ミュージカル HIU版 クリスマスキャロル ドキュメント 第二話「邂逅」
程なく、取り敢えずやりたい人で集まってみるかとHIUのエンタメグループにイベントが立ち、11月2日に新橋のレンタルルームに6名程が集合。
そこで演劇王子みうらさん(三浦 佑介)と、後のパティ役こと粒ちゃん(粒見 桃加)と遭遇した。
王子は、このプロジェクトのリーダーだ。自ら『あサルとピストル(1)』と言う劇団も主宰し、作・演出・出演を行なっていたし、依頼を受ければ舞台の演出のみを請け負うこともある。また、役者志望の人々の指導などもしている、元から演劇界の人間なのだ。
演劇のプロに指導をして貰えるとは、それだけで大分心強い。
一方の粒ちゃんは、先月北海道から上京したばかりで、HIUへの参加も同様だった。このイベントにも、やってみたいと思ったから参加したと彼女は言った。芝居の経験など持ち合わせていない、若くて素直そうで、愛嬌のある可愛らしい女の子だった。
思い付いたら、まず手を上げる。それがHIUのデフォルトなのだ。
イベントの内容は、軽い顔合わせと、王子の演劇論を中心とした、ややワークショップ的なものではあったが、あだ名を付けて呼び合うことによって、普段とは別の者となる。安心・安全にバカになれる場に入り込める。と言うのには得心が行った。
因みに、これ迄真っ当なあだ名らしきものが無かった俺は、あさちゃんと名乗った。
安直だ。
2時間程のイベントでは、2010年版のクリスマスキャロルの台本を用いた読み合わせも僅かにではあったが行ない、兎も角、素人演劇活動の助走への第一歩を踏んだ気はした。
さて、そこからが問題だ。
自ら劇団も抱える王子はなかなかに忙しいらしい。
その日以降は11月28日迄スケジュールを割けず、稽古は出来ないと言う。
この一ヶ月間の空隙はちょっとヤバイ。
ただ、その間何もしていなかった訳でもなく、HIUに於ける定例会や関東支部の新メンバー歓迎会などでの王子のプレゼン&勧誘の効果で、参加表明も幾つか有ったのだが、却って手放しには喜べない。
プロジェクトのスレッドにやって来たのは良いが、何も起こらない。何も決まらないのだ。
折角参加の意思を持って訪れてくれたとしても、これでは熱も覚めるというものだ。
いかん。モヤってる。
キャストの数さえ揃えば、たとえ稽古期間が短くとも焦る必要は無いとは正直思っていた。
しかし、これではいかにも間が悪過ぎる。
そうは思ってもいながら、その頃の俺は唯待っていた。リーダー達の呼び掛けや動きを待つだけでいたのだ。
俺にとっての転機となった事が起きたのはそんな時だった。
(続く)
(1)劇団「あサルとピストル」ウェブサイトはこちら。
https://sukerokusukeroku0.wixsite.com/sarutopisutoru
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?