ノンフィクション連続小説第⑦話 『妖怪の棲む家』
初めて夜あの旧家に行った。1月の寒くて暗い夜だった。家のガスが突然調子が悪くなってしまいお風呂に入れなくなったのだ。私たちは母に連れられて旧家のお風呂を借りに行くことになった。
あの恐い家に夜訪れるのは初めてだ。しかも一人で入るお風呂...入れるかな。
案の定、怯えてしまった。
ここのお風呂は台所から通路を歩いた、家の一番奥にある。
縦に長くて広いお風呂場だ。中に入ると洗い場があり、奥に大きな岩風呂がある。真っ黒なごつごつした岩でできている。掛け流しのように壁についてる動物の口からお湯が出ていて床にお湯が流れっぱなしだ。ジャージャーと大きな音を立てている。お風呂の照明はとても暗い。岩風呂も床も壁も黒い。目が慣れず真っ暗でほぼ何も見えない。
私は一度脱衣場で服を脱いで入ってみたものの怖すぎて再度母を呼びに行った。
母は台所の隣にある応接間にいるとのことで、私はお風呂場のドアを開けたまま入るから、何かあったら呼ぶから来てねと伝えてお風呂場に戻った。
ドアを開けたままにして何度もそちらを確認しながら体を洗った。
岩風呂におそるおそる浸かった。ぬるぬるしていて滑る。ザーザーとお湯の音がするのが不気味だ。ここからはドアも見えない。私はすぐにあがった。
洗い場で髪と身体を再度流しながら、ドアの方を見ていると、ダークグレーの猫が、台所のテーブルを狙ってぴょんと飛び乗るのが見えた。
え...?猫飼ってないよね?なぜ...?
私はドキドキしながらお風呂を上がって服を着て、そっと台所に近づいた。
おそるおそるテーブルの上を見る。猫はいなくなっていた。あたりを見渡したがいなかった。
私は忍足で母のいる応接間に行った。
「猫がテーブルの上に乗ったんだけど。」
「猫はいないよね。...どぶネズミじゃないかな...。」
「え。それはやばいよ。台所のテーブルに乗ったんだって。」
「か、か、帰ろう!!」
私たちは、荷物をまとめ2階にいる祖父母への挨拶もそこそこに急いで家路に着いた。
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第7話はここまで。第8話も奇妙な話は続きます。ご期待ください。
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