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おいしい野菜なんてない(1/3)

堆肥を作る時に不可欠なのは微生物の働きです。目に見えない微生物が枯れ葉や牛や鶏の糞をエサにして排泄し、どんどん分解していきます。最初のうちはその活動で堆肥の山は50度くらいまで熱が発生し、その後徐々に落ちて約1年後には熟成。良質の堆肥が完成します。

堆肥は畑に撒かれ、そこでも更に土中の微生物により分解されます。そうして分子レベルにまで小さくなって、ようやく植物に吸収されて栄養になり、野菜が育つ。というわけです。

微生物は早いレベルで世代交代するので、堆肥を分解している途中にも大量の微生物が死に、それをまたエサにして微生物が活動します。土中でもまた別の微生物が微生物の死骸やなんかをエサにしてどんどん分解していきます。

化学肥料というのはこの一番最後の「分子レベル」に大変近い状態にまで作ったものを言います。植物に吸収される時点では堆肥を使っても化学物質を使っても効果はまったく同じと言えます。植物が糞を吸収するわけではないし、化学肥料の粒を吸収するわけでもありません。分子を吸収するのですから。

違うとすれば、「分子レベル」に到達するまでの過程のことで、一方は身の回りにある物質、落ち葉、ワラ、ぬか、牛糞、鶏糞、油かす、麦芽かす、もみがら、などを使って、畑の隅に積んで1年かけて作ります。もう一方はホームセンターで購入するだけですが、もとを辿れば、巨大なコンテナ船でモロッコや中国などから原料の鉱石を輸入したり、空気中のアンモニアを多大なエネルギーを使って圧縮させたりして作っています。

材料を積み上げて放って置くだけで作れるものを、人の手で作ろうと思うと、ものすごく多大なエネルギー、石を切り出すコスト、コンテナ船の燃料、プラントの建設維持費...。

アンモニアなんて、おしっこですよ。おしっこ。それを空気中から取り出すために電気、ガス、石油、石炭を使うわけです。なぜアンモニアが必要かと言うと、窒素という物質を作るためですね、窒素は植物の体、葉っぱや茎などを育てると言われている物質です。堆肥で言うと、鶏糞や牛糞の部分です。

ただ、自然界のものをうまく使えばうまく回して行けるのですが、自前でそれをするには時間も場所も材料の必要で、どちらも今はなかなか手に入りづらいものではあります。最初のうちは結構臭いもしますし。そう考えると科学肥料は手軽に手に入るし、効果も素早いので、大変便利です。

では、実際に畑の野菜で、化学肥料と堆肥と、どっちを使った場合がおいしいのでしょう。分子レベルでは同じものを吸収している、ということならば、どっちも同じなんじゃないでしょうか。

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Yuki/農ときどき旅
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