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NISAやるより歯医者へ行こう

はじめに

 「#いい歯のために」というテーマでnoteでの投稿が募集されていた。実に私にぴったりのテーマである。自慢ではないが、我が家は歯に関する意識がけっこう高い家庭だと思う。我が家は皆、毎日フッ素入り歯磨き粉で歯を磨き、フッ素入うがいで仕上げ、定期的に家族総出で歯科医院でチェックとメンテナンスを受けている。
 人間だけではない。1日でも愛犬に長生きしてもらいたい妻は、毎日寝る前に愛犬の歯を磨き、動物病院に行く度に歯石チェックをしてもらっている。全てはよりよい人生のためである。自分自身だけではなく、家族や愛犬が健康で長生きするためには、歯の健康は欠かせないのだ。
 そのために何をすべきか。実は極めて単純かつ明確なのである。そして、これは自身の未来にむけた投資に他ならない。

私の歯が悪くなるまで

 私は今40代である。幼少のころ、つまり1980年代、歯に関する意識というのは、世間一般においても高くはなかったように思う。もちろん「歯を磨きましょう」と言われていたし、定期的に学校で歯の検診があった。しかし、ほとんどの子供達は、検診で当然のように虫歯がみつかり、削って埋めて、埋めた下から虫歯が広がってもう一回やり直しといった感じで、みんなの歯はどんどん削られていた。
 私自身もそうであった。同じ年代の人間で、全く虫歯がない人はあまりいないのではないだろうか。私の場合は、高校生のころには、大事な奥歯の一本が派手にやられて神経を抜くハメになった。そして大学生のとき、親知らずが虫歯になって抜いてもらいにいくと、神経を抜いた奥歯の根っこの先っぽに嚢胞ができているのが判明した。
 今でも忘れられないのだが、そのときの先生は、レントゲンをみながら「なんか顎にでかい影があるね」と告げるのみで、そのまま親知らずを抜いただけで治療終了となってしまった。レントゲンに影がありますという情報だけを受け取った私は、さすがに不安を募らせ、当時爆発的に普及し始めたインターネットで情報収集に走った。
 その結果、歯根の先にある影というのは、どうも治療した根っこの先っぽに細菌由来の膿の袋が出来ていること、これに対する治療としては再度根っこをきれいにするしかないということが判明した。これを放置して良いはずがない。なんでアイツは私を帰したのだ。さらに情報収集をかさね、この根っこの治療が得意そうな先生を探し出した。
 果たしてこの先生は、素晴らしい名医であった。まことに医師選びは重要である。

奥歯をめぐる死闘と名医との出会い

 ネットで探し出した先生に事情を説明すると、おおむね私が事前に調べた通りの内容であったが、実に丁寧に現在の状態や治療方針を説明してくれた。ただ、私の顎に出来ていた膿は相当デカいらしく、根っこの治療はかなり難航する可能性が高いとの見通しであった。根っこ自体ももろくなっており、最悪抜歯となる可能性も告げられた。
 それでも先生は、数回にわたり、かなり時間をかけてチャレンジしてくれた。しかしながら、最終的には膿のある根っこの先まで完璧にきれいにすることは困難と判断されてしまった。そうなると、いよいよ後は抜歯しか道はない。しかし、そこで先生から驚くべき提案がなされた。
 それは、歯を一旦引っこ抜いて、外側から根っこをきれいにし、顎の嚢胞も直接除去してから歯を戻すというものであった。意図的再植というらしいが、なんという力業だろう。花粉症で目が痒いときは目玉を取り出して水道で洗いたくなるが、まるでそんな感じの治療である。しかし、どうせ抜くならば、チャレンジする価値はある。驚きつつもお願いした。
 この治療は、どうやら先生もあまり経験がなかったらしく、要所要所で楽しそうに記念撮影をしながら進められた。歯に負担をかけないようゆっくり歯を抜かれ、抜歯痕に棒を突っ込まれた私は死にそうだったが、治療は大成功であった。後に嬉しそうに「雑誌に投稿したんだよ」と写真を見せてくれたほどで、先生としても会心の出来映えであったようだ。
 治療直後はぐらぐらしていた歯がだんだんしっかり定着していく様子は、治療を受けている側としても、実に興味深いものであった。途中は死にそうだったけど。
 かくして見事に奥歯の抜歯というか喪失を回避できたのだが、先生は、日頃の歯磨きはもちろん、定期的な専門的なメンテナンスの重要性も教えてくれた。先生の技術と知識にすっかり魅了されていた私は、まるで信者のように先生の言葉に従った。
 歯ブラシは安くていいのでスタンダードなものを、こまめに取替えて、丁寧に時間をかけて磨き、最後にフッ素入のペーストで仕上げ、そして定期的に専門的なメンテナンスを受けた。おかげで、それから歯のトラブルはほとんどなく、定期的に歯科医院に通うという習慣ができあがった。
 それでも、治療から5年ほど経って、その奥歯は結局抜歯してしまった。これは想定内で、先生からも長持ちしないとの説明があらかじめあった。調子が良すぎて遠慮無く固いものを噛みまくっていたのも良くなかったのだろう。根っこの分かれ目のところでパッキリと割れてしまったのだ。こうなると、さすがに観念して抜歯するしかなかった。
 抜歯にあたっては、二つの選択肢が提示された。一つはブリッジ治療である。抜歯した歯の両隣の歯を削って土台にして、歯3つ分の義歯をかぶせるのである。もう一つは入れ歯だ。もちろん、インプラント治療もあるのだが、当時はお金がなく、保険診療しか選択肢はなかった。
 正直、20代で入れ歯を入れるというのは相当に抵抗があった。新婚旅行先にも入れ歯ケースと洗浄剤を持っていかねばならぬのだ。しかし、歯を削るという治療はもう懲り懲りだった。歯を削るのは、抜歯への第一歩だ。削ればそこから虫歯になりそうだし、歯3つ分の力を歯2つで支えるわけで、土台にした歯にも悪影響がありそうだ。
 将来稼いでインプラントを入れるしかない。そう考えて、一時的に入れ歯を入れることにし、ハワイにもこっそり入れ歯ケースを持っていったのだ。
 ようやくインプラントを入れることができたのは、それから10年ほどたってからであった。稼ぐようになるまで時間を要した結果に他ならないが、顎にドリルで穴をあけるのに抵抗があったのも事実だ。
 しかし、やはり奥歯がないのは不便であり、しかも抜いたままでは顎の骨も減ってしまい、インプラント治療も出来なくなるとのことで、5年ほど前にようやく小遣いをはたいてインプラント治療を受けた。
 今のところ、実に快適である。

苦労から得た教訓

 このように私は歯に関しては、結構苦労してきた。痛い目にあった上に相当な労力とお金を費やしている。
 しかし、それは自らの行いの結果である。適当に歯を磨いていたし、歯医者というのは歯が痛くなってから行くところであった。気がつけば虫歯ができており、気がつけばどんどん酷くなっていたのである。
 このような経験を踏まえ、私は二人の子供の歯には、かなり気を使うようになった。そもそも幼い子供に対して「歯のメンテに気をつけよ」というのは無理がある。分かるわけがない。自己責任ですますわけにはいかない。今の時代、これは親の責任である。
 幼稚園までは必ず仕上げ磨きを親の手でやっていたし、フッ素入り歯磨き粉とフッ素入うがい薬を毎日使用している。そして、子供の乳歯が生えそろっていないころから歯科医院へ定期的に通うようにしている。おかげ様で、子供達の歯に虫歯は一本もない。実に羨ましい。
 ここで大事なのは、定期的に歯科医院に通うことである。上記のとおり、かつては歯医者というのは、歯が痛くなってから行くところであった。しかし、今の時代、そうではない。歯のメンテナンスに行くところである。
 正直、完璧な歯磨きというのは結構難しいと思う。一時期死ぬほど歯磨きしていた頃は、歯科医衛生士さんが驚くほど完璧に歯垢を除去できていたが、これを継続するのは相当大変だし、実際続かなかった。毎日そんな丁寧に歯を磨くのはあまり現実的ではない。もちろん丁寧に磨くに超したことはないのだが、正直、ほどほどで良いのではないか。
 それよりも大切なのは、定期的な歯科医院でのメンテナンスを受けることだ。

歯は最優先の投資先

 定期的な歯科医院での歯のメンテナンスについて、今はやりの投資という観点から考えてみよう。
 歯科医院に定期的に通うには、お金も時間もかかるのは事実である。しかし、そこから得られる効用は極めて大きい。歯の健康が身体全体の健康や寿命に影響するということは、今さら素人の私が説明するまでもあるまい。詳細は検索するかAIに聞いて欲しい。健康であって初めてお金は意味があるのだから、健康が買えるならば、そこに選択の余地はない。
 それにお金がかかるといっても、そんなに大した負担ではない。一生のメンテ費用はインプラント一本の費用に遠く及ばない。どちらかといえば手間と時間のほうが負担かもしれない。
 しかし、痛くない段階でいく歯医者は快適そのものであるし、歯がピカピカになるのは気分もよい。歯のメンテナンスに気を遣っている自分も意識が高い感じがして、なんだか素敵である。自己肯定感も上がるというものだ。慣れてくるとエステ気分で行けるようになる。
 得られる効用が大きいというのもあるが、何より確実性を強調しておきたい。健康な歯というのは、親が子供にしてあげられる投資の中でも最も確実なものである。
 たとえば子を持つ親は皆様々な投資を我が子に行うが、はっきりいってどれだけリターンがあるかは微妙である。教育投資も多くの場合には、微妙な結果が返ってくることが多い。私も親には大変申し訳ないことをしたと思っている。
 考えてみて欲しい。散々息子の塾代を払っても、第一志望への合格が叶うかは分からないのもあるが、なにより第一志望に受かっても深海魚になるかもしれないし、引きこもりになるかもしれない。勉強なんてさせなきゃ良かったという未来がないとも限らない。子の幸せのために適切な投資をすることは、実は大変難しいのである。
 しかし、歯への投資は裏切らない。歯が健康で悪いことなどあるはずがない。しかも、歯の健康を維持することは確実な再現性をもって達成することができる。
 消しゴムをいじってばかりの息子に宿題を無理やりさせることは極めて困難であるが、本人に代わって歯を無理やり磨くことは比較的容易である。しかも定期的に専門家にお任せできるのだ。是非とも勉強も専門家にお任せしたいが、外注可能なのは教える側だけだ。
 今後も定期的に歯科医院に通う限り、少なくとも子供達が虫歯になることはないだろう。そして歯の健康を維持したがために道を誤ることもないだろう。私自身も今後は歯周病の魔の手が迫ってくる年齢であるが、定期的に検査・メンテナンスを受けていれば、大丈夫だろう。歯周病は、虫歯と違って素人目にはわかりにくいので、定期的に専門家に見て貰う重要性は極めて高い。
 ここまで書けば定期的な歯科医院でのメンテナンスがいかに効率的かつ確実な投資であるかお分かりいただけたであろうか。効用は十分かつ確実、低コスト、リスクゼロである。
 歯科医院への定期的な通院となると、なかなか面倒で実行に移すのが難しい。しかし、投資と思えば、noteを読むような意識の高い皆さんは行動に移せるのではないか。NISAなどやっている場合ではない。歯医者へ行こう!

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