Tumbling Dice from JUMP BACK
荷造りの途中で旅券が見当たらないことに気づき、軽くパニックになる。挟んでおいたファイルが、ない。積み上げた資料のファイルの束のどこかだ。これだ。が、旅券の入った封筒だけない。家探し。結局、さっき棄てた、カバンのなかのゴミに混ざって出てくる。
そんなわけで一向に進まない準備。そのなか急に打合せが挟まり、そうこうしているとバタバタと仕事の時間になり、慌ただしく残務を引き継いで、帰宅。部屋中に点在する着替えと、歯ブラシとシェーバーを適当にリュックに突っ込み、あとなにが必要だっけ。
久しぶりのような、そうでないような。『かげきはたちのいるところ』で行ったのが2年前か。はるか昔のようだ。もっとも、去年の劇団版『SHINE SHOW!』も何年も前のような気がするのだから、その辺の時間感覚は毎度信用ならない。
大阪・京都は劇団で行っただけでもちろん地元ではないし、兵庫なんて姫路城観に行っただけの、縁もゆかりもない土地である。だけど、東京モン(千葉で旗揚げしていまだに千葉住まいだからそれですらないけど)でよくわかってないから広く「関西」として、個人として思い入れがないわけではない。
それはやっぱり、何度も単身乗り込んだ、というのが大きいんだと思う。何年も前だけど、劇団員が辞めたり増えたりして、作品もそれなりにコンスタントにウケるようになって。ようやく「劇団としては」成長してんな、と感じると同時に、「個人としては」うっすらとした無力感と閉塞感が拭えないままでいた時期。だからなのか、どういうわけか大阪のインディペンデント・シアターで、ひとり芝居をやることにした。ひとりで台本書いて、ひとりで稽古して、誰にも観せないまま、万一にも観客投票で勝っっちゃったらindependentの2ndでひとり芝居だぜ、て状況に臨んだ。なぜだか結構ウケた。もっとなぜだか1次審査も通った。当然、本戦には残れなかったが、なぜたかとても口惜しかった。
それから、夏の大阪ひとり旅は一時期のおれのライフワークとなった。一度も本戦には出られないままトライアル出場条件の「3回まで」を使い果たしてしまったが、どうにかしてまた潜り込めないかを画策している。
あの日々で、芝居が巧くなったとは思えない。強くなったとも思わない。自身ではテクニックやパワー、そういうものがなるべく問われないようなネタを書いてしまうから。それに、場数とか経験とか、あんまりそういうものも信じないようにしているから。
でもまあ、こうやって折りに触れ思い出すってことは、大事なイベントだったんだろうな、と素直に思う。「ひとり」だったから誰とも共有できないけど、ちゃんと闘って、ちゃんと敗けた。出会いもあった。思わぬ再会もあった。「ひとり」だったからそのぶん、ダイレクトに響いた。
だから縁もゆかりもない関西に、おれは勝手に縁を感じている。相変わらずゆかりはないけど。出身とか血縁とかでなく、後天的だからこそ。決断して実感したものだから、それはよりおれのなかで大きいのだ。
と、つらつら書いているがお気づきだろうか、
これを書いている間、まったく兵庫行きの準備は進んでいない。まごうことなき現実逃避。
だがその前にもうひとつ、
既報通り、
復ッ活ッ 矢吹ジャンプ復活ッッ!
さあて、万全で迎えるぜ。
『SHINE SHOW!』兵庫公演、いよいよ9.15から。お見逃しなく。
ところで、ヘッドホンはどこ行った?