横のつながりをつくり、活躍の場を広げる 野村大祐(月刊トレーニング・ジャーナル2023年2月号、連載 スポーツファーマシストに聞く 第2回)


野村大祐
公認スポーツファーマシスト

連載目次
https://note.com/asano_masashi/n/nc0a490ebf840?sub_rt=share_pb



喜んでもらえることがやりがい

──先月号では、公認スポーツファーマシストの資格について伺いました。スポーツファーマシストとして活動されての、やりがいを教えてください。

 やはりアスリート本人と直接つながってサポートできることが、いちばんのやりがいだと言えます。私たち薬剤師も普段、一般のスポーツファンと同じようにテレビで応援をしたり、自分がスポーツしたりしています。アスリートはテレビ越しに応援する存在、感動させてくれる存在です。それがスポーツファーマシストになると、テレビで見ていたアスリートから突然連絡が来るわけです。私はパラリンピック代表選手や、オリンピック代表選手から直接メールで問い合わせをいただいたこともあります。「この選手から相談してもらえるとは」と光栄に感じるのと同時に大きな責任を感じます。責任のある仕事というのはプレッシャーでもありますが、その分大きなやりがいを感じることもできます。これは普通はなかなか叶わないことでしょう。薬剤師とスポーツファーマシストという専門の資格を持っているからこそ、そういった選手たちを直接サポートできるというのは、自分自身のモチベーションにもつながります。

 サポートしている國學院大学陸上競技部の学生も、箱根駅伝で注目されている選手たちです。将来オリンピックを目指すようなレベルの有望な選手たちに、学生時代から関われるのはスポーツファーマシスト冥利に尽きます。もちろん相談には責任を持って的確に対応していますが、一方でスポーツ好きなのでわくわくする瞬間でもあります。

──有資格者がサポートしてくれれば選手も心強いでしょうし、スタッフにも喜ばれるのではないでしょうか?

 スポーツファーマシストは、選手だけでなくサポートスタッフに対してアンチ・ドーピング講座を行うこともあります。理学療法士やアスレティックトレーナーなど専門の資格を持っている方は、やはり志が高いです。一般の薬剤師でもなかなか理解していないような難しいことでも、伝えるとすごく喜ばれます。たとえば痛み止め1つとっても成分によっていろいろな効き方があります。強さ、作用時間、副作用。そういったところを専門的に詳しく説明すると難しすぎたかなと思えることでも非常に喜んでもらえます。それを見ていると私自身のやりがいにもつながります。

 薬剤師は基本的に、患者さんをはじめ相手に喜んでもらうことを嬉しく感じます。健康になってもらうことがやりがいにつながる職種です。それが根底にありますので、スポーツファーマシストとしての活動は、自分自身の持っている知識を伝えて周囲の人に喜んでもらえるのがいいところで、やりがいを感じます。

認知がないという課題

──次に、活動の中で感じた課題はありますか?

 率直に言えば、たくさんあります。まず、まだまだ認知が足りません。トップアスリートでさえ、スポーツファーマシストの存在を知らない人もいます。これは大きな課題です。それに伴って、活動の場が少ないという課題もあります。もっと広げていかないといけないと感じています。

 スポーツファーマシストの存在を知ってさえいれば、防げたドーピング違反もあります。国内では違反自体少ないですが、スポーツファーマシストが関わっていれば防げたことがほとんどです。相談さえしてくれれば、と思わざるを得ません。そういった意味でも、認知を広げていく活動が必要です。

──知られていない原因は何だと思いますか?

ここから先は

2,193字

¥ 300

期間限定!Amazon Payで支払うと抽選で
Amazonギフトカード5,000円分が当たる

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?