断片日記/23.9.15

目覚ましより少し早く目覚める。

入り時間から考えると、まだまだ寝ていられるが、吝嗇ゆえ旅先で惰眠を貪る贅沢には耐えられない。

そのまま手早く準備を済ませ、宿舎をあとにする。昨日は現地入り→そのまま即小屋入り、夜まで稽古だったので、ツアーのひとつの楽しみであるいわゆる「街歩き」の隙がなかった。で、慌ただしいが公演初日の午前をそれに充てようというわけである。

とりあえず凄まじい空腹が襲ってきたので目についた立喰いそば屋へ。なにも考えずうどんを注文するも出てきたのは完全に讃岐風ぶっかけで、関西風のかけうどんを想定していたので出鼻を挫かれる。いや、別に旨いからいいんだけど。

駅のエスカレーターで頑張って意識して右側へ並ぶ。この極小の不快が久々の感覚、「旅」って感じで心地良い。新幹線2時間のカルチャーギャップ。

そこまで時間的余裕があるわけではないので、会場のある西宮からそこまで離れていない、伊丹に移動。目指すは有岡城跡。フェイバリット戦国武将のひとり、荒木村重の居城だったところである。

下克上で城を奪い、織田信長に帰順して領地を得、しかし謀叛を起こすも失敗、妻や家臣を見捨てる形で自らは落ち延び、茶人として生涯を閉じる―その間、黒田孝高(ま、官兵衛)を土牢に幽閉したり、「道糞」というあまりにあまりだということで「道薫」に改名したりと、興味を惹くエピソードに事欠かない戦国武将である。遠藤周作の『謀叛』や米澤穂信の『黒牢城』など、小説の題材にされることもしばしば(どちらも傑作なんで、ぜひ)。

有岡城はなんとJR伊丹駅降りてすぐ、というよりおそらく城址の一部を整地して駅施設にしていると思われる「直結」具合だった。その割に、石垣や井戸跡、堀跡もはっきりわかる形で保存されているのが面白い。駅前以外も街の処々に総構えの跡がうかがえる。また、付近には殉死でお馴染みの乃木大将(そういえば乃木坂の語源)ゆかりの石碑が駅前にあったりと見所は多いが、名所のひとつ「官兵衛の藤」の下でオッサンが「言っとくけどワタシ〇〇さんと繋がってますからね。嘘はすぐわかりますからね」と誰かを脅していたし、なにより日差しが強すぎるのでそこそこのところで退散。

劇場へは阪急の伊丹駅なので徒歩。それで移動できる距離だが、やはり暑い。乗り換えつつ、降車駅少し先の駅名に見覚えが、ここで流すはもちろん、N'夙川BOYSで『Hello,999』。

汗が引かないので駅でアイスキャンディーを食べる。ゴミを捨てる場所が見つからず、咥えた棒をどうしようかと思案しながら小屋入り。さて、兵庫初日。どうなるか。







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