女性アスリートのサポート① ──男女の違い、ピルの活用 野村大祐(月刊トレーニング・ジャーナル2024年1月号、連載 スポーツファーマシストに聞く 第11回)
野村大祐
公認スポーツファーマシスト
連載目次
https://note.com/asano_masashi/n/nc0a490ebf840?sub_rt=share_pb
男女の違いを考慮する
──野村さんは女子チームのサポートもされていましたが、女性をサポートする際、気を付ける点があれば教えてください。
女性アスリートへの対応は、アスリートサポートの中でも特別な配慮や知識が必要とされる場面があります。
私が実際に女性アスリートをサポートした経験としては、女子サッカーチームの大和シルフィードにメディカルスタッフとして参加したことがあります。ただ、私以外にも女性のスポーツファーマシストが2名おり、女性が対応したほうがより相談しやすいだろうということで、その2名が主に対応をしておりました。そのため、選手に直接アドバイスをする機会はあまりありませんでしたが、今回はその中での経験と一般的な対応に基づいてお話できればと思います。
女性アスリートのサポートにおいては、男性との違いを考慮する必要があります。まず1つは身体的特徴の違いですね。筋肉量や身長・体重が違うため、コンタクトスポーツでは男性と比較してケガをしやすいともいわれています。もう1つは月経があるということです。月経管理はパフォーマンスコントロールの中でも影響が出やすく重要なポイントです。女性特有の現象であり、関連の相談は多くはなくとも必ずありますので、特別な知識が必要です。
──ケガしやすいということは、痛み止めをよく使うということでしょうか。
男性に比べると女性はケガの頻度が多い傾向にあるといわれています。実業団女子駅伝チームのサポートにおいては、痛み止めや湿布の相談は比較的多くあります。
ピルを活用した月経コントロール
──月経に関しては、試合と月経が重なって痛みなどでパフォーマンスを発揮できないことがないよう、低容量ピルの使用を検討する選手が多いですか?
実際にあった相談としては、女子ゴルファーのトレーナーの方からありました。大会期間中に月経周期が重なる可能性があるため、月経をずらす目的で低容量ピルを服用しようと思うがドーピングになるか? とのことでした。その選手はピルという選択肢を認識していましたので、アンチ・ドーピングの規則上は問題ないと回答した上で、服用に際しての注意点、副作用についてのアドバイスも行いました。
──月経に関する悩みがあるけれど、ピルが選択肢に入っていない選手もいるということですか?
そうです。そこが大きな問題と言えます。ピルは女性ホルモンを補うものなので、いわゆるホルモン剤とのイメージがあってか、そもそもドーピングに引っ掛かるのではないか? という認識の選手もいます。たとえばドーピングでよく聞かれるステロイドもホルモン剤の一種なので、そういった認識があるようです。実際のところピルはドーピングリスクはまったくありませんので、選択肢の1つとして認識してもらうことが大事なポイントになると思います。
──ちなみに副作用や服用に際しての注意点はどんなものがありますか?
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