学校
つい最近なんですが、2年生が終わる春に1週間弱実際に国立天文台に行って実際に研究体験を行う国立天文台科学研究部春の学校[2]に参加しました。
系外惑星の大気の分光スペクトルを調べました。「特定の波長だけ吸収されているならこういった分子があるんじゃないか」というのをパソコンを使って調べていきました。さらに「こういった分子があるということはこういうような惑星の形成過程を経たんじゃないか」とか。その第一歩を体験できたのはすごく良い経験となりました。
宇宙生物学を勉強しているんですが、この分野に系外惑星は深く関連してくるんですよね。「大気に水があったらもしかしたら生命が存在する可能性があるじゃないか」とか、「メタンがこんなにあるってことは何か生物が出しているんじゃないか」とかそういった部分まで深く議論することができたのですごく楽しかったです。
同じ考えをもっている人たちを大学の中で探すのって難しいんですが、春の学校ではグループの8人全員が多かれ少なかれ宇宙生物学に興味がある人たちだったので僕はすごく楽しかったです。
心残りがあってこのプログラムが終わった後もパソコンと睨めっこしてました。「まだやりたい」と思って。プログラム期間中は観測データをもらってソフトを使いそのスペクトルに合うようなフィッティングをしたりだとか、初期条件を設定してこういう初期条件だったら最終的にこういうふうな分子の存在構成になるというようなことをシミレーションしました。理論チックなものと観測をどちらも体験できたというのは自分にとって大きかったです。
ー自主研究について
阪大には自主研究のプログラムがあります。一般的には理系の大学生なら4年生から卒業研究という形で研究室に配属されて研究するという流れだと思うのですが、これをもっと早いうちからできるという制度です。
これを使って自分は1年生の頃にビックバン元素合成、2年生の時にはブラックホールの質量推定について研究させていただきました。
ここまでで僕の興味が広いのが伝わるかと思います。
◯自主研究を1年生からやったきっかけ
阪大を選んだ理由に、自主研究という制度があったからというのがありました。自分が早くから研究したいと考えている時に阪大に自主研究というプログラムがあるというのを知ったんです。
締め切りが確か4月中ばで、入学し1、2週間で教授にアポを取って話してというスケジュールでした。申し込みできるかできないかは話してから決めればいいかと思って、教授にメールを送りました。「1年生で知識がなくても熱意があるんだったら歓迎します。」と言っていただけて運が良かったなと思います。あ、間違えました。これは古林先生によれば”行動したから”ですね。
◯自主研究の研究内容
自主研究と言ってもある程度教授がテーマを決めてくれたりもするので、完全に自分で持ち込みをするのではなく、「うちでこういうことができるからこういうことをやりましょう」というパターンがあるんです。原子核実験のグループだったので、阪大の加速器を使って宇宙のことを研究しようということを提案してもらいました。
初めに原子核についての初心者向けの本を2冊読むように言われたんですがそこで宇宙リチウム問題[8]という問題があるということを知りました。
ちょうどその研究室も宇宙リチウム問題に取り組んでいたのでこのテーマを選びました。週1回くらい研究室に行って先生とお話をしました。最初の方は先行研究を調べたり自分で手を動かしてみたりしました。後半になるにつれて実際に自分たちの実験計画を立てて、長期休みを使って加速器施設に行ってデータをとり解析をするという流れでした。
2年目はこちらから研究内容を提示しました。1年生の冬にオックスフォード研修でブラックホールの授業を受けて、ブラックホールをやりたいと思って先生に突撃しました。
ブラックホールの質量推定に挑戦したんですが、ブラックホール自体はちゃめちゃに難しいので新しいことをやるというよりかは過去の研究を追体験するという形で行いました。
研究期間の半分くらいはゼミに取られてしまって。卒論発表をするような部屋に僕、教授、博士課程の大学院生の3人だけの状況で、僕が毎週作ったスライドを発表して先生に詰められるという経験をしばらくしたので強くなりました。先生が怖かったというよりそういう部屋野中で1人で発表するという経験によって鍛えられましたね。
先生が世界でやっているX線プロジェクトのジャパンリーダーをやっているような先生で、ブラックホールや基礎的な物理の考え方に関して勉強になりました。
1年生の頃使った加速器が大学のものとしては日本最大なんですね。どれくらい現象を観測できるかを表す指標である”分解能”が世界一というトップクラスの施設や、世界で活躍する先生と一緒にこういった体験をするというのは貴重な経験だったなと思います。
物理学科80人くらいのうち自主研究をやっていたのは5人くらいなので、自主研究を行うのはあまりメジャーではないです。1年生でやっていたのは僕だけでしたね。今年はKARURAに加入したのありますし、学会にも行ってみたい、院試の勉強もしないといけないということで自主研究はお休みして来るべき時に備えようかと思ってます。
ーここまで活発に活動される理由は...?
結構僕が大事にしているのが迷ったら突っ込んでみるということです。それこそ1年生で自主研究する時は怖いなと思っていたんですけど「せっかくだし楽しそうだからやってみるか」というふうに思って行動しています。やってもやらなくても後悔するならやってみようという。
もう1つ自分が思っていることとしては何が面白いかやってみないとわからないよねということです。天文の中でも幅広く手を伸ばしているし、そこに医学だとか生物だとかさらに手を伸ばしています。色々なものに興味がある中で決めるのは難しいので、実際に一回やってみて研究の道に進みたいと思い、いろんなことをやっています。
ー活発に活動されていますが、それでも気が逸れてしまうことはありますか?
宇宙兄弟ってわかりますか?主人公であるムッタの訓練期間中、指導教官がムッタに対して「君にとっての敵は誰ですか?」と聞くシーンがあるんですよ。
指導教官にとってはマスコミだったり宇宙に行かなくてもいいと考える天文学者だったりたくさんの敵がいると考えていたんです。ただムッタが敵は誰かと聞かれた時に「俺の敵はだいたい俺です」「自分の"宇宙へ行きたい”っていう夢をさんざん邪魔して足を引っ張り続けたのは結局俺でした」と言っていたんですけど、割とそれが真理だと思います。
僕は結構意志が弱くて、いまだに5分休憩しようと思ったらダラダラ30分過ごしてしまうこともあるんです。ただそういう特性があるのを自分でわかっているのでもう休憩を取らないというふうにしていたりしています。横で音楽を流したりして集中度合いを80くらいに抑えることで疲労を軽減して休憩を取らないようにしています。
昔父親は実は宇宙工学をやりたかったらしいんですが、生活が安定しないということで諦めたらしいんですね。実は大学に合格するまでこんな話を聞いたことがなかったんです。こういった背景があるからか宇宙系に進もうとしている僕をすごく応援してくれていて。僕にとって応援してくれる人がいるっていうのがなんだかんだ大きい気がします。「夢を語るんだったらそれ相応の覚悟を持つ」ということはブレてはいけないところだなと思います。
ー短中期的な目標はありますか?
まだインプットが足りないなと感じる部分があります。知らない物理もあるし、これまで習った物理も完璧かと言われるとそうではないと思います。これだけ幅広く手を広げたってことは要求されるものは増えていくわけで。
今の僕の興味は宇宙における生命の起源に興味があります。僕はパンスペルニア説[8]を支持しているので、宇宙で有機物やアミノ酸がどう形成されたのか、それがどう地球に運ばれたのかということを知りたいなと思っています。
仮に地球の生命の起源がわかったとするじゃないですか。でも地球以外の生命が誕生していたとしてもその起源が同じ理屈かと言われると厳しい気がしていて。宇宙空間で生命の元が生成されたという説の方が再現性がある気がしています。
そうなった時に化学などの知識も必要になるんです。第2の道を用意するんだったら医学の知識も必要になるし、KARURAでは今まであまり勉強してこなかった太陽系内の知識が必要になってきます。
自分が思考するにあたって、最初に固めるべきは知識だと思っていて。知識を固めた上で考え方とか高次の方に持っていくべきだと思っているのでまずは大元から固めていきたいなと思います。
ー最後に将来の展望について教えてください!
天文学者として星を見ながら生きていけたらなと思っていますね。僕はすごく繋げるというのを意識しているので、理論だけ観測だけというふうにはならないようにしていきたいし、天文学と生物学を繋ぐようなこともやっていけたらなと思いますね。
それと、大学院留学という形でもポスドクという形でも海外に行くことには興味があります。僕は定期的にコミュニティを変える節があって、出身は福岡なんですけど今大阪にきている理由の1つは九州から出てみたいというのがあったのです。なので大学院も全然大阪に絞ってはないです。
天文学者になりたいという夢もあるんですが、教育に携わりたいという希望もあって、専門的な部分と一般的な部分の架け橋になれたらなと思います。
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取材・文・編集:神戸大学理学部物理学科1年 家本康ゆに(広報部メンバー)