【ASE-Lab.メンバーの声】 #14 〜東京大学 待田凌さん編〜
海外や全国各地から宇宙好きメンバーが集うASE-Lab.
オンラインをベースにする団体の活動にメンバーは実際どのように参加しているのでしょうか?
メンバーインタビュー企画第14弾!
今回は、宇宙資源ゼミ企画者であり、宇宙開発フォーラム実行委員会SDFの代表も務めていらっしゃる待田凌さんにインタビューしてまいりました!
ー自己紹介
東京大学理学部地球惑星環境学科の学部3年をしている待田凌と申します。
現在は、宇宙開発フォーラム実行委員会[1]という学生団体の代表を中心的に活動しております。
大学では主に地球科学を勉強しています。具体的には、地球の成り立ちであったり、 どのように惑星が形成されたのかを学んでいます。実際に地層を見にフィールドワークも行くこともあります。
ー参加している他団体のサークルや学生団体について
メインで活動していたのはSDFと5月まで所属していたKARURA[2]です。
宇宙関連で言うと、UnFictionというSFを元に色々なものを生み出そうという団体や、UTokyo ClimateTech[4]という気候変動に興味を持っている学生同士の集まっているコミュニティに参加していました。
学生団体ではないのですが、 ディープテックを元に起業しようという東大の授業、「アントレプレナーシップ教育デザイン寄附講座」[5]を修了した人たちのコミュニティにも入っています。この授業を修了し、今年7月までBT(Bridging Tutor)として、受講者のサポート側にまわり活動していました。
ー趣味
最近は、あちこちいろんなところに旅行に行くのが趣味です。春休みだと鳥取に行ったり、四国に行きました。夏は大阪に行きたいと考えています。
ひとりでどこかへ行きたかったり、美味しいものを食べに行くということもあるし、友達と一緒にわいわい行くこともあります。大学の先生に会いに行ったり、イベントに行くついでにその周りを旅行するというのも多いですね!
ー専攻・授業の内容について
理学部の地球惑星環境学科に所属しています。JAXAの宇宙飛行士候補生である諏訪理さん[6]が在籍されていた学科です。
地球に成り立ちや火山が地球に与える影響、また気候変動、惑星について学んでいます。これらを分析やフィールドワークを通して検証していきます。
フィールドワークでは実際に自然の中に行って化石を掘ったりもしています。この専攻を選んだのは元々宇宙に興味があって色々学んでいく中で、「地球が惑星のシステムとしてすごい優秀で、人が住みやすい環境である」ということを感じたことがきっかけでした。
月に行くことも大事だけど、同時に地球を守ることもとても大事だと感じ、どちらのことも勉強できそうなこの学科に進学しました。
ー現在受講している授業
今は「地形地質調査実習」というまさに「地学」と言われて想像されるような内容の実習を受けています。顕微鏡を使って岩石を見たり、地球にある色々なサンプルを取ってきてそれを化学分析する授業です。
座学に関しては物理や物理化学の授業もありますし、機器分析に関する授業や、大気・海洋をシミュレーションで解析する授業など、3年前期なので幅広く受講しています。
最近面白かったのは、地球の中でどのように元素が循環してるのかを学ぶ地球環境化学という授業です。
ー地球について勉強したいのか、地球外の宇宙について勉強したいのか、決まっていますか?
両方勉強したいと思っています!
宇宙資源の話にも関連してくるんですが、月や火星の物質がわかると、「地球の鉱物を掘ったときに価値のあるものになるか」「宇宙に行って何を資源として使って、 それを何に役立てていけばいいのか」というのが両方わかるんですね。
地球 ・惑星の物質循環など地球にも宇宙にも両方関われる切り口から学んでいきたいと思ってます。
ー宇宙関連の課外活動を始めたのはいつ頃ですか?
1年生の春です。大学に入ってから、色々なサークルなどを見る中で「やはり宇宙分野に関わりたい」と思い、最初にSDFに入りました。その後ASE-Lab.に入り、コミュニティ内で流れてくる別団体の募集をきっかけに他の活動も始めました。
ーASE-Lab.に入ったきっかけ・時期
当時SDFにASE-Lab.代表の阿部さんがいらっしゃって、阿部さんに誘ってもらいました。面白そうなゼミとかあったら入ってみたいし、情報も色々流れてきそうだと気軽に入りました。参加したのは1年生の夏頃だったと思います。
ーASE-Lab.に入ってよかったことはありますか?
明確に良かったことは情報が流れてくるということです。そのおかげで僕はKARURAに入ることができました。
こういった情報は、ASE-Lab.がなかったら関東とか学生が集中している地域で情報が完結してしまう気がします。
ASE-Lab.を通して地方の人がSPACETIDE[7]のカンファレンスに来るきっかけになったり、色々な場所からASE-Lab.に参加できるというのは、他の団体にはない強みだと思います。
ーASE-Lab.での活動
以前は宇宙農業ゼミに参加したりしました。参加していたのはそれくらいなのですが、今は宇宙資源ゼミを主催しています。
僕自身が2年の終わりぐらいから宇宙資源についてちゃんと学びたいと思っていて、ASE-Lab.でゼミを立てました。1人で勉強するよりも輪読形式にすることで多様な視点で学べるので、みんなで一冊の本を輪読しています。
ー宇宙資源ゼミについて
アルテミス計画が始まって日本でも宇宙法ができたり、去年だとS-Booster[8]で宇宙資源に関連するJAXA発のベンチャーが優勝したりするなど、宇宙資源がすごい熱いトピックになっているんです。
宇宙資源というのは、宇宙に存在する鉱物そのものや、それを採掘する機械、鉱物の適切な運搬などを追求する学問分野です。一連の採掘の流れに付随した経済的な観点も含まれます。
宇宙資源ゼミではスペースマイニング[9]、つまり「宇宙で採掘を行う」というトピックを海外の本を輪読しながら学んでいます。
ー待田さんの宇宙移住や惑星に興味があるんですか?
大本の興味は、月・火星への移住というところだと思います。
興味の階層構造的な話をすると、月・火星への移住が1番上にあります。それを要素ごとに分解していくと、エネルギーや資源を使うことだとかのショートピックに色々分解できると思います。
あとは、ECLSS[8]というISSでも使われている酸素や二酸化炭素、水などを循環させる循環のシステムにも興味があります。宇宙移住関連で言うと、この3つあたりです。
ー宇宙移住に関心のある理由
最初のきっかけは単純に「宇宙に行きたい・住みたい」「いろんなところに移住するのは人間の本能だろう」というところから興味が始まりました。
今は宇宙に移住することの重要性を明確に認識しています。これは地学を勉強して思ったことなんですが、地球って他の惑星と比べて非常に住みやすくてめちゃくちゃ優秀な天体ではあるんですけど、一方で結構脆いんです。
今は宇宙移住することと地球を守ることを考えると、地球を守る方が圧倒的に簡単だと考えられていると思います。しかし、人間にはなんとかしづらいような大規模な出来事が多く予測されている以上、いずれは宇宙に移住すべき時がくると思います。なのでその時のために今から宇宙開発を続けていくのはすごく大事だと認識しています。
ーSDFでの活動について
SDFでは毎年9月頃に宇宙開発フォーラムというイベントの準備を軸に活動しています。
具体的には、学生団体として宇宙開発フォーラムで議論すべきイベントの内容を考えたり、その運営を行います。
僕は代表なので、全体を統括してうまくいってるところを見たり、 内容についてアドバイスをするだけでなく団体方針を考えたりしています。
ー宇宙開発フォーラムはどのようなイベントですか?
実際に今の宇宙開発で起きている問題についてパネルディスカッションで議論したり、グループワークとして学生の方・社会人の方と実際に手を動かしながらディスカッションをして、宇宙開発を促進していこうというイベントです。
去年の内容ですと宇宙開発広報や宇宙建築に関する問題を扱いました。その年の重要なトピックを扱っていて、宇宙へ移住した際の生活の質についても扱ったことがあります。
ーSDFの代表として意識されていること
この団体は20年間続いていて伝統的でいい面もありつつも、時代に合わせて変えていかなきゃいけないという思いがあります。
SDFは団体メンバーの教育システムがすごくしっかりしてるし、契約書であったり、イベントを開催するノウハウも蓄積されています。一方、新しい団体の活動とSDFの活動を比べてみて感じたのは、SDFでは必要以上に調整に時間がかかったり、フォーラムを開くだけでいっぱいいっぱいになって新しいことをやる体力がないという問題があります。
誰でもできるように色々なものを引き継いできたからこそ、当時は意味があったのかもしれないけど、今となってはもうそんなに意味が無くなってしまった文化や活動もかなりあります。
フォーラムでも新しいテーマを更新する必要があるし、宇宙系の学生団体がバンバン出てくる中で、SDFの価値が何かっていうのを問い直さないといけない時代なのではないかなと感じています。
フォーラムを盛り上げて今年のメンバーと一緒に色々やっていくことはもちろんのこと、 来年以降変わっていくきっかけを今年のうちに作るというのを特に意識しています。
ーKARURAでの活動について
加入したのは大学1年の時で、KARURAが設立されて比較的すぐの頃でした。KARURAではサイエンスチームに所属して、サイエンスミッションの達成に貢献するために活動していました。
KARURAはUniversity Rover Challenge(以下URC)[9]というアメリカのユタ州で開催される火星ローバーのミッションの大会への出場を目指して活動している日米国際チームになります。
配達ミッション、機器整備ミッション、自動走行ミッション、サイエンスミッションと4つのミッションがあります。そのうちサイエンスミッションだけは、科学について詳しい人が必要になるので、サイエンスチームとして1つの班を組んでミッションを考えています。
自分はサイエンスチームの中でも、水性地質班に所属していました。その班では拾った石はどういう石なのかを判別したり、URCの会場や火星の地形を学ぶために地質の勉強会を開いたり、自分たちで 「これを見つけたらこういうふうに判断しよう」ということをあらかじめ話し合っていました。
URCにはサイエンスミッションがある、というのがKARURAに加入した大きな理由でした。他にも宇宙ミッションの大会はあるんですが、サイエンスミッションがあるところは少ないんです。理学に考えが寄ってる自分としては肩身が狭い思いをしていました。 URCであればサイエンスミッションもあるし、自分の活躍できるところもあるかもしれない、そして大会に出てみたいという思いもあり、KARURAに入ることにしました。
ーKARURAで活動している中での気づき
宇宙探査のミッションがどのようにできているのかをすごくイメージしやすくなりました。色々ニュースを見たり、JAXAの話を聞いていたりしている時に、ミッションの組み方やそのミッションの難しさが分かりやすくなりました。
あとは単純にサイエンスにすごく詳しくなりました。サイエンスミッションを組むためにはサイエンスのことをよく知らないといけないので、その過程で色々勉強することができたと思います。
ー待田さんの将来像
今は大学での勉強やSDFでの活動を通して、自分の学びたいことを積極的に学ぼうと思ってます。
将来はすぐ宇宙業界に進むかはまだ分かりませんが、いずれは宇宙分野に帰ってくるんだろうなというのは感じています。そうでなくても直接的にアルテミス計画の流行りに乗っかって宇宙業界に行き、そのまま働くという可能性も大いにあります。
ひとまずは大学院に進学して、理系的な知識や技術をつけようと思ってます。
また、今後は日本で1番宇宙資源を研究されている宮本先生[10]による講演や、ゼミを学んだことを元にしたワークショップなどを盛り込んだイベントを開催しようとしています。[11]
ー待田さんの願いとは?
個人的には自分と近いバックグラウンドを持った人が増えてほしいし、自分がその先駆者になりたいと思ってます。
例えば、宇宙移住と宇宙移住について、地球の歴史的な観点から考えて移住していくことが必要だということであったり、宇宙資源の重要性を認識して色々な観点から考えていく人になりたいと思っています。
そして自分はこれまで関わってこなかった人たちが新しい分野に関わるというのがすごく大事だと思っています。自分は地球科学という珍しい分野を勉強しているので、まずこういう関わり方があるという先例を作っていって、自分もやってみようという人を増やしたいです。
この記事を読んで私達の活動に興味を持ってくださった方は是非弊団体のウェブを覗いてみてください!↓
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取材・文・編集:テキサス大学オースティン校 天文学専攻 家本康ゆに