公認資格と相談方法 野村大祐(月刊トレーニング・ジャーナル2023年1月号、連載 スポーツファーマシストに聞く 第1回)
野村大祐
公認スポーツファーマシスト
連載目次
https://note.com/asano_masashi/n/nc0a490ebf840?sub_rt=share_pb
スポーツファーマシストとしてさまざまな相談を受ける
──まず、野村さんの現在の活動や、これまでの取り組みについて教えてください。
現在、調剤薬局に勤務しながらスポーツファーマシストとして活動しています。活動は主にLINEを使ったアスリートからのアンチ・ドーピング相談の対応です。またルールが変わった時などにはこちらから情報提供をしています。
競技団体としては、國學院大学陸上競技部のサポートをさせていただいています。それから、実業団女子駅伝チームのマネージャーさんからの相談も受けています。このチームではふだん使う薬やアンチ・ドーピングについて、選手からマネージャーに問い合わせがいくことが多くあります。といっても、マネージャーさんは薬剤師ではなく一般の方ですので、さらに私に相談がきて、答えるという形です。
また、パラアーチェリーの東京五輪代表選手、パラ陸上競技選手など、個人からの相談にもLINEを介して対応しています。過去には、なでしこリーグの大和シルフィードのサポートも行っていました。
さらに、一般社団法人ドーピング0会のメンバーでもあり、他職種とも連携して活動しています。
どんな資格か
──さまざまなチーム・選手から相談を受けるのですね。スポーツファーマシストとは、どのような存在なのでしょうか。
スポーツファーマシストは、一言で言うと、最新のアンチ・ドーピング規則の知識を持った専門薬剤師です。日本アンチドーピング機構(JADA)に認定されます。「スポーツ」とつくのは、どんな役割を担うかを表しています。アンチ・ドーピング規則は全世界のスポーツに共通するルールのため、「スポーツ」がつきます。スポーツにおける薬の使用について選手やその家族、サポートスタッフへアドバイスをすることで、スポーツに安心して取り組むことができるお手伝いをしています。
──どうしたら資格を取得できるのですか?
年に1度、認定試験があります。薬剤師であれば誰でも申し込めます。
ただし、1年間で認定されるスポーツファーマシストの人数は決まっています。近年、応募人数に対して申し込み人数が増えています。東京オリンピック2020に向けて人気が高まったのでしょう。応募多数の場合は抽選で受けられるかどうか決まります。
まず受講資格を得て、基礎講習会と実務講習の2種類の講習会を受講したあと試験を受け、認定されます。基本的にしっかり講義を受ければ取得できます。
──もともと薬剤師として仕事をされていた野村さんにとって、講義の内容はどのように感じましたか。
知らないことがたくさんあり、薬剤師として勉強になると感じました。もちろん薬学に関する内容ですが、アンチ・ドーピングについての知識が中心で、普段知る機会があまりありません。私は講義を受け始めた段階では一般の人とそう変わらない知識だったと思います。たとえば筋肉増強剤のようなもので競技力を高める、のがドーピングだと思っていましたが、それだけでなく、たとえば筋肉増強剤の摂取を隠す利尿剤も違反の対象です。また、血液中の酸素を供給する能力を高めたり、呼吸を楽にする気管支拡張剤なども違反の対象になるのをはじめて知りました。
──資格を取ると、どんな活動が可能になりますか。
薬の相談自体は、実は資格がなくても薬剤師なら受けられます。ではなぜこの資格があるかというと、アンチ・ドーピングというのはルールがあります。それを知っていないと正確に答えることができません。この資格を持つことにより、アスリートからの相談に責任を持って回答できる、という意義が1つあります。違反になってしまうと選手生命が断たれることになりかねませんので、回答の責任は重いです。きちんとした知識を持った専門の薬剤師が対応すれば、選手も安心だろうと思います。
──現在、何人くらいいらっしゃるのでしょうか。
22年4月現在、全国に12345人の公認資格保持者がいます。ただ、実際に活動できている人は非常に少ないです。後ほど改めて触れますが、そこは課題の1つと言えます。
公認スポーツファーマシストに相談したいとき
──どうしたら公認スポーツファーマシストに相談できるのか、アクセス方法を教えてください。
まず、日本アンチドーピング機構が、スポーツファーマシスト検索サイトをつくっていて、登録している全国のスポーツファーマシストを検索できます。また、各県に薬剤師会があり、そのほとんどにスポーツファーマシストにつながるホットラインがありますので、そこに問い合わせればつなげてくれます。もしくは、競技団体にメディカルスタッフとしてスポーツファーマシストが所属している場合もあります。
もちろん一般の薬局にも資格を持った薬剤師がいることがありますし、いなかったとしても探してくれると思います。すぐ相談したいのであれば、かかりつけの薬局に問い合わせるのもいいと思います。
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