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ミュージカル HIU版 クリスマスキャロル ドキュメント 第五話「進発」

稽古が始まる迄の間、他に俺がやった事と言えば台本の読み込みだ。
錆だらけの脳髄に台本を叩き込むのだ。

幾ら素人だらけとはいえ、ホリエモン万博のメインステージで演じるのだ。学芸会レベルのモノにする訳にはいかない。
メインの役を担う者が、或る程度皆んなを引っ張る存在にならなくてはならないだろうと言う気概が有った。

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俺は、日頃文庫本を持ち歩くタイプだったのだが、11月からはスマホ片手に移動の時間を使って台本を読み込むことにした。
二〜三回程度読んだ後は、もうスマホは閉じて諳んじる様に努めた。

2010年版のDVDも購入し、二度映像を観ていたので、情景を想い描きながら出来たのが幸いしたのかも知れない。案じていたよりは台詞の覚えはすんなりと進んだ様に思う。

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御本家の稽古も中間地点になっていた11月28日、ようやく我々の稽古がスタートした。じっと我慢の時は終わったのだ。

まず王子が行ったのは、やはりあだ名付け、そして好きな食べ物は何?
そう。安心・安全にバカになれる空間への入り口だ。

そして、「恥じらいの取っ払い方」や、「頭でのイメージと実際の誤差を認識する」などの芝居論に関する王子からのレクチャーを経て、腹の動きを捉えやすくする様に体を横にして行う腹式呼吸、大きな声を出す為に前方に目標を定めての発声練習を学ぶ。

初回では、腹式呼吸で強い声を出す方法として、ペアを組んで相互に「かめはめ波ッ!!」を放ち合った。

なお、稽古にやって来る面子が毎回変わる為、稽古期間中では後半に至る迄、あだ名付け、腹式呼吸、発声練習は都度繰り返された。
初めて参加する人々は、呼吸や発声など意識した事などこれ迄無かったと、決まって驚きの声を上げるのだ。

それから台本の読み合わせ。
適当にその場で役を振り分け、座り込んで皆で台本を追う。
これもそれぞれ十分に楽しんでいる。

なるほど。確かにこんな経験はやりたくてもなかなか出来るものではない。
当然ながらまだまだ殆どの者が棒読みに近い。だが、まずは楽しむ事が肝心なのだ。そしてそこからハマっていく。

エンタメに於いて苦しい想いなどする必要は微塵も無い。
飽くまで楽しくライトな気分で舞台を成立させることを目標に定めたいと思い至った。
(続く)

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