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ご近所リアル物語
我が家が所属しているご近所さん会のwhat’s upグループ(LINEグループみたいなもの)に、ピリリとした空気が一瞬流れたという。
「紺色の鳥が最近、ここら辺をうろついているけど、誰かのお家に住み着いてない?あれは害鳥よ!見かけたら速攻、水をかけたりして追い払ってね!!」
そのメッセージにどきりとしたのは、例の紺色の鳥が我が家の庭に来るたびに、
「うちの新しいペットかな!」とワクワクして窓際から庭を覗き込んでいた9,346 kmの海を超えてこの地に渡ってきた我々である。
紺色の鳥は、プケコという鳥で赤い嘴に青い羽をもち、長い足が特徴的だ。「跳べない鳥」とも言われているらしく、ひょこひょこと長い足で優雅に(?)歩く様子は到底害鳥とは想像し得ない。
子どもたちと、この鳥の名前を「プケ子」と名付けて、今度他のお友達を連れてきたら「プケ夫」にしようか、なんてわいわいと盛り上がっていた最中。
ご近所さん会の頭取からのWhat’s up グループでの厳重注意に対して、我が家はしんみりした。
つい先日まで「ペットかなー」と目を細めていた夫は、プケコが来るなり、最近購入したばかりの大型プラスチックバケツに思い切り水を注ぎ入れ、そろりそろりと鳥に近づいていく。
そうしてご近所さん会ヘッドの言いつけをしっかりと守り、夫は紺色の鳥目掛けて水をバシャリとかけて退治した。それはそれは、ご近所さん会への従順さを感じる勇ましい姿であった。
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ご近所さんたちが所属するWhat’s upグループは、普段はほんわかしたやり取りがなされている。というのは我が家代表としてそのグループに参加してくれている夫から教えてもらっていることだけど。
例えば結構、ネコに関するネタが多いらしく、
「うちのネコの口に合わなかったキャットフード、誰かのお家で試してみない?」
という投稿があったと思えば、
「ずっと迷子になっていた我が家の猫が1年ぶりに家に戻ってきた!」
という感動投稿もあるらしい。
ニュージーランドの郊外におけるご近所界隈で成されるご近所ネタというのはこんな感じで、ゆったりと長閑な国を象徴していると言えるかもしれない。これがニューヨークのマンハッタンでのご近所さん会だったら・・・と考えてもそもそも個人情報保護の観点からそんなグループは存在すらしないんじゃないかと思う。
そんな平和なご近所さん界隈も、たまにちょっと、スケールが違う話が展開される。
例えば、ある日、
「我が家と他の家が交換されることになったの。わたしたちの「家」だけ、明日お引っ越しするからねー」
という投稿がさらりとされた。
その話を教えてくれる夫も聞いている方の私も、頭の中にはたくさんのハテナでいっぱいになる。
家と家が交換される??
家が車に引っ張られて他の場所に移動されて、何事もなかったように他の場所にすぽっとおさまるの??
耐震とか大丈夫ですか?!?!
どうやって家を持ち上げたり、移動させらり、え、もう一体何が起きてるの・・・
と聞きなれない話に、またもや自分たちが外国人であることを思い出された。
私が40年生きてきて持っていた引越しの概念を根底から覆すようなことが、半径数十メートルの世界で起きている。
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ちなみにご近所さん会に救われたと思う事件が最近あった。
ある日、息子がいつものように学校に向かおうと家を出ようとしたら息子のスクールシューズが見当たらない!
息子はいつも玄関の外に靴を脱ぎっぱなしにしていたのだけど、その前の晩も同じように玄関の前にポンと置いたままだったのだ。
あるはずの場所に全く見当たらず、記憶違いだったりしないかと家中を探しまわっても見つからない。
おかしいなー不思議だなーとモヤモヤがずっと残ったまま、とりあえず息子にはサイズが合わないシューズを履いていってもらった。
夫は息子を送りにいき帰宅するなり、パソコンに向かって何か真剣にパチパチとやっている。
何かと思えばニュージーランドの警察への窃盗被害報告である。私なんかは息子のスクールシューズがなんのブランドで何センチで何の種類だったか全く覚えていないのだが、しっかりとそういうことを記憶するスペースが脳にある夫が頼もしく見えた瞬間だった。
そうして減価償却されて無価値になっていてもおかしくないぼろぼろのスクールシューズが盗まれたという報告をするなり、今度は夫がチャキチャキとご近所さん会に事件報告をするではないか。
たかがぼろぼろのスクールシューズとはいえ不審な出来事があったのだから、ご近所さんも念のため知っておくべきだと。
夫の立派な隣人力あふれる投稿に対して、すぐに他のご近所さんから写真つきでコメントが戻ってきた。
うちの防犯カメラにすごい怪しい人が写ってる。ほらこの人。
きっとこの人が犯人だよ!
まさか犯人の写真が手に入るとは想像もしなかった。
ご近所さん会パワーすごし。
結局、スクールシューズは戻ってこなかったけど、他の窃盗事件等も相次ぎ、数日後には警察がその犯人グループを検挙した。
このスピード感に結構びっくりしたのだけど、この検挙の裏にはたくさんのご近所さんネットワーク情報が何かしらの貢献したのかもしれないと想像している。
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日本にいる時、特に田舎暮らしをしていた時には、「ご近所」という響きにアレルギーを持っていた。まあ日本の地方って色々とありますからね・・・
こっちに来てから、適度な距離感で、What’s upグループ中心に交わされているご近所さん情報には、間違いなく我が家の海外暮らしをより豊かで立体的なものとしてくれている、気がする。
そういえば私たちが日本にいた時に、オンライン内見をしたニュージーランドの家の一つが、実はドラッグディーラーが暮らしていた家で、隣人の皆んなで一丸となってそのディーラーを警察につき渡したのよ!と、教えてくれたのもご近所グループの頭取さんだった。
内見時に、その家の窓がたくさん割れていたことや、カーテンがビリビリに破れていたことに若干の疑問を感じていたのだが、こっちに来てようやくスッキリした。
持つべきものはやはりご近所さん会ネットワークですな、というお話し。
最近は、我が家の庭に紺色の鳥は断じて来ておりません。
はい!
【海外で学ぶ!】両親に連れられてニュージーランドにやってきた子どもたち。自分たちはなんでここにいるの?
そんな風に思っているかもしれない子どもたちですが、ここで色々な体験ができてそこからたくさんの学びにつながっていることを願っています🙏
私たちにとって、毎日異文化で、「外国人」として暮らすことそのものが、学びになっていると思いますが(最近、子どもたちの現地化はすごいものの・・・)、今回はちょっと特別な学びの機会を・・・というか、ただみんなで楽しんでいるだけかも!https://youtu.be/NzWCBMXJQP4
👀他にもいくつか動画アップしています!👀
「海辺で過ごす週末」「海外のお誕生日会事情」