大都市災害に備え草の根の交流を!都市と農村をありがとうで繋げよう!
長期避難を想定して、都市と農村それぞれにウィンウィンの関係で繋ぐ。
今後予想される首都直下型地震や洪水などの大都市災害時には、都市部の住民の大規模な避難先の確保が大きな課題となっています。東京都の被害想定では、電気や水などのライフラインが復旧するには数日から数ヶ月かかると予測されています。
多くの都市住民が長期化の予想される避難生活への不安を抱えながら暮らしています。加えて、最近は感染症への対応として、密集した環境からの避難も想定されます。
私達は、都市住民の避難先として都市近郊農村(霞ヶ浦流域)で急増する空き家を活用することを提案しています。本提案では、平時から都市と農村の住民が交流を重ね、地域が抱える課題解決に恊働で取り組み、互いにありがとうと言えるウインウインの関係をつくりながら、災害時の良好な受け入れ態勢の整備を広域的に展開していくことを目指しています。
予想される都市部からの避難先確保や避難の長期化への対応は十分か
災害発生前後には、広域避難による大規模な人の移動が想定されます。
しかし、被災した多くの都市住民はどこに避難すればいいのでしょうか。都市部からの長期避難を余儀なくされた人々に対して、受け入れ先となる地域ではどのように準備し対応すればいいのでしょうか。自治体間の連携も十分に進んでいるとは言えません。
大規模かつ長期化する都市住民の避難体制をどのように具体化していくのか早急に議論を進め、具体的な取り組み始める必要があります。
私たちは都内からのアクセスが容易で、長期間自立的な避難生活が可能な里山環境の活用を提案します。
大災害に備えて、予め長期滞在が可能な避難先が確保され、具体的な避難経路が想定されていることは、当事者にとって大きな安心を与えてくれます。
私たちは、首都圏内に位置し都市型の災害が及ばない地域にあり、避難者が移動可能な平坦地に立地し、水や食料、燃料等の避難の長期化に必要な資源の確保が容易な霞ヶ浦流域の水源地に数多くある農村集落への避難を提案しています。
霞ヶ浦流域は、首都圏50キロ圏周辺に位置しているため、避難が長期に及ぶ場合も、避難者が都市部の自宅や勤務先にアクセスすることが可能です。また、企業などの事業活動を持続させるために、食料や燃料や水など自給自足できる環境をベースにしたサテライトとして機能させることも可能です。
集落の過疎化に伴い荒廃が進む霞ヶ浦の水源地・里山
避難先とする里山集落は、水源地谷津田に面した台地上にあり古くは縄文時代から人々が暮らす安定した環境にありますが、近年過疎化が進み空き家が増加している地域でもあります。これらの空き家を都市と農村との交流の場(問題や課題と共に取り組む場)として生かしていけないかと、この提案を考えました。
霞ヶ浦流域の避難者受け入れ可能な環境とポテンシャル
霞ヶ浦流域の水源地谷津田に位置する各集落は近年過疎化が進み空き家が目立ち、田畑や森林の荒廃が進むなど多くの集落が存続の危ぶまれる状況にあります。その背景には、農村の人口減少、高齢化、少子化、コミュニティ機能能の低下などがあります。従来は閉鎖的であった農村集落も危機感を抱き、近年は外部からの支援や参加の受け入れに前向きになっています。
水源地であることから災害時にも、良質の水が十分に確保できます。周囲に里山があるので燃料も確保できます。田畑もあり食料も確保できます。里山や水源地の再生活動を通して、予め地域の住民との関係づくりを行なっておくことで、避難時の地域の支援も受けやすくなります。
霞ヶ浦再生という大きな目標を共有。
アサザ基金では、霞ヶ浦の水源地に位置する過疎集落(牛久市)で空き家になっていた古民家を活用して、地域住民や小中学生と里山再生の取り組みを行なっています。この取り組みの最終的なゴールは、霞ヶ浦の再生です。
過疎集落が接している谷津田や里山の多くは霞ヶ浦の重要な水源地であり、これらの水源地の保全や再生を流域レベルで実施してなければ、霞ヶ浦の再生も実現できないからです。
このまま里山の自然と共にあった集落の暮らしが失われていくと、水源地の荒廃を食い止めることができなくなり、霞ヶ浦の環境悪化がさらに進んでしまいます。
上流部に位置する水源地の荒廃が進むと、下流部での洪水リスクも増大します。頻発する豪雨災害に備える意味でも、上流部の谷津田や里山を保全する意味は増しています。もちろん、水源地は里山の生物に残された貴重な生息地であり、これらの大規模な荒廃は生物多様性にも甚大な影響を及ぼします。
私たちは、1995年に始めた霞ヶ浦再生事業アサザプロジェクトを通して、霞ヶ浦流域各地で様々な取り組みを展開してきました。それらの取り組みの中で、霞ヶ浦再生への願いを様々な人々や組織と共有してきました。この30年間、アサザプロジェクトを通して生まれた繋がりや流域のネットワークを、災害時避難者受け入れに生かしていきたいと考えています。
地域課題に共に取り組む。平時からの地域づくり活動への参加によって、災害時の良好な避難環境を確保することができます。
先述したように、霞ヶ浦の水源地では様々な問題(空き家、人口減少、コミュニティ機能の低下、耕作放棄地、森林荒廃、生物多様性の低下、祭りや伝統行事の衰退など)が生じています。地域への避難を希望する都市住民が、平時から集落住民との交流を深め、避難場所とする空き家の住環境整備と合わせて、地域課題の解決に参画することで地域の住民との信頼関係を築いていくことができます。
例えば、霞ヶ浦流域の水源地では、放置竹林や森林荒廃が拡大して問題化していますが、これらの竹林や雑木林は災害時には貴重な燃料源として、調理や風呂、暖房などに活用できます。周囲の竹林や森林の整備を行ないながら、切り出した木や竹をカマドやストーブ、風呂などの燃料に活用できます。災害時に必要な暮らしのノウハウを地域の人達から学ぶ講座やイベントなどを行うこともできます。
耕作放棄地を整備して田畑に戻せば、農業体験を行い避難時に備えて食料を確保できます。過疎集落では、子どもや若者の参加が減って存続が危ぶまれている祭りや伝統行事の復活もできるかもしれません。
谷津田米などの定期購入を通して交流を深める。
集落で開催するイベント等の参加ができない人達には、霞ヶ浦の水源地再生地で収穫した無農薬栽培の米(谷津田米)の定期購入を通して、地域との交流を深めてもらうこともできます。米の他には、集落で収穫されるリンゴなどの果物やカボチャやジャガイモ、サツマイモなどもあります。谷津田の米を購入してもらうことで、霞ヶ浦の水源地谷津田の再生がより進みます。
草の根による都市と農村とのウインウインの関係づくりで広域的な効果を生み出す。ありがとうの繋がりづくりに積極的な支援を。
首都直下型地震や大規模洪水などの都市災害への対応も、大型湖沼である霞ヶ浦の流域保全対策も、取り組みの広域展開と持続性が求められます。
都市と農村の住民同士が、それぞれが抱える問題や課題を持ち寄り、恊働で取り組む場を創り、日頃からの交流を深め、ありがとうの繋がりで危機を乗り越えることができる、広域展開を実現していきたいと思います。
東京都には、このような草の根の連携づくりへの支援を期待します。
認定NPO法人アサザ基金 代表理事 飯島 博