やーしゅん氏のJRAレース映像無断使用に関する一連のツイートに関してのまとめと所感
馬体診断でおなじみのやーしゅん氏の問題提起が話題となっている。
話題になっているJRAレース映像無断使用に関するツイート
発端となったツイートはこちら。
とても皮肉が効いているなと思って見ていたら、「許可をもらっているっぽい」という旨のツイートをした後、「やっぱりもらってないっぽい」という旨の呟きをし、以下のツイートを投稿。
先のニートボクロチキンの演者と、旧うまログの演者に直接リプライを送り、JRAの許可を取っているか確認した。
これによりそれぞれのフォロワーが猛反発。JRAのレース動画の無断転載をめぐって議論が紛糾しているのが昨日の夕方-夜である。
JRAのレース映像無断転載は著作権侵害なのか
JRAはレース映像に関して、以下のように定めている。
レース映像はJRA HPに掲載している映像であり、著作権を保有しているJRAは二次利用を許可していないため、YouTubeなどにおいて使用するのは本来禁止されていることがわかる。
そのため、やーしゅん氏の指摘は極めて正しい。これに対して「嫉妬だ」といった的外れなリプを送るのは非常に良くない。
JRAが著作権侵害の申し立てを行わない理由を考えてみる
だがここまで明確に規約を記していながらJRAが現状著作権を保護するために必要な対応を行なっていない理由をいくつか考えてみよう。
現在対応を進めている最中であるため
JRAの利益を損なっていないため
たくさんあって面倒なため
1は読めばわかるので割愛。いずれ正義の鉄槌が降りかかるかもしれない。
3も読めばわかるので割愛。
2については少し加筆したい。
JRAは今年の3月からすべてのレース映像をライブにて配信し、それらのアーカイブがJRA HPから閲覧できるようになった。これによりグリーンチャンネルに登録しなくても万人がリアルタイムでレースを観戦できるようになったのは記憶に新しい。またそれ以前もG1レースに関してはYouTube上にアップロードされていた。
無断転載の対応が厳しい一例に試合直後のブレイキングダウンやRIZIN等の格闘技の動画が挙げられる。これには明確な理由があって、これらの運営はPPVチケットの収益が売上の多くを占めるからだろう。
一方でJRAの収益のほとんどは馬券販売だ。レース映像が無断で使われることで果たして馬券の売上が下がるだろうか。むしろ偶然無断転載を使用したYouTubeチャンネルの動画を見て、競馬に興味を持つ人もいるかもしれない。もしそうなら収益の柱である馬券売上に寄与してくれる。
逆の立場だったとして、利益を損なわない上に広報を担ってくれる可能性もある存在に対して、リソースを割いて一件一件著作権侵害の申し立てをするか考えてみてほしい。
他の業界の例1:ゲーム実況
同じような議論が以前交わされていたのが、ゲーム実況YouTuberである。ゲームをプレイしながら配信をするスタイルのYouTubeジャンルだが、これも著作権という視点で見ると、めちゃくちゃ侵害している。さらにストーリーを楽しむゲームにおいては、そのゲームをプレイせずに動画を見ることで満足する可能性すらあり、売上に直接痛手を与えかねない。
そこでゲーム業界はどう対応したか。著作権者であるゲーム会社各社がそれぞれ二次使用ガイドラインを制定したのである。ソフトによっても許可されている範囲が違っており、非常によく作り込まれていると感じる。
他の業界の例2:同人活動
コミケなどで販売されている二次創作物などは基本的には翻案にあたり、この権利は著作者のみが専有するものであるため原則禁止されている。また著作者人格権の同一性保持権の侵害にも当たるとされる。ストレートに違法行為であることがわかる。
ではなぜこれによって訴えられた人をあまり見聞きしないのか、もっといえばコミケが成り立つのか。著作権は親告罪だからだと考えられる。
要するに侵害された側が告訴することで初めて著作権侵害が成り立つということである。そのためよほど悪質なもの以外では訴えが起きないのだと考えられる。
これらを踏まえてJRAのレース映像の無断転載を考える
ここからはあくまで個人的な意見である。
私は著作権が親告罪である以上、レース映像の無断転載を糾弾するのはお門違いではないかと考える。また保有者であるJRAに無断転載に目を光らせるように申し立てるのも余計なお世話のように感じてしまう。当然判断するのはJRAだ。
万が一競馬ファンとして競馬の衰退に繋がる可能性があるなら理解はできるが、先も述べたようにそれは考えづらい。やーしゅん氏の発言はレース映像を使わない競馬YouTuberとしてのポジショントークのように思える。
そもそも現在削除されているのだが、彼は以下のツイートをしており、これがコンテンツ製作者のスタンスとしてとても正しいと思ったので以下に貼付する。
彼が言うように、JRAが訴えを起こしたという話が出ていない以上、リスクを取ってレース映像を使うか、安定したコンテンツ供給のためにレース映像を使わないかは動画の作り手の判断に委ねられるだろう。
違法はよくないけれど…
違法と言われていることは確かに一般的にはよくないことである。
だが強調したいのは、ゲーム会社が二次使用ガイドラインを制作したからゲーム実況が始まったのではなく、ゲーム実況が盛り上がったから二次使用ガイドラインができたという点である。
川田騎手など様々な人の意見によりJRA HPでレースのライブ配信が始まったように、レース映像を使用できたらこれだけ盛り上がるということをJRAに認識してもらわないことには二次使用に関する議論も生まれない。実際、無断転載をしているYouTuberの動画から競馬を見始めた人もいることと思うし、見る側として回顧動画はレース映像を使えた方が間違いなく楽しめると思う。
だから私としては、「リスクを取っている動画の作り手」の方の存在も大切だと感じている。マジで今回の騒動を見たJRAの職員さんが杓子定規的に著作権を侵害しているYouTuberに片っ端から申し立てを行わないことを祈っている。それをするくらいだったら、ゲーム業界の人とかと一緒に二次使用ガイドラインを作っていただきたい、ゲーム業界みたいに利益毀損に繋がることはほとんどないだろうから難しくないはずだ。
あと個人的にはクリエイティブ・コモンズのライセンス利用を提案したい。
これによって著作権を保持したまま、映像を流通させることができるようになるし、JRA内での折衝も幾分か簡単になるのではないだろうか。さらにこれによってファンの創作の幅も広がり、ひいてはJRAにとってもプラスになると思われる。
最後に
レース映像と聞いて、まず最初に頭に浮かんだYouTuberを紹介させていただきたい。毎度取材力というかかかっている労力に感謝しながら鑑賞している競馬YouTuberプロ馬券師集団桜花さんである。
彼らも出走馬の近走紹介でレース映像を使用するのだが、圧巻するのがすべて自分たちで撮影した素材をもとに解説する点である。動画の内容も充実しているし、撮影スキルも素晴らしかったので紹介させていただいた。いつも大変お世話になっています。
最後に、やーしゅんさんの馬体診断も、ニーボクさんの二人のギャップも、けんしろうさんの調教診断(調教だけは無料でアクセスできないからNG出るかもな…)も全部見ているので、それぞれのチャンネルが今後もそのまま運営できることを祈って。