アスリートやスタッフの意識を促す 野村大祐(月刊トレーニング・ジャーナル2023年3月号、連載 スポーツファーマシストに聞く 第3回)


野村大祐
公認スポーツファーマシスト

連載目次
https://note.com/asano_masashi/n/nc0a490ebf840?sub_rt=share_pb

意図しないドーピングへの対応

──うっかりドーピングは、どのようなケースが多いですか? また、どうすれば防げるでしょうか。

 まず、今は「うっかりドーピング」という言葉は使用しないようにしていて「意図しないドーピング」と表すことが一般的になっています。というのも「うっかり」という言葉には軽い行動のイメージが強くありますが、実際にドーピング違反となってしまうと自分では意図していなかったとしても選手自身に責任が問われ制裁が与えられます。場合によっては選手生命を失ってしまいかねない行動となってしまいます。つまり「うっかり」という軽い言葉では済まされないため現在は表現として使われなくなりました。

 意図しないドーピングは、頻繁にあるわけではありませんが日本で起きている過去の違反のほとんどはこのような事例です。たとえば海外からインターネットで購入したサプリメントをしっかりと調べずに摂取してしまった結果、そのサプリメントに禁止物質が含まれていて、違反を起こしてしまうということが起きました。そのような事例も起きているためサプリメントの相談を受けることは多いです。

──サプリメントの他、身近にある薬で、意図しないドーピングに気をつけたほうがいいものはありますか?

 OTC医薬品(Over The Counter:医師による処方箋を必要とせずに購入できる医薬品)でいうと、いわゆる風邪薬(総合感冒薬)について「これは飲んでも大丈夫でしょうか」との問い合わせがあります。OTC医薬品の風邪薬はさまざまな成分が配合されており、その中には咳止めの効能のあるエフェドリンが含まれるものが多くあります。このエフェドリンは禁止物質になっていますので、風邪薬の服用にはドーピングリスクがあります。

 また痛み止めについての問い合わせも選手からあります。スポーツ活動では、ケガや過度の練習などにより痛みを伴うことがどうしてもあります。一般的な痛み止めは禁止物質に含まれないものが多いのですが、だからと言って服用する頻度が多くなると胃腸障害などを起こすことでパフォーマンスに悪い影響を与えてしまう可能性もあります。そのため服用は慎重にする必要も出てきます。

 また市販で売られているのど飴の中の成分に禁止物質が含まれている場合もあります。漢方薬や生薬配合のものもすべての成分を正確に把握することができないためお勧めはできません。

 このように意図しないドーピングのリスクは私たちの生活の身近なところに多く存在しているので注意が必要になってきます。

アンチ・ドーピング講座を通して

──寄せられる相談に回答するにとどまらず、アンチ・ドーピング講座も行っているとのことですが、どんなきっかけで始めたのですか?

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