大学陸上競技部での取り組み 野村大祐(月刊トレーニング・ジャーナル2023年5月号、連載 スポーツファーマシストに聞く 第4回)
野村大祐
公認スポーツファーマシスト
連載目次
https://note.com/asano_masashi/n/nc0a490ebf840?sub_rt=share_pb
チームから求められること
──國學院大學陸上競技部をサポートされているとのことで、詳しく伺わせてください。まず、どんな経緯でサポートするようになったのですか? チームはスポーツファーマシストである野村さんにどんなことを求めていますか?
まず前田康弘監督には指揮官も選手も常にアップデートが必要という考えがあります。そのアップデートの知識の中にアンチ・ドーピングに関わる知識もありました。ただそれまでは専門家による講座を実施したことがなかったとのことでスポーツファーマシストを探していたところ、繋がりのある管理栄養士から私に声がかかりご紹介を頂きました。監督はアンチ・ドーピングに関わる知識を選手にも知ってほしいとのことでしたので、講座を始め、5年ほどになります。
──アンチ・ドーピング講座はどのような内容なのですか?
はじめに監督に言われたのは、そもそもドーピングとは? の基本から教えてほしいということでした。箱根駅伝でもドーピング検査があります。ドーピング検査を行うのはオリンピックに出るようなアスリートだけと思われがちですが、プロではないアマチュアのアスリートや学生も検査を受けることがあるのです。そういうときに困らないように知識を教えてほしいとのことでした。
よって講座では、そもそもドーピングとは何か、国内での具体的な事例、実際のドーピング検査の流れなどを取り上げます。誰に声を掛けられてどのように検査するか、見たことも聞いたこともない学生がほとんどです。
──選手の不安感はどういったところにあるのでしょうか。
検査を行うことは決まっていますので、検査をすることに対しての不安はありません。ただ検査自体を見たことがない学生は、トイレに検査員が付き添い、排尿しているところを目視されるというのをイラストで示すと、びっくりしています。検査員とはいえ知らない人が横に立った状態で排尿しないといけないというのは、知らなければ確かに驚きますよね。そういうことも一度流れを見ておくと解消されると思います。
──薬を飲んだ後に緊急コールが来ることはありますか?
飲んでしまったのですが大丈夫ですか? という相談は今のところありません。飲む前と、処方された後に相談があります。薬局で処方された薬の情報シートが渡されますので、それを写真に撮ってLINEに送ってくれます。飲む前に相談してくれるのはありがたいですし、安心です。飲んだ後だと内容によっては対応も難しくなります。
大学の監督・コーチが協力的で、講座で選手に渡す資料に私のLINE相談アカウントのQRコードを載せているので、その場で登録するよう言ってくれます。このようにすぐに相談できる環境づくりをしてほしいというのも監督から求められていることです。
アンチ・ドーピング講座について
──5年ほどチームに関わって、何か変化を感じますか。
最初は4学年全体に講座を行っていたのですが、今は形態が変わり、新1年生向けの講座としてやらせていただいています。基本的な内容は変わりません。
ただ、ここ最近で驚いたのは、講座で毎回「ドーピング検査を経験したことがある人はいますか?」と聞いていて、はじめは受けたことのない学生ばかりだったのですが、一昨年あたりから検査を受けたことのある学生が2・3人います。高校生でも出場する大会によっては検査をする大会があります。私は検査を受けたことはありませんので、私より詳しい学生もいるという状況です。
──サポートする中で印象的だったことはありますか?
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