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ミュージカル HIU版 クリスマスキャロル ドキュメント 第十六話「洽覧」

たっちゃんが演ずるのはロバート。スクルージの甥っ子だ。
青年スクルージの会社にロバートがやって来るシーン。二人が最初に演じるこの場面の稽古では、王子からの指摘により、台本には書かれていない彼らの関係性を深読みすることから始まったと言って良い。

ロバートはスクルージをどう想っているのか。
面倒な人物ながら、親戚だからと言って仕方が無く訪れて来ているのか。財は成したが、家庭も育めていない叔父を憐れんでいる為に、疎んじられても会わずにはいられないのか。

いや待て。ロバートは、母を亡くしてから、唯一の親族であるスクルージからあらゆる方面からの援助を得ていた事は想像に難くない。その恩義を感じていることこそが背景なのではないのか。

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翻って、スクルージにとってはどうだろうか。
毎年クリスマスの時期になると無駄な誘いを掛けて来る鬱陶しいだけの相手。それは彼にとって真意なのだろうか。

何と言っても、最愛の妹が残したたった一人の血縁なのだ。表面上は冷たくあしらってはしまうものの、その実は常に気掛かりをもたらされる稀有な存在なのではないか。
ジャニスもケイトも失ってしまった現在、愛情を注げる唯一の存在がロバートなのではないのか。
これらを想い浮かべ、役柄に刷り込むことで、単なる浮ついた台詞のやり取りではない芝居となっていき、互いの掛け合いもしっくりとしていくのだ。

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ネタバレをすると、このシーンで青年スクルージである俺は、マッキー演じるマッケンジーが語りかけて来ているにも拘らず、帰っていくロバートをいつまでもしつこく見送っている。

とっくに舞台の袖に去って行ってしまっていても、姿が見えなくなる迄目が追ってしまう。その様に演じた。
それは演出上の指示では無かった。
実のところはスクルージは甥が気になって仕方が無いのだ、と言う設定を勝手に仕込んでいたのだ。
(続く)

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