DVの傷口と縫い方
暑い。
今日も猛烈に暑い。
息つく暇もない仕事。
今朝ははよから
ピンクと会えて
楽しかったから余裕だ。
仕事。
動きっぱなし。
時間がくれば仕事は終わる。
さぁ、帰ろう。
疲れた…
帰り道に急に訪れる
緩急。
あれ?
グルンときた、
やばい動悸だ。
今日はモノクロの古傷が
鮮明に再生された…
まだ気づいてなかった数秒前まで。
疲れたな…
なんか、無理だな…
なんか、無理だ……
駅のホームでベンチに座る。
私が乗る電車がくる…
乗りたくないな…
足が動かないな…
まずい…泣きそうだ。
こんなに暑いのに
私だけ氷の標本の中に
埋められている。
気持ちが止まってしまう。
胸が苦しい。
すぐに気づく。
今日の仕事だ…
あれぐらいで…
まだまだダメージか…
利用者に大きな声で罵倒される。
時には仕事中そんなこともある…
そんな事は慣れてる。
相手は利用者の方だし
病気が
そうさせているのも分かってる。
それも分かっている。
それでも数年前の
私に届いてしまった。
それでも私なりに
その背の高い
若い大きな男の人
威圧のある言葉と目つきの人
ふわっと無視を初めてやめた。
あれでも覚悟をして
きちんと説明した。できた。
援護射撃にピンクもいてくれた。
たいしたことでは無いはずの
ひとコマ
私には沢山の怖かったキモチが
一瞬にして戻ってきてしまった。
緩急は落とされる。
怖い。
大丈夫。
もう他人。
ただの他人。
記憶から消したい…。
どうしよう…苦しい…。
時々…携帯を確認しながら
私の足は前に進む。
家についた。
もうすぐ離れ離れになる
お母さんが作っておいてくれた
サンドイッチがリビングにあった。
今日、一食目。
感慨深いなお母さんのサンドイッチ。
泣くのを堪えて
口の中に詰め込んだ。
美味しい…
自力でこの傷口を
縫い合わせていこう。
虐待されたヒヨコの前で
私が泣くなんて烏滸がましい。
明日こそ負けない。