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そのあたりの距離感

「オレは、今日、Official髭男dismのUniverseが聴きたい」
息子が、冬休みのホリデイスクールに向かう車の中で、BGMリクエストをしてきた朝。
今、ニュージーランドの小学校は2週間の冬休みに入っている。

休みのたびに、息子はせっせとホリデイスクールに通う。これは通常の小学校の時間、つまり朝の9:00くらいから午後3:00くらいまで、預かってくれるプログラムで、多様な民間業者が提供している。サッカーレッスン、体操レッスンから、STEM教育的なものまで様々なプログラムがある。
そしてこのホリデイプログラムは、我が家においては毎シーズンの「風物詩」になりつつある。
共働きの私たち夫婦にとって、もしも子どもが2週間家の中でいることになれば、YouTube漬けになってしまうことを意味している。
2週間もの間、ひたすらマイクラの実況中継やらヒカキンの動画をみ続けることが、彼の貴重な人生にとって良いとはどうしても思えない。かといって、ホリディのたびに私が仕事のお休みをとるほど、余裕はない。
最近では、お友達の中で預かってくれるよーと言ってくれる人もいるものの、自分たちにとってやっぱり一番気兼ねないのはホリデイスクールだ。

あんなに英語ができない、友達ができない・・・と半泣き(時に本泣き)になってホリデイスクールに通っていたのはもはや過去のこと。
今では足取り軽くプログラムに向かい、毎回帰ってくるたびに「今日も新しい友達ができた!」「今日は一番楽しかった!」と満面の笑顔で報告してくれるようになった。
なんとも心強い限り。

そんなホリデイスクール三昧の毎日が折り返し地点を経過した今日。
カーステレオからUniverseが流れ出る。

未来はこうとか 理想はこうとか
心に土足で来た侵略者は
正義だとか 君のためだとか
銃を片手に身勝手な愛を叫んだ

明るいポップな音楽のトーンとは裏腹に、ガツンと思いを込めた歌詞が流れてくる。
深いことを考えずに、ふんふんと息子が歌詞をそれっぽく歌っていたら、いつの間にか会場に着いた。

今回のホリデイスクールで、彼は少し今までと違う体験をしているように見える。
ある日、スクールから帰ってくると、息子は白い用紙の真ん中に大きな赤い丸の絵をみせてくれた。
先生と描いたんだーと嬉しそうに見せてくれるその絵は、日の丸の国旗だ。
これとか、あれとかも描いた。と次から次へと見せてくれる絵の中には、ドラゴンの翼に日本の日の丸が描かれていたり、先生が書いてくれたという息子の絵には、帽子のところに日の丸が書いてある。
どうやら、スクールの先生の一人が日本が好きな模様。

今までのスクールでは息子が日本人だとか、日本語が話すとかいうことを、良い意味で気にしない先生たちばかりだった。
英語を頑張って話そうとする一人の男の子。
毎日とにかく送り込まれる中で、頑張っている一人の男の子。
それ以上でもそれ以下でもないという感じで、先生たちは他の子どもたちと同じように息子に接していたようだった。

しかし、今回のスクールでは、息子が日本人だということを気にしてくれて、それを好意的に受け止めてくれる先生がいるようなのだ。
今までは、「オレが日本人だってわからないようにしてほしい」と、日本人らしさはできるだけ隠して、周りにとけこもうとしてきた息子にとって、かなりびっくりする出来事みたいだ。
そして、先生が息子の日本というアイデンティティを強調してくれる中で、今まで蓋をしていた感情が息子の中でちょろっと溢れてきているようだ。

Universeを聴きおわり、プログラム会場に向かおうと車のドアを開けた瞬間に、息子が私にいってきた。
「先生に、オレが栃木にいたって教えてあげて」
と。
いや、なんでよ。どうせ、先生は栃木とか知らないと思うよ。
そう答える私に、息子は、えー教えてあげてよ。という。
自分で言えばいいじゃん、という私には、ママが言って。の一点張り。

結局、私は栃木話はせずに、普通に送り届けたのだが、その日本好きの先生は息子と私を見つけるなり、
「コンニチワー!!ゲンキデスカー?!」と元気に声をかけてくれて、私もたじたじになってしまった。
ニュージーランドでこんなふうに日本語を話しかけられるのには全く慣れていない。
横にいる息子を見てみると、特に返事はしていないものの、にこにこしていた。

日本の国旗を描くということ。
日本人だということを意識するということ。

息子は今ホリデイスクールで、少し面白い体験をしているのかもしれない。

先日、韓国人のママ友と話してた時のこと。旦那さんはイギリス人で、いわゆる国際結婚カップルで、ニュージーランドで暮らしてもうかなり長くなる。彼女は四人のお子さんがいるが、そのお子さんの一人は自分の国籍を全く意識しないまま13歳になったという。ママ友はいった。
「国籍を意識しないでも、生活できるって、それはそれで幸せなことなのかもしれないわよね」
彼女の娘さんは、誰も彼女が韓国人だとかイギリス人だとかそういう目で見てこない中で大きくなっていったのだろう。

それに比べて、息子は6歳にして、同じニュージーランドという地で、日の丸を書いて持ち帰るほどに、日本という国のアイデンティティを意識する体験をしている。

別に、日本人という属性は、彼が何か努力して手に入れたものでもない。
国籍で息子の「何か」が決まるわけでもない。
それでも、その国籍というのに興味を持ってくれる人がいるということについて、息子は今、どう感じているのだろうか。
同時に、今までは日本人らしさをひた隠しにしてきた気持ちは、今後どうなっていくのだろうか。

私の中で理想だと思う、国へのアイデンティティや距離感を、息子も同じように持っていくのだろうか。
ホリデイスクールから持ち帰った大きな日の丸を目の前に、ふと考えてしまう自分がいる。
これが身勝手な愛だというのは十分承知だ。

とりあえず、コンニチワー!と言われたら、私も、もっと軽く、
こんにちはー!!と返せるくらいの、軽快さを持ちたいものだ。

さあ、今日は息子がどんなお絵描きを持ち帰るのだろうか。
そして彼は、いつか、おにぎりをお弁当に入れても良いよ、と言うようになるのだろうか。

物価情報&フリマ!】ニュージーランドに来る時、物価の高さというのは覚悟していました。特にこっちに来る前は、日本の地方(栃木県の那須塩原市)に住んでいて、安くて素敵な生活ができることに慣れていました。
こっちに来てみると・・・

物価が高いに加えて、最近の円安はなかなかしびれます!
といいつつ、日本で慣れてしまっていた色々なライフスタイルを変えて行ったら(外食はあまりしないようにしたり、洋服はほとんど買わないとか、カメラとかのガジェット用品は新規購入しないみたいな・・・)、あーなんか、生きていますよ!暮らせていますよ!!笑 今回は物価情報やフリマについてお伝えしています!
https://youtu.be/ybch8PA871w



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