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森の呼び声:真実を求める始まり

エリオットは日々の単調な仕事に嫌気が差していた。王都の書記官として過ごす生活は、確かに安定していたが、彼の心には常に何か物足りなさがあった。書物の整理や記録の清書といった業務に追われる中で、彼は自身が何を求めているのかさえ分からなくなっていた。

そんなある日の夕暮れ、王都の片隅にある古びた図書館で、埃をかぶった巻物を偶然発見する。それは誰も触れたことのないような古代の文字で記されており、その一部だけがかろうじて解読可能だった。「森の奥に真実を探せ」。たったそれだけの言葉に、エリオットの心は強く揺さぶられた。


その夜、彼は眠れなかった。自分を呼ぶ声がどこからともなく響いているような気がした。巻物を繰り返し読み返しながら、彼の心には次第に一つの決意が芽生えていく。「真実」を探すため、彼は旅に出ることを決めたのだ。

翌朝、まだ王都が眠りについている頃、エリオットは荷物をまとめ、静かに部屋を後にした。外の空気は澄んでおり、夜露に濡れた街路樹が朝陽に輝いている。その光景は、彼にとって希望と不安の入り混じった新しい章の幕開けを象徴しているかのようだった。

彼が目指したのは、巻物に記された「森の奥」。その場所は王都から数日の距離にあり、一般には忌み地として知られていた。近づく者は皆、森の中で道を失い、二度と戻ってこられないと言われている場所だ。

旅の途中、彼は様々な出会いと経験を重ねた。小さな村で立ち寄った居酒屋では、森にまつわる伝説を聞かされた。「あの森には、かつて大いなる力を持つ賢者が住んでいたが、彼が姿を消してからは呪われた地になった」と語る老人の目には、恐怖と敬意が交錯していた。

そしてついに、エリオットはその森の入り口にたどり着いた。足元には苔むした地面が広がり、無数の木々が天を覆い隠すようにそびえている。森の奥からは低い風の音が聞こえ、それがまるで誰かのささやき声のように感じられた。

彼は深呼吸をし、一歩を踏み出す。その瞬間、背後で巻物がかすかに光を放ち始めた。その光はまるで道しるべのように彼を導き、彼の胸に新たな希望を灯す。エリオットは自らの選択が正しいものであることを信じ、さらに奥へと進んでいった。

真実を求める彼の旅は、これから始まる未知の冒険の第一歩だった。

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