焼き芋日和
響く銃声と怒鳴り声が耳を貫いて、うるさい。
不愉快だな咬み殺しに行こうかななんて考えていたら、いきなり名前を呼ばれた。自分よりも確かひとつ下の彼は。青年と呼ばれる歳になっても、まるて変声期を無視したかのようにチンチクリンのままだった。
要するに変わらない。
「雲雀さん、お久しぶりですね」
「こんな所で何してるの?」
「焼き芋を買いに行ってたんですよ。日本のスーパーは優秀ですよね」
「仕事をサボって?」
「休憩ですから」
「さっきから煩いんだけど、これは君を探してるんじゃないの?」
「銃声は確実にリボーンの仕業ですよね。また壁に穴空いちゃうなぁ、せっかくこの前修理したばかりなのに」
「泣き声が聞こえる」
「獄寺君ですね。年々、心配性が増してるんですよね」
「泣きながら君の名前を連呼してるね」
「もう、獄寺君たら」
「沢田」
「はい?」
「逃げ出したんだろ?」
「違いますけど」
「抜け出して来たんだろ?」
「だから、ただの休憩ですってば」
「……………。」
「…あ。雲雀さんお芋食べます?」
「……………。」
「美味しいですよこれ。さすが雲雀さんの並盛スーパーですね。匂いからして、すっごく甘そう。雲雀さんも嗅いでみて‼ほらほら‼️」
「…君ねぇ」
「そんな呆れ顔しないで下さいよ‼️」
「良い歳した大人が何をやってんのさ」
「仕事の拘束時間か長いんです!久しぶりの日本なのに、ちょっとくらい休んでも良いって思いませんか‼️」
「やること終わらせてから休めよ」
「雲雀さんだって、いっっつもフラフラして仕事しないじゃないですか‼️」
「当たり前でしょ。僕は君の部下になったつもりないんだから」
「酷い‼給金泥棒って言うんですよそれ‼」
「ワオ何きみ。僕に意見しようって言うの咬み殺そうか」
傍若無人!横暴だ‼️
と、それでも尚ぎゃあぎゃあ騒ぐから。取り敢えず頭を殴っておく。そうした今度は小声でぶうぶう頬を膨らませるから、つい笑ってしまった。
「わ。雲雀さんが笑ってる」
「何驚いてるの」
「怖いなぁ」
「どういう意味」
「雨が降るかも」
「失礼だね」
「槍だったら嫌だなぁ」
「脳天に刺してやろうか」
「あ、でも雪なら嬉しい」
「話を聞きなよ」
「お芋食べます?」
「…うん」
いつから彼はこんなに図太い神経を持つようになったのか。そんな事は忘れた。少し我儘で、少し腹黒くなったと思う。だがやはり根本的な部分。甘っちょろいところは相変わらずだ。
いつの間にか騒がしい銃声は消えていた。抜け目のないあの赤ん坊の事だ、きっとすぐに見つかってしまうだろう。
ふと、隣に座る沢田を見る。彼はほんのり橙かかった太陽を見ながら、優しく目を細めた。時の速度が急に落ちたように、僕等の空気はゆったりとしていた。
焼き芋の、口内に広がる練っとりした甘さを堪能しながら。もしかしたらこれは、幸福な事なのかもなと。僕は目を閉じた。
※家庭教師ヒットマンREBORN二次創作
綱吉と雲雀
友達では無いけど、他人でも無い話。
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