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50歳の処方箋 -歯の部-
ADHDというのは、続けることが苦手であるわけなんだけど、さて、50代というのは今まで続けてきたことが大きく形になって表れる年代でもある。ある日自分の写真を見て思った。
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ありゃ?なんか右と左で顔が違うんじゃない?
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ポテチをむさぼり食う私。撮られることを意識してない、まことに間抜けな写真なのだが、だからこそ普段の顔が赤裸々にあらわれている。写真を撮るとなると顔を作るし、鏡を見る時ですら意識して顔を作る。それが人というものだ。だから、この気の抜けた写真は本当に人から見えている自分が写っていると言える。つまり真の、自分の顔というわけだ。
あれ…?これ、ちょっとなんかマズいんじゃねえの?
だが、人と言うのは忘れやすい。私もその時あれ?っと思っただけですぐに忘れてしまった。いや、忘れたかったという言うべきだろうか。そこから数年経って、また私はあれ?と思うことになる。
なんか右の口角が下がってないか?
顔の力を抜くと明らかに右の口角が下がり、まるで機嫌の悪い人みたいになる。笑ってみても左の口角は上がって笑顔になるが、右は意識して引き上げないと重力のまま下がりきっている。よほど意識して筋肉を引き上げないと釣り合わないが、それも奇妙なものだ。だって心情にリンクしているのが表情なわけで、そもそも(よし、右の顔の筋肉を引き上げるぞ)などと考えるのはおかしい。
顔の右側の筋肉弛緩が以前よりも進行しているのは明白だった。これは今後も引き続き進行していくことを示唆している。私の顔はどんどんアンバランスになって行く恐ろしい未来。
いったい何が原因で?思いたることはあった。「歯」である。私は非常にものぐさな人間なので、歯は1日に1回しか磨かなかった。それはあるとき、歯医者さんから「歯磨きは1日に1回でも丁寧にすれば大丈夫」みたいなことを聞きかじったからであった。ものぐさな私には朗報である。それで、毎晩寝る前にいくらか時間をかけて2種類の歯ブラシとデンタルフロスも使って、10分くらいかけて磨いていた。
とは言え、やっぱりものぐさなので、時間をかけないこともあったし、普通の歯ブラシだけで終わることもあった。それが原因かどうか、あるいは原因はもっと昔にあったのかも知れない。というのも、私の右の奥歯は高校生の時に金をかぶせてもらってあるんだけど、ある日フィステルができて診てもらったら歯科医が使う道具の先が歯の中に折れて残っていることが判明したんである。
生まれてから今まで同じ歯医者にかかる、ということはないので、その折れた道具は最初の先生なのか、それともそのあとに見てもらった別の先生の仕業なのかは分からない。とにかく、歯をガシガシと削るための器具が奥歯の中に残置されており、さらに加えて言うと、その歯は根っこが折れていた。
どういうことか説明しよう。歯というのは根っこがある。歯茎に刺さっている部分だ。これは前歯だと一本しかないんだけど、奥歯ともなると二本ある。歯自体の面積も大きいし、歯にかかる力も強い。それに耐えるため二本の根っこで支えている。そのうちの1本が折れていた、と言うわけだ。なんで折れたのだろう。
思い当たることはある。それは食いしばりだ。数年来、朝起きるとだいたい右手をギュッと握っていることに気づいていた。それだけではない、歯もギュッと食いしばっているのだ。そもそも食いしばりや噛み締めといった事実を大して問題視していなかった。口を半開きにしている人をたまに見かけるけれど「あんなだらしない、私は口をキュッと結んでキリリとしているわよ!」くらいの気持ちだったから、むしろ意識して噛み締め、常に口を閉じて懸命に口角を上げることに血道をあげてきた。
加えて寝ている間も歯ぎしりで目が覚めることがあった。起きているときは噛み締め、寝ているときは歯ぎしりと食いしばりで、私の歯は常に過大な圧迫を受けていたことになる。
もうひとつ思い当たるのはジャイアントコーンだ。私はナッツの類であるジャイアントコーンが大好物で、ワインバーをやっているときはその立場を大いに利用して仕入れ、自らバリボリと食べていた。日常的に。おいしいですよね、ジャイアントコーン。でも、あれを食べると奥歯にものすごい圧と衝撃が加わるの、わかるじゃないですか。まあ、あれも原因のひとつだったんではないかと、思い当たったわけで、まあ複数要因が合わさって私の歯が割れてしまっていたんである。
で、普通は食いしばると歯の表面が割れるんだけど、私の場合はすでに歯がなくて金歯がかぶせてあったから、その下の根っこが割れたんだと思うんですよ。しかも、その根っこはもともとちょっと曲がっていたみたいで、治療をしようとしたときにうまく器具が入らずに折れて残ってしまったようなんである。金歯を外して中を見た先生も「あー、これは難しいやろなぁ」などと言ってて、しかもその先生の治療途中にまたもや器具が折れてしまい。私の歯の根元になんと二個分の器具が残置されることになってしまった。いわゆる二次被害というか、ミイラ取りに行って自分もミイラになってしまうというアレ。
それでどうしたかと言うと、器具を二個残したまま再び金歯をかぶせて「様子を見る」ことになった。奥歯だから抜くと噛めなくなるし、次になにか症状が出てきたら対処しましょう。ということであった。けれど、どうも右の奥歯の嚙み具合、噛み合わせがよろしくなく、それで食事のときはついつい左の歯でばかり噛んでいた。私の顔のアンバランスはそのような事態のなかで発覚したわけで考えれば考えるほど
こりゃ歯が原因じゃねえのか?
と思うばかりであった。そんなある日、知人である「風見荘」のひいくんがFBに投稿をしていた。隣町の歯医者で噛み合わせの治療をしたら劇的によくなった、と言うんである。それを見た私はこれだ!と思い、すぐひいくんに連絡を…
しなかった。
人間と言うのはそいういうもんだ。行動するのはおっくうだ。私は当時車に乗っていなかったからその歯医者へ行くには近鉄とJRを乗り継いでいく必要があり、JRは一時間に一本しかなく、行きも帰りも下手に電車を逃すと1時間待ちという場所に、その歯医者は立地していた。仕事のことを考えると到底行けそうにもない。
ところが、膝負傷、左目黄斑円孔、ADHD発覚ということから2023年を「体メンテ」の年とすることにした私は腰を上げ、今まで気にしていた食いしばりを治療することにした。だけど、食いしばりなんて本当に治るんだろうか。ひいくんは嚙み合わせを直したって言うけど、それなら食いしばりも直してくれるだろう。そもそも噛み合わせだってもともと悪いしな。ひいくんに連絡をすると「噛み合わせは見た目的なものと体幹を整える目的の2種類あって、その先生は後者のほうですよ~」と教えてくれた。歯医者なのに体幹だと?私は少し不安になりながらその歯医者の予約を取ることにしたのであった。
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