【小説】牛島 零(14)
牛島零
「なんでSENを見ないんだあいつは」
昨日、下村の元父親とパパ活したときに下村を殺す計画をほのめかされた。
「明日、息子がいなくなる。その父親も。アキちゃんがまた僕に振り向いてくれるように」
「あー私難しい話苦手なの」
「君は賢いだろ」
「賢かったらこんなことしないよ」
まずい。あいつと早朝ホテルから分かれてすぐに連絡したのに、どうして既読にならないの。もう意味が分からない。馬鹿なの?
どうしよう。美咲だったら知ってるかもしれない。私は美咲に電話を掛けた。つながらないどうしてなの。既読にもならないしもう昼よ。何してるの。
携帯電話が鳴った。発信元は美咲からだ。
「ねえあんた今どこにいるの?」
「下村が・・・」
遅かったか。
「もういいわ。下村は今どこの病院?もしかしたらまだ間に合うかもしれない」
「なんで、牛島・・・」
「事情は後。情報が先」
私は美咲から病院の名前を教えてもらい、病院へ向かった。病院についたのは美咲から電話をもらってから一時間弱くらいたってからだった。
受付で下村の居場所を教えてもらい病室へ向かう。結論から言うと美咲が泣いていた。
下村の母親と美咲と寝ている下村が病室にいた。この光景を見たのは分からないが百回目である。私は彼にうそをついていた。正確に言うと今回は私と美咲の立場は逆だったが。そんなことはどうでもいい。
私が病室に入ったすぐ後に警察の男が入ってきた。
「おい!ネオ起きろよ!」
捜査する警官ではない。下村の父親だ。そういえば下村の下の名前は知らなかった。
「ねお?」
ネオだ。もしかしたら望みがあるかもしれない。そういうことか。銃の効果について知っているのはこの世界に私だけだ。犯人も知らない。
「ねえ、あなた警官でしょ!」
「お、おう。でもお嬢ちゃん誰や?ネオの友達か」
「まあそんなとこ。それよりこいつがうたれた銃は見つかってるの?」
「いや、俺にはわからん。俺は駐在さんだからな」
下村の父親は鼻を伸ばして話してくれたが、自慢することではないぞ。息子がやばい状況なのに。
「でも、俺が犯人なら証拠持って逃げるだろ。凶器が凶器だからな」
そこで病院の先生が来た。
「やあ久しぶりだね。アキちゃん」
おい、嘘だろ。なんで下村の元父親がここにいる。いや、こいつか。そうだ下村とこいつを殺す気だったんだ。忘れていた。
「先生ネオは助かるんですか」
下村の父が言う。
「まあ、再び会えますよ。あの世で」
その瞬間狭い病室に銃声がとどろいた。私は瞬間的に銃声の方向ではなく病室全体を見渡した。美咲は下村に抱き着いて、下村母は下村父を真顔で見つめて、下村は寝ている。私は冷静だった。銃は二発しか入っていないことを知っているから。もうすでに一発は下村の中である。
「あんた、左利きやろ」
撃ったのは下村の父親だった。それと同時に一丁の銃が床に落ちた。
「くそっ」
元父親は左手を負傷して病室から出ていった。
「なんで」
私は何とか言葉を絞り出した。
「あいつの左手の指のタールでわかった」
「それは知ってます。そこじゃないんですよ。なんですぐ発砲したんですか?」
下村父が右上を見ながら話しだした。
「あの人、昔こいつと結婚してたんだよ」
下村母を指さす。
「は、はあ」
私は知っていたからなんと反応していいかわからなかった。
「とはいってもネオは俺の血のつながった子供なんだよ。こいつが二股してて、金持ってるほうについたんだ。でも、結局俺のほうが好きだったみたいで再びくっついたけど」
下村父は下村母にキスをした。狂ってる。この母親がした行動と、息子が起きないのにキスするところが。
「だから、次俺の目の前に現れるときは俺を殺す時だと感じたんだ。俺が逆だったらそうするからな」
本当にただの医者だったらどうする気だったんだよ。こいつやばすぎる。
「そういえば銃が必要だったんじゃないの?」
「あ、そう」
「はい」
落ちていた銃を拾い上げてすんなりと差し出した。
「ありがとうございます。うっ」
離れない。
「なんで銃が必要なんだ?」
確かにそうだ。銃が必要な意味が普通ならない。
「たぶん信じてもらえません」
「とりあえず話してよ」
全部言おう。
「私はタイムリープしています。何回もこの状況をやり直しています。正確には意識だけが過去に飛ぶような感じです」
「んでどうするき?」
「私は後悔を持って自殺します。この銃で自殺して、何かをするために過去に意識を飛ばして過去の自分を乗っ取ります。意識を複数混在させることになることもあります」
「すまんが、銃を使う意味があるんか?大卒の警官でも理解できないんだが」
「私は戻るとき必ず銃で自殺しています」
「いやわからんて」
確かに理解に苦しむよな。牛島動きます。
「下村君にも当てはまるような出来事があったのではないかと思います」
下村母が口を出す。
「ネオが言っていた根尾っていうこのことかしら」
「そうです」
「ママ天才だよ!」
「ちょっとよくわからないんだけど」
下村母はだいたい理解したらしい。下村父はバカ。美咲は普通だ。
「だから、まだ下村ネオは生きています」
「そうか、過去に飛んで何かをやり直している最中ってことだな」
「いや、よくわかりません。私は毎回下村君よりも先に死んでいたので」
「そうか・・・」
「何百回もこんなことを繰り返してやってこなかったことがあります」
「なんだ?」
「それは・・・」
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