廃屋の怪談 ①
ある日の事。
町外れに、大きく古めかしい木造の廃屋がある。洋館みたいだけど和の雰囲気もあって、こういうのを和モダンっていうのかな。だけどそれが元々誰かの邸宅だったものなのか、どういう類いの建物だったのかは知られていない。
(まあ、別に知りたくもないんだけどさ)
周りの木々は化物みたいに生い茂り、蔦や苔が所々に深く侵食しているその様は、どう見ても妖怪屋敷である。実際、そういう噂もたくさんある。火の玉を見たとか、石像が襲ってくるとか、首のない女が歩き回っているとか。あと異様に胴と中指の長い生き物が、ずっと後をつけてくる……とか。ああ、ちょっと想像しちゃった。想像したら気持ち悪くなってきた。
俺はオカルトや超常現象を信じているかと聞かれたら、正直微妙だ。絶対にいる!と結論づけられる程の興味がない。だけどホラーゲームやそれ系の映画で得た知識や映像が、頭の中に残っていて。だから暗闇が怖いとかそういうのって、人の想像力からって事もあるんじゃないかと。俺が怖いと思う物事は、結局俺の妄想なんじゃないのかと。でも絶対いないとも断言できない。つまりよく分からない世界。まあ、怖がりっていう事には代わりないんだけどね。
(因みにこの間、獄寺君にこの話をしたら何故かめちゃくちゃ喜ばれた。世界の不思議が好きだからかな)
とにもかくにも、自ら率先してそういうモノに関わるべきではない。絶対に。
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ぎしぎし。嫌な音が足下から鳴る。
外観から判断した通り屋敷内も相当酷い。いったい何年前に建てられたのかは知らないが、かなり老朽化が進んでいるようだ。小さい頃に観た映画を思い出す。学校を舞台にしたホラー映画で、その時に出てきた旧校舎に雰囲気が似ていたから。…ああ、気持ち悪い。
「どうかなさいましたか、十代目?」
「気分でも悪いのか?」
「いやね。なんか昔観た映画を思い出してさ」
「映画ですか?」
「学校の旧校舎が舞台で、そこに子供が迷い混んで次々にお化けに襲われるっていう…」
「ああ!それ俺も観たぜ。小学生の時な」
「その旧校舎に、ちょっと雰囲気似てるなって」
「ここがっすか?」
「うん」
「んー、そうか?」
「おい野球馬鹿!十代目が言うんだ似てんに決まってんだろが‼️」
「獄寺君、静かにしてね?」
「はい十代目‼️」
「でもあの映画、俺は口避け女のくだりが面白かったな」
「…面白かった?」
「ああ、あれね。俺は人面犬がウケた」
「…ウケた?」
「あはは!分かる分かる。関西弁喋る奴だろ?」
「…関西弁?」
「そうそう、眉毛がカモメの」
「…カ、カモメ?」
「電柱に激突して穴に落っこちるんだよな!」
「…電柱、穴?」
「どうしたの獄寺君?」
「…あの、カモメとか電柱とかってその。それホラー映画として怖いんですか?」
「「いや全く」」
「………」
子供向けだからグロい表現とか全くないし、どちらかと言うとギャグ路線だった気がする。確か母さんに連れて行ってもらった時、映画館で度々起こるのは悲鳴よりも笑い声だった。何と言ってもこの俺がビビらなかったのだから、それだけで充分に説得力があるだろう。…あれ、自分で言っててちょっと虚しい。
ガタガタ。風が強いのか窓ガラスが先程から煩い。というか、窓ガラスが割れずに残っているのが奇跡だと思う。台風何かが来たら速効で倒壊してしまいそうなものだけど。
「何で蝋燭なんだろ…」
「ん?」
「足場が悪いんだし、懐中電灯でいいと思うんだけど」
「仕方ないですよ十代目。リボーンさんがこっちの方がムード出るって、持ってきたやつ全部没収しちまったんですから」
ああ、そうだ。そうなのだ。
全ての元凶は奴、最強最悪最凶とおぞましい3Sの称号を持つ。我が家のドSな家庭教師様なのだ。
つづく。
※家庭教師ヒットマンREBORN二次創作
季節外れの肝試しをする話。
大空、雨、嵐の一年三人組。永遠に友達でいて欲しい。