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発達障害のカミングアウトをどう考えるか

 ある医療職の当事者が発達障害(ASD, ADHD)を抱えながら働いている中で、障害を周囲に開示しない選択をしている記事を拝読しました。彼女は自分の特性を深く理解しつつも、開示によって「ただの一人の人間」ではなく「障害者」として特別扱いされることを強く恐れているようです。この投稿には多くの示唆があり、発達障害を持つ人がカミングアウトすることの難しさや、それがもたらす影響について考える機会を提供してくれます。

 彼女が発達障害の開示に抵抗を感じる理由は、「障害者」としての扱いへの恐れ、「甘え」に対する自己防衛意識、「普通」であることへの執着、そして「一生懸命働くことで得られる信頼」の重視にあると考えられます。発達障害を開示することで職場から「普通の人」ではなく「障害者」として特別視される可能性があります。彼女はそれを懸念しており、これまでの努力や能力が正当に評価されなくなることを恐れているようです。また、発達障害を理由に支援を受けることを「甘え」と捉えています。その理由は、自分自身の努力や誇りが損なわれることへの恐れや、対等な関係が崩れることへの拒絶感からきているのでしょう。

 彼女は「ただの人として見られること」に喜びを感じており、発達障害のラベルが自分のアイデンティティに負の影響を与えることを嫌悪しているようです。「普通に働けている」ことが自己肯定感の支柱となっているため、それを失いたくないという心理が働いているのでしょう。さらに、彼女にとって職場での信頼関係は何よりも重要なようです。障害を開示することで、「できない人」というレッテルを貼られ、信頼を築くチャンスが失われることを恐れています。

 一方で、発達障害を開示することで職場環境や自身の負担が軽減される可能性もあります。しかし、彼女はその選択が「甘え」につながると感じ、自分の努力や信頼を損なうリスクがあると考えているようです。彼女の価値観においては、努力や成果によって得られる信頼こそが自己実現の一部であり、開示がそのプロセスを妨げるリスクを避けたいという思いが強くあると感じているようです。

 彼女は発達障害を開示しないことで、「普通の一人」として周囲に受け入れられています。この結果、失礼なことを言ってしまう場面があっても、努力が認められて居場所を得ることができ、場合によっては頼られる経験もしているようです。開示をしない選択は、彼女にとって居心地の良い環境を保つための重要な戦略であり、これが「本当の意味での自分の居場所」を作る鍵になっていると感じているようです。

 発達障害のカミングアウトは、職場環境や信頼関係の状況によって大きく異なります。私のように開示することで適切な支援を受け、業務効率を高めることができる場合もあれば、開示によって対等な関係が崩れるリスクもあります。そのため、彼女のように慎重な態度を取ることは理解できますが、環境によっては開示が有益である場合もあります。例えば、職場が多様性を受け入れる文化を持ち、開示を通じて適切なサポートが得られる場合、彼女の負担が軽減され、本来の能力をより発揮できる可能性があります。

 発達障害を開示するか否かは非常に個人的な決断であり、一概にどちらが正しいとは言えません。しかし、彼女のように「普通であること」「対等であること」に強い価値を見出し、その価値観を守るために開示を避ける選択は、多くの人の共感を呼ぶものです。それでも、開示によるメリットとデメリットを冷静に見極めることは重要です。彼女のように自分自身の居場所を作ることを重視しつつ、必要であれば支援を受ける選択肢を視野に入れることが、より良い働き方につながる可能性もあるでしょう。


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猫男@ASD
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