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バットマン〜マントの戦士〜

放題タイトルのダサさは令和になっても健在である。もはやここまでくると、分かっていてダサいタイトルや本来改変すべき直訳をあえてつけて注目を集める伝統的な手法として昭和から配給会社に受け継がれているのかもしれない。だとすれば凄いことである。

今回このアニメ作品がAmazonプライムビデオで配信されると予告があってから子供のようにワクワクしていた。それもそのはず。私は子供の頃にテレビでバットマンのアニメ放映をリアルタイムで視聴していた。山寺宏一のナレーションと重厚感のあるBGMで始まるOP。今日はどんな怪人(コスプレ)と戦うのか毎回楽しみだった。特に好きだったヴィランはスケアクロウ。後にクリストファーノーラン監督の「ダークナイトシリーズ」に出てきた時は人知れず歓喜したものだ。アニメは風刺画の様な独特のタッチで描かれるダークで重たい雰囲気。ニンジャタートルズやXメンといった派手でイケイケなイメージの海外ヒーローものとはかけ離れた世界観のアニメ、そんなバットマンを私は心から愛していた。

近年はしばらくマーベル映画の勢いに負けじと実写映画のユニバースを展開しようとしていたDCコミックスだったがさすがにディズニーという巨大資本の前には膝をつかざるをえず、いつのまにかヒーロー映画のブームも下火になっていった。

DCの功績といえば90年代にあったティムバートン監督のバットマンシリーズと先述したダークナイトシリーズそしてジョーカー。他は色々あったものの鳴かず飛ばず。マンオブスティールやジャスティスリーグは頑張っていたが後世に語り継がれるほどの作品ではなかったと思う。(個人的にスーサイドスクワッドは好きでは無い)

そんなDCだったがやはりバットマンというブランドは丁寧に扱う傾向があり今回のアニメ化に関してそれを改めて感じさせてくれた。間違いなく良作であると言える。

90年代から続く伝統の絵柄

まず着目したいのは絵柄。これだけ技術が進歩したにも関わらずあえて昔から続く風刺画のような絵柄で仕上げられている。ファンには嬉しい。まさにバットマンと言えばこれだ。しかも完全に同じというわけではなくところどころで現代の技術が流用されておりモーションやモノトーン気味な色合いも自然で無駄がないエッジの効いた作品になっている。

面白いのはあえて昔のアニメがやっていたような演出をあえて使っている。例えばゴードン警視総監がヒットマンに狙われるエピソード。汽車から降りてきたヒットマン軍団はみな同じ背格好で同じく服を着て駅のホームに一列に並ぶ。とても不自然な立ち位置でありそういうところが昔の海外アニメぽいというか今なら絶対にやらないのだがそれをあえてやっている。不自然な均一さとでも言うべきか、見ている人間に違和感をあえて感じさせる演出。だが昔からのアニメファンは思う

「うぁあ昔の海外アニメぽいぞ!」

昔の作品への濃いリスペクトを感じる。

ポリコレの波をうまく取り込んで利用する

マーベル作品はこれが原因で失敗したと言っても過言ではないのだがDCはそこをよく学んでいる。ポリコレに配慮しているように見せてクオリティに影響のない上手い見せ方をしている。

例えば人気キャラクターのハーレイクイン。彼女は言わずと知れたジョーカーの相棒、情婦として有名だが今作ではジョーカーの出現前にすでにヴィランとして覚醒している。独自なのかジョーカーの影響があったのかまだ定かではない。今作では精神科医として強欲な人間に並々ならぬ執着を見せるクインゼル。彼女の正体は強欲な金持ちを監禁しては妙な格好をさせ精神的に追い込んで財産を事前団体に寄付させ破滅に導く道化ハーレイクイン。ジョーカー不在のハーレイが出てくるとは思わなかったので少々面食らったが今後の展開に期待出来ると共に、ひとつ面白い事に気が付いた。ハーレイが女刑事とデートしてキスをするシーン。後の行動から察するになんらかの思惑ではなく彼女の本心から刑事と恋仲になりたかった様子。するとハーレイはゲイ?もしくはバイ?となる。だとするとジョーカーへの恋心でヴィランに覚醒したという設定が邪魔になるが今作は既に覚醒済み。もしジョーカーの影響があったとしても何らかの意図で別行動をとっているため不自然さはない。ジョーカーから独立したハーレイクイン。ならば女性とキスしてもいいじゃないか。いや、むしろハーレイクインならば全然アリじゃないか!と思わせてくれる。

宿敵ペンギンも従来から大幅に変更されているがこれはこれで魅力的かつ深みのあるキャラクターになっている。ポリコレの影がチラついていてもセンスの良い変更だとシンプルに思った。これからの活躍を期待したい。

ポリコレはいつだって不自然な配役で作品をダメにしてきた。だが今作はそれを上手く利用して新しいキャラクターのバックボーンを生み出した。正直これは見ていて素晴らしいと思ったがこういう成功例を出されると今後が不安になる。ディズニーが日本アニメの表現に手を加えるとか言い出しているこのご時世。いくら逆手にとって新しいキャラクター創造が出来ると言ってもポリコレは作品に必要ない。

ハードボイルドでダークなこれぞバットマン

次のシーズンに繋がるシーンを見てより楽しみになった。2フェイスやリドラー、ペンギンやスケアクロウといったキャラクターたちがこれからどんどん出てきてくるに違いない。味方側もそうだが、今までのバットマンと違った個性のキャラクターたちに大いに期待出来る新バットマン。

昔のアニメ好きならぜひ一度視聴してみてほしい




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