【短編戯曲】雪やどり
登場人物
あずさ
たくま
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雪が降っている。
あずさが軒先に走り込んでくる。
やむ気配のない雪を見つめている。
そこへ、同じように雪宿りをするためにたくまが走り込んでくる。
たくま 「やみそうにないですね」
あずさ 「え、ええ・・・」
たくま 「でも。今夜にはやむそうですよ」
あずさ 「そうですか。早くやめばいいのに」
あずさ、空を見つめる。
たくま 「寒くないですか」
あずさ 「大丈夫です」
たくま 「それは良かった」
あずさ 「・・・」
たくま 「・・・」
あずさ 「あなたは?」
たくま 「僕?」
あずさ 「寒くないですか」
たくま 「ええ、僕は」
あずさ 「そう・・・」
次の言葉が見つからず、無言が続く。
たくま 「雪がやんだら僕たちは消えるんです」
あずさ 「消える?」
たくま 「それが僕たちなんです」
あずさ 「なにが・・・ですか」
たくま 「雪の日だけなんです」
あずさ 「・・・?」
たくま 「雪の日だけ、あなたに会えるんです」
あずさ 「私に、会える?」
たくま 「あなたにもう一度会いたかった」
あずさ 「え?」
たくま 「僕を作ってくれてありがとう」
あずさがたくまに顔を向けると、そこには小さな雪だるまが立っている。
あずさ 「あれ・・・?」
あずさが周りを見回すが誰もいない。
今まで彼がいた場所に雪だるまが出来ている。
雪だるまに小さな紙切れが挟み込まれている。そこには、
「あなたが好きでした」
そう書かれていた。
あずさの脳裏に幼い頃に作った小さな雪だるまの思い出がよみがえる。
あずさ 「私も会いたかったよ」
雪だるまに手を添えるあずさ。
あずさ 「(空に向かって)お願い。もう少しだけ降ってて・・・」
崩れかかった小さな雪だるまに微笑みを向けるあずさ。
~了~
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