Will it Go as Operation?? #2
「中年男性を主人公にしたロマンティックコメディ」というリメイク構想の指針とした作品に、『ハイ・フィデリティ』という大好きな映画がある。ニック・ホーンビーの原作をジョン・キューザック主演で映像化した作品で、あのジャック・ブラックの出世作でもある。個人経営のレコード屋を舞台に、ひとりの男の失恋と、そこからのズレた奮闘劇を描いた「中年青春映画」。こういうものを作りたいと、そう考えたときに「さびれた古本屋でしょうもない恋愛相談をしている矢吹・古谷」という画が浮かんだ。なんか書けそうな気がした。
ふたりを中心に、中心となる登場人物の配置も自然とハマっていった。好きな小説をきっかけに急接近する若者たち、仕事はできるがプライベートが全然見えない女性店員。原作付きのありがたいところで、プロットは元より大体決まっているから、キャラクターが見えればそれなりに会話になる。とりあえずあとで直せばいいや、くらいには筆が進む。
「ずっと指差されて笑われてきた/だからおれたちは天才だ/狂った世界を変えようとしている」と言うのはザック・ガリフィアナキスが映画で言っていたセリフだけど、そういうミスフィッツたちが集まる場所として、時代遅れの場所が、こういうコメディには向いていると思っている。レコード屋のように。
しかし、しばらく書いて、手が止まる。「これ、本屋である必要はあるのか?」と。元が「ショッピングセンターのバックヤード」というなんの性質もないセッティングだったからか、「古本屋」だからこそできるネタが書けていないのだ。たとえば『ノッティングヒルの恋人』になぞらえたちいさなネタとかは書けるのだが、プロットレベルで「ここが古本屋でなければいけない理由」が薄い。テーマ的にはいいが、展開にならない。他の選択肢はすでに浮かんでいる。どこでもいいなら、ここじゃないんか。
じゃあ、と実は最初にもうひとつ候補だったレンタルビデオ屋を舞台に置いてみると、こちらでも同じようにすんなりと進む。同じように、いや本屋以上にすでに「デッドメディア」と化した商品を扱う店であり、それでいて自分の「青春」という一時代に、古本屋とおなじく入り浸った場所である。それに、同じくジャック・ブラックの『僕らのミライへ逆回転(という邦題は好きじゃない、というか原題の『Be Kind Rewind』がステキすぎる)』だったり、敬愛するタランティーノの若いときのバイト先だったり、そんなというどうでもいいことも含めて、思い入れがある場所で、行ける気は、する。
あとは、フレーバーではなく、「レンタルビデオ屋」をちゃんと素材として使い切れるか。要するに、ここでしかできないネタを書けるかどうか。そしてここでもうひとつ、ずっと目を逸らしていた問題が浮上してくる。どういうキャラクターにするか、あまり決まっていない登場人物が、ふたりほど存在するのだ。