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心理職の「資格」が意味するもの
ひとくちに「心理職」と言っても、さまざまな種類・呼称・役割があるが、ここでは、近年話題になることの多い、スクール・カウンセラーや、悩みごとの電話相談員などに近い「(心理)カウンセラー」とほぼ同じ意味で使うことにする。
現在、心理系では唯一の国家資格である公認心理師という資格は、「試験の合格者」を意味することは間違いないが、そのことと、「実践現場で役立つ技能」をもっているかどうかは別の話である。なお、(心理)カウンセラーなど、心理系の専門職の中には、「技能・技術・技法」というコトバ(言い方)自体を嫌う人が少なくないが、カウンセリング等を「業務」として行う限り、「技能」という概念をスルーしてはならないと、私は思う。
そもそも、「技能」と称される能力は、「知識をもっているだけ」ではまったく不十分なのである。自動車の運転に例えるなら、「安全に運転できる」ためには「運転の方法を知っている」ことが必要であるが、「運転の方法を知っている」からと言って「安全に運転できる」とは限らないのと同じである。なお、本来なら、「カウンセリングに必要な技能とは何か」について、もっと詳しく説明してから論を進めるべきなのだろうが、それを始めると、話が袋小路時入る可能性が高いため、ここでは極端に単純化して、「試験と技能の関係」を「自動車の運転免許」にたとえて説明したい。
運転免許を取得するには、学科試験(道路での走行に関する法律や運転方法などが出題される)と技能試験(路上での運転技術や判断力などをチェックする実技試験)の両方に合格する必要がある。しかし、現行の公認心理師の試験では、学科試験だけしか行われていない。技能の有無は問われていないのである。もちろん、有資格者の多くは、大学や大学院等における実技実習の中で基礎的な技能を習っており、資格試験においても技能に関する「知識」の有無は判定される。
しかし、残念なことにと言うか、やむを得ないことなのかも知れないが、現在の試験では「技能」の有無は判定されない。なぜなら、人間の「こころ」の働きは非常に複雑なため、それに関わる技能を、客観的かつ公平に測定(判定)できるような方法がないからである。
したがって、心理職の資格の有無は、その心理職の能力を見極める際の、「ある程度の目安」にはなるが、最終的には利用者(クライエント・患者)自身が判断するしかない。つまり、心理職を選ぶとき、そして、その心理職との関係を継続するかどうかを判断する際には「資格に頼りすぎない」ことが重要である。具体的には、「カウンセリングを受けているうちに、自分にとって役に立つと思えることよりも、不満・不審なことの方が多いと感じるようになったら、可能な限り心理職のチェンジを検討すること」が賢明である。