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具合の悪いとき、あなたが家でできること
夜勤明け。
外来の前を通ると、いつもはぎゅうぎゅうにいるはずの患者さんがいない。このご時世だ、外来の待合室が3密であることをみんなが理解し始めた証と言えるかもしれない。
けれども
患者さんは、感染症の人だけじゃない。
骨を折ったり
がんになったり
厄介な風邪を召したり
病気は無限にある。
では、感染症ではない患者さんは
どこに行ってしまったんだろう。
答えは、家だ。
Stay Homeは患者にも平等にふりかかる。
痛みや不自由さを抱えたままおうちで過ごしている人が重症化してしまうのも、ナースあさみとしては大変気がかり。
そこで、日頃行っている看護のポイントの中から、おうちでも出来るもの、自分でできることをピックしてみることにした。
薬も道具も、衛生材料も使わない。
だから、出来ないなんて言わせない。
国家資格を持っていないあなたでも、周りにあるものを工夫すれば、今よりもちょっとだけ安楽に過ごすことができます。
もちろん、医師の診察を受けられることがベストだけれど、そこに至るケア、それを未然に防ぐケアは自分でできるものもあるんです。
子育てや介護がそうであるように、看護だって、本来はみんなが実践できるスキル。
困ったとき、不安なとき、参考にして頂けるとうれしいです。
熱でつらいとき
熱があるときって
冷やしたほうがいいんですか?
と、聞かれることが多いんですが
・暑いときは冷やす
・寒いときは体温が何度であっても温める
・別に何ともないときはそのまま
これがデフォルトだと思っています。
38℃あってもブルブル震えてるときは身体を温めたほうがいいし、36℃を下回っている時でも暑いときはそのままで良いです。
体温計の温度よりも、自分の感覚を大事にしてください。
ほら、熱があるかも?と思って体温測ったらそうでもなかったり、なんか寒いな寒いなと思って測ったら39℃あってびっくりしたり
人間なんて、そんなもんです。
暑くて仕方がないときは、アイスノンや氷枕を使って後頭部などを冷やすといいです。
後頭部に直接当てると冷たすぎるので、バスタオルで包むといい感じになります。
この時、贈答品を包むように氷枕をバスタオルでくるむと、寝相でどっかいったりせずに比較的朝までそのままのカタチを保てます。
アイスノンも氷枕もないけど、冷蔵庫に製氷機があるならジップロックの袋に水とともに氷を入れ、バスタオルで包むとリアル氷枕に近い感じに。
氷枕って昭和感が否めないんですが、わたしの勤める病院ではいまだに現役です。これのいいところは、ぬるくなった=氷が溶けたと目でわかりやすいところ、氷の量を加減できるところです。
具合の悪いとき、体力的にはもちろん精神的にも余裕なんてないので、すぐぬるくなったように感じてしまいがち。
だから、目で見てわかる氷枕がベターかな、なんて思います。
冷やす場所としては、後頭部の他にも
・脇の下
・鼠径部(ももの付け根のあたり)
もオススメ。
この辺りは、アイスノンや氷枕だと冷やしにくいので、冷凍食品についてくる手のひらサイズの保冷剤をタオルハンカチでくるむと使い勝手がいいです。
あとは、手のひらでアイスノンを触ってるのも気持ち良いです。
わたし、いま冷やしてるって感じがします。
寒気がするとき
これから熱が上がるぞ!ってサインです。
わたしたち医療従事者は、悪寒(おかん)、シバリングなんて言ったりもします。
・歯がガタガタいう
・うまく喋れない
・身体の震えが止まらない
・顔色がゾンビ
これらは、寒気のデフォルト症状なのであんまり気にしなくて大丈夫です。熱が上がりきったら、ほぼ消失します。
もう、とにかく温めてください。
体温も季節も関係ありません。
電気毛布、あんか、カイロ、ぬいぐるみ…
ありとあらゆるもので温めてください。
手足が信じられないくらい冷たくなりますが、それは血液を身体の中心に集めて、熱を上げようとしている証拠。
熱が上がりきったら、暑くなってくるので大丈夫
(しんどいですが)
余談になりますが、熱を上げて外敵をやっつけるタイプの漢方薬は市販もされています。
あなたの風邪はどこから?わたしは熱から!の人は、常備しておいてもいいかもしれません。
咳が止まらないとき
風邪、アレルギー、喘息…
咳がでる病気っていろいろありますよね。
わたしが知る限り、最強の咳止めはコデインリン酸塩(医療用麻薬の領域)なんですが、これこそ医師の診察、処方がないとGETできない代物。
家でできる緩和方法としては、「座って過ごす」です。
ナースあさみ、どうした?とお思いの方もいるでしょうが、順を追って説明していきますね。
まず、咳でダメージを受ける気管ってやつは、夜間に狭くなります。副交感神経が優位ってやつです。身体としては、夜のあいだよく休んで明日への準備をしたい。だから、外から酸素を取り込むよりも、身体の中のエネルギー循環にカロリーを回したい。
したがって、夜間に気管が狭くなるんです。
これ、咳が出てる人からすると結構つらい事象。
おまけに痰が溜まってしまう人は、針の穴の中で呼吸してる感じになります。つらたん。
この状態で横になると横隔膜の広がりがイマイチになるので、息苦しい、咳が止まらない、痰が出しにくいといった状態が助長してしまうこともあるんです。
座ったまま過ごす利点は、横隔膜の広がりを十分に保てること。
重力の力を借りて、肺が縦に大きく広がるのでしっかり咳き込むことができ、痰もキレ良く出すことができます。
でも、立ったまま寝れないじゃん?
ということで、座ったまま過ごす or 寝るのがおすすめというワケ。
ソファでも床でも、座った状態でラクな姿勢を探しましょう。
クッションやぬいぐるみをお持ちの方は、抱きしめるような体勢をとると、いくらかマシになると思います。
布団と枕しかない、という方は、布団を丸めて背もたれにし、丸め具合で高さを調節してもたれかかるだけでも結構いい感じなはず。枕は抱いてください。
おそらく、15分〜30分おきの睡眠となってしまうので、掛け物は毛布やタオルケットで適宜調節したほうがやりやすいと思います。
お腹が痛いとき
いろんな痛みがあるんですが、生理痛の場合はカイロなどで温めると痛みが緩和される、と言われています。血流量を増やして巡りを良くするイメージですね。
それから、お腹を壊しそうなとき。
これは、お腹が壊れきるまで(?)痛みが続くので、諦めるしかありません。腸がギュルッキュルと音を立てて動いているはずなので、当然周りの臓器や筋肉にも影響を及ぼし、痛みを感じてしまうんですね。
反対に、お腹が動かなくなる病気もあります。ガスも便も出ずにどんどん溜まっていく状態。
腸閉塞と言いますが、みなさん信じられないくらいお腹が痛くなったので病院にきたと仰います。きてくれてよかった。
さらに、お腹が張って、しかも固くて、指でちょんって触られるだけでも死ぬほど痛いときは、迷わず病院へいらしてください。やばめです。
痛みの分類や事例に関しては、こちらのサイトがわかりやすいかと。
気持ち悪いとき
吐けるなら、吐きましょう。
吐ききったらラクになれます…!
一方で、吐くものないのに気持ち悪い、なんかムカムカするときは、要注意です。
脳や神経系の病気の可能性もあるので、何日も症状が続くようであれば受診したほうがベターかなと思います。
お腹を壊してしまったとき
もうね、じゃんじゃん出してください。
残酷な言い方になりますが、感染性胃腸炎の場合、中身を出し切ると細菌やウィルスの栄養源がなくなるのでこちらが有利になりやすいんですね。
これは上からも下からも一緒。
感染性胃腸炎の場合、下痢が続いているからといって下痢止めが処方されないのはこのため。もうお腹の中からっぽでは…?というくらいでOK。同意なしの強制クレンズみたいな感じです。
ここで注意なのは、脱水症状。
出し切るということは、消化液もともに体外へ出てしまう、それはつまり血中の水分も少なくなってしまう、Ready to 脱水!って感じなので、ポカリやOS-1的なものを少しずつこまめに飲みましょう。
ここでいう少しずつこまめにとは、コップ一杯を1時間で飲むペースです。慣れないと結構難しい。
この時点で吐いてしまい、手足が震えてくるような人は完全に脱水症状なのでReady to 点滴、どうぞ病院までいらしてください。
横になっていることがつらいとき
ずっと横になってるのも、実はつらいんですよね。
腰が痛くなるし、天井しか見えないし、活動を何もしていないわたしっていったい…と、自己肯定感ダダ下がり。
身体がしんどくなければ、座っても良いし、立ってもいいし、少し散歩をしてもいいんです。熱がある、咳が出るは関係ありません。
ベッドじゃなくてソファや床で寝落ちしちゃってもいいし、体力が持ちそうであればシャワーを浴びてもいい。
少しは活動しないと、夜眠れなくなることにも繋がるので、体調が悪いときも少しならば活動してOKです。
あ!筋トレは絶対にダメですからね。
敵と戦うために使っているタンパク質を筋トレで消費してしまうなんて、もったいないです。
眠れないとき
患者さんからの訴えNo.1がこれ。
みなさん、一瞬で寝落ちできる睡眠薬があると期待されているんですが、そんなものはありません。
そんなの麻酔薬くらいじゃないでしょうか?
あれは3秒でイける。
ここで、眠れないあなたに質問です。
朝、起きてますか
太陽の光、浴びてますか?
朝、光を浴びないとメラトニンというホルモンが日中もウェイウェイ活動してしまい、身体としては夜の状態が長引いてしまうんですね。朝、光をめいっぱい浴びることで目から入った光が脳へ達し、夜を支配するメラトニンを退けてくれるんです。
太陽マジ神
しかもタダ
テレワークで時間の感覚が狂いがちな人もいると思いますが、まずはこの2点を守ってみてください。
というのも、人間の体内時計は25時間
わたしたちが暮らしてる世界は24時間
時計や光のない空間で過ごしていると、これがどんどんズレていくという研究もあります。
このあたりは、ゆーすけ先生のnoteにまとまっているので、ぜひ。
それから、もうひとつ質問。
ちゃんと、動いてますか?
テレワークやリモートで活動量が圧倒的に落ちてる人って、頭と心だけ疲れて、身体が疲れていない状態です。
すべてがバランス良く疲れるように、運動しましょ。
じゃないと、眠気だってやってきません。
運動が苦手という人もいると思うんですが、歯磨き苦手だから週に1回しかしないわ!なんて人、そういないですよね。
つまりは、そういうことです。
骨折で手術した患者さんだって、翌日から器具を使って手術したその部位を動かされます。人間は動物ですからね、動かなくなったらどんどん弱るんですよ…
運動は、わたしたちが健やかな毎日を送っていくために必要な習慣のひとつ。苦手とか嫌いという次元ではなく、やらなきゃいけないことなんです。
ね?運動しなさい。
食欲がないとき
熱があるとき、胸が苦しいとき
無理に食べなくていいです。
熱があるときは消化機能が弱っているので、そもそも食欲がわかないはずなんです(個人的には、この感覚とは無縁)
栄養をつけようと無理して、カツ丼とか食べないでください。具合の悪いときにそんなもの食べても、吸収できずに出ていくだけです。
消化の良いものをチョイス、もしくは、食べたくないなら飲み物だけでもOKです。
ちなみに、お腹の張り具合をみるために打診という方法があります。
手のひらをお腹にあてて、もう一方の手でトントンと叩きます。
このとき、ぽんぽことたぬきみたいな感じがしたらガスが溜まっている証拠ですし、鈍い音(打診を太腿でやってみたときの音)がしたら便が溜まっている証拠、となります。
やってみると、意外と楽しいのでよかったらぜひ。
そして、あくまでも補助的なものになりますがこういった栄養補助食品も出ています。
仕事中にささっと済ませたい人、量があんまり食べられない人はこういうアイテムも世の中にはあるんだ、ってことだけでも知ってもらえると。
おわりに
看護師って国家資格なんですが、やってることは至って地味です。上記のようなことに、ちょっとだけ医療の知識と経験を加えたもの。それこそ、昔は娼婦がしかたなく就く社会的地位の低い仕事でした。
けれども、ナイチンゲールが「看護は専門的なスキルであり学問である」と社会に証明し、その地位向上によって人々の健康を守り、公衆衛生に貢献してきた歴史があります。
医師や医療機関をあてにできるうちはいいんですが、そうも言ってられない世の中になりつつある中で
自分を救うのは、まず自分
というセルフケアの考えが広まり、浸透し、実践につながっていくことを心より願っています。
もちろん、自分でお手上げのときは遠慮なく医療機関を受診してくださいね。
わたしたちが、お待ちしています。
参考資料
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