実家の居間で寝ていると、夜中に何やら気配がする。 すっすっすっすっすっすっすっすっ… すっすっすっすっすっすっすっすっ… 母の足音だ。 暫くして私に近づいてきて 「ちょっと!私の通帳がないねん!」 「どこに隠したの!昨日はここにあったのに!」 などと言う。 寝耳に水、とはこのことで 私は母の通帳など隠すこともないし なんで無いのかもわからない。 「通帳?知らんなぁ」 「嘘つきなさんな!なんで無くなってるの!」 「う〜ん、なんでかな。一緒に探そか〜」 電気をつけて探
母の、朝のルーティン。 おはよう→トイレ→洗顔→日めくりカレンダーをめくる →朝食&薬→今日の予定と持ち物を確認→お皿を洗う→歯磨き→着替え →花に水やり→デイサービスへ出発、という順序で大体やっている。 (デイサービスのない日は体操など) いつも次に何をしていいのかわからなくなるので、家族に何回も聞く。 逆にいえば、次に何をするか言ってあげればできるということでもある。 この流れをスムーズに済ますことができたら、精神的に落ち着いていられるようだ。 しかし気分がすぐれず一向
いつからか広告などで目にするようになった『アクティブシニア』という言葉、 どういう意味なのか私は知らない。 なんとなく、笑顔の老夫婦が仲良くウォーキングしていたり 旅先でご馳走を食べていたりする風景が目に浮かぶ。 65歳以上の人の割合が、全人口の3割に迫っているらしい。 そういわれるとたしかに 商店街、公園、駅、スーパー、図書館、ちょっと歩けばどこでも 巣鴨に行かなくても元気なシニアにたくさんお会いできる。 母も、認知症と診断される前から1日5000歩くらいは歩いているの
明け方に母から電話。 「部屋じゅうに電線が張られてるねんけど!」 私はぼんやりした頭で、また幻視がはじまった…と暗い気持ちになりつつも 「だいじょうぶやで〜。それはまぼろし」と、軽い口調で答える。 「なにがだいじょうぶやの!こんな悪い事して!」 軽さは、不要だった。逆効果だ。 横で寝ていると思われる父が否定している声も聞こえる。 でも母は誰の言葉にも聞く耳を持たない。そして、すごく本気で怒っている。 怒っている理由はおそらく 家族の誰かが電線を張ったと思っている、とか 実
ピアノを習っていたころの、子どもだった私に教えてあげたい。 いま練習してる『エリーゼのために』は、遠い未来、令和という時代になってから お母さんのために弾くことになる曲やで。 思えば小学生のころは、色んな体験をさせてもらった。 体操教室、スイミング、習字、ピアノ、茶道、山登り、キャンプ、科学教室、学習塾。 ただ残念なことに、これらのスキルは壊滅的に私の中から消えている。 勉強はできない、科学音痴、手書き文字は解読不能。 かろうじて残るものは、自然が好き、宇宙が好き、抹茶が
まったくの素人がいきなり直面することになった認知症介護の世界。 母のおかげで今までになかった視点が生まれ、日々いろんな思いが湧き出てきます。 深く考える余裕はないのですが、書き留めていきたいと思いました。 書くこと、読んでいただくことで色々と整理できたらいいなと思っています。