成人式を迎える二倍の皆様へ

ごあいさつ

　まず、40歳へと生き延びたことを喜びましょう。それは誰のお陰でもありません、あなたが生き延びた、その事実が重要なのです。おめでとうございます。

　皆様はいわゆる氷河期世代と呼ばれ、失われた20年間を幼年期青年期と育ち、成人してからも景気は良くならず、2000年代に入ってからも重なる天災、増える消費税、実質の賃金が上がっても現場では変わらず残業代を削られる始末。といった人生を送られてきた、そうですね。

　時代は一億総クリエイター時代。専門学校が乱立し、資格を取れない専門職の生徒が溢れたのものこの頃でした。夢を見て、就職もせずにアルバイトをしてきた皆さん、ご苦労様です。夢は夜に見るもの、いつまでだって夢を見ることを
止める法律なんてありゃしません。ただ聞きたいのは、社会制度を使っていますか？ということです。コロナで困窮になった方々も、この20代からの20年間日々困窮の中にいた人々も、皆様地元の生活サポートセンターへ行き、自分が
なぜ苦しい生活をしているのかを相談してみてくださいね。

　皆さんは他人に相談するのがとても苦手な世代です。上の先輩たちはバブルの残り香を存分に嗅いで増長したパワハラ気質の50代以上の世代。彼らには自前の努力ではたどり着けなかった大きな仕事を体験する機会に恵まれました。

　その成功体験は彼らの中に呪いとなって残り、そうです皆さんもよくお聞きの「最近の若者」という呪詛の言葉となって蔓延っています。

　ところが皆さんが見る「最近の若者」はどうでしょう。新しいテクノジーを操り、新しい情報を即座に検証し、新しいアイディアでブレイクスルーを目指して日々努力して世の中を良い方へと変えようとしています。

　今、二倍成人式を迎えた皆さんは、想像してみてください、皆さんは、このあとの20年を生き延びて、三倍成人式の会場からタイムスリップして戻ってきた、奇跡の生存者です。皆さんは生き残る、どんな手を使ってでも、上の世代は消えない、下の世代は伸びていく。その間ですり潰されないためにも、どうか諦めないでください。

　新しいことに挑戦するのは、悪いことではありません。ただし、若い頃に比べたらその苦労は倍以上です。目はかすみ、手は痛み、肩や首はすぐに悲鳴をあげるでしょう。そもそも新しいことに取り組むために何から手をつけていいのかもわからない。

　あなたを、誘う簡単な広告にも惑わされてしまうこともあるでしょう。「資料請求はこちら！」というボタンを押す前に「その広告」をじっくりとみて、その広告が使っている手法を分析して読み取り、自分のものにしましょう。する努力をしましょう。

　簡単なことなどなにもありません。今までの人生と同じか、それ以上の苦難がこれから待ち受けていることでしょう。それでもいい勘違いをしていきましょう。若者と同じように将来に夢を抱きましょう。具体的に戦えるための力を手に入れていきましょう。

　誰も幸せにしてくれない。ええそうです。

　誰も助けにはなってくれない。ええ、もちろんです。

　あなたは一人です。他の誰でもない、あなたは一人です。

　これからは、あなたが誰かを救う手立てになりましょう。まだ動く脚があるなら、歩きましょう。まだ動く手があるなら、道具を手にとりましょう。まだ目と耳と頭が効くうちに、大切なことを書き残していきましょう。誰かに伝えていきましょう。

　たくさんの人たちが、たどり着けなかった４０歳にあなたはたどり着いた。それは確かに、幸運だっただけかもしれない。

　だったらその幸運を利用しましょう。

　二倍成人式、おめでとうございます。どうかこれからの20年間が、あなたにとって素晴らしいものでありますように。