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脳裏に浮かんだのは、4年前の秋の風景だった。

高校三年生の秋、いわき市へ行った。

アリオスというホールで開かれた「ふくしま復興祈念特別演奏会」に参加するためだ。

「20年前はありがとう。今度は私たちが力になるよ。」

私の高校の吹奏楽部が兵庫県代表として出演した。いわき市の某高校の吹奏楽部も一緒に演奏した。

一緒に演奏したいわき市の高校の吹奏楽部は、全国大会に出場するくらいレベルが高い。音色が綺麗だった。見ている側が微笑んでしまうくらい楽しそうな演奏。初めてできた同じ楽器の友達。嬉しかった。刺激的な演奏会になった。

一緒に演奏したのは2曲あったはずだが、尾崎豊のメドレーしか覚えていない。

この曲を聞いただけで、顧問の先生の表情・譜面・明るく照らされた舞台を思い出すから、音楽は不思議だ。しっかり曲を歌えるのは頑張って練習した証拠なんだろうか、なんて思いながらすごく感動している。

演奏会を終えて、両吹奏楽部はホールのとなりに流れる川の河川敷で集合した。いわき市の高校の吹奏楽部の顧問の先生が、震災当時の話をしてくれた。本当にこの地で生活が大きく変化してしまうような事が起きたとは思えなかった。衝撃だった。先生の1つ1つの言葉は丁寧に紡ぎ出されていた。

穏やかな川。色鮮やかな野草。遠くで沈みかかっている太陽。そして目の前に立つ先生。この遠征のことを思い出す時に、真っ先に出てくるのがこの風景である。

それから4年が経った秋。台風19号が東日本に猛威を振るった。いわき市では洪水の被害が起きている。あの川が一変してしまった。

今までは災害が起こるたび、ニュースやSNSを眺めながら何もできないと思った。だから何もしたことがない。他人事だと思っていたんだろうな。

でも、今回は違う。何かしたい。わたしには何ができるのだろう。


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