役者はおばけである。

 ふと、思い出したことがある。

 もう20年ほど前になるけど、一人の役者が「すみませんでした」って挨拶にきた。その彼は二週間前の本番で主役をやるはずの人だった。丸坊主にして、母親に付き添われて、頭を深々と下げた。

「まあまあ、頭を上げて」

 泣きはらした目は赤く、まぶたは腫れていた。いくつかの質問をして、二者択一の中で彼がまだ揺れているのがわかった。ビビって逃げたけど、役者は辞めたくない。

 ただ僕にはわからない。ビビった自分を守るために逃げたような「役者」という生き方に、今更なにを期待するというのだろうか。

「なんで、役者やりたいの」

 ぼくがそう聞くと、彼はそれまでのこわばった顔からポロポロと険が剥がれるように柔らかい顔になって答えた。

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脚本家になりたい人、面白い話を書きたい人、読んでいて分析したい人などにおすすめです。 あと表に書けない愚痴も書く。

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