ぶっ刺さったままの言葉

昔々小生の小学生の時分
同じクラスのマコちゃんの家にしばしば泊まりに行っていた

大雪の中自転車でゲームセンターに行き
帰りに立体駐車場の鉄の坂がめちゃくちゃ滑ることに気がついた僕たちは
自転車に乗ったまま猛スピードで坂を下るという
大脳に異常をきたした遊びに興じていた

するとブレーキもハンドルも効かない自転車で
僕は顔面から転げ落ちた

その時その場所から一番近かったのがマコちゃんの家だった
顎から流血しながらマコちゃんのお母さんに手当てをしてもらった

「今日はもう遅いから泊まっていき」
「お腹すいたやろ?ラーメンでも食べな」

その日から僕はことあるごとにマコちゃんの家に泊まりに行くのだった

お母さんは京都の方だった
長野人の僕からすると西の独特のイントネーションが新鮮で
要所で笑いを挟んでくるから話していると楽しかった

そんなマコちゃんママの言葉で
今も僕の胸にぶっ刺さったままの言葉を紹介したい

ある日のことマコちゃんとお母さんと僕で映画を見に行った
マコちゃんのお母さんの軽自動車で

あまり運転は得意ではなかったのかもしれない
やけにノロノロ運転だったように思う
すると後ろの車にクラクションを鳴らされた

その時
マコちゃんママは表情ひとつ変えずに小学生の僕たちに言った

「プーと鳴らされても 行ったもんの勝ちや」


そんなマコちゃんママの訃報が
実家の母から知らされたのは少し前のこと

成人式でちらっと喋ってからマコちゃんとは会っていないし
マコちゃんはあんまり同窓会とかに来るタイプでもないから
何があったのかはわからないけれど

あの言葉を僕はきっと忘れない

たとえクラクションを鳴らされても
戸惑うことなく歩みを進めよう


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