デンマークの社会保障制度
デンマークで過ごしていて、直に体感した魅力的だなあると思う社会制度が幾つかある。
私の肩書きは日本人留学生。
そんな、ちょっと1年間、デンマークに滞在しますよっていうだけの私にデンマーク政府がしてくれていること、まずはこれをシェアしたい。
食・住・学び・友達・経験を与えてくれるフォルケホイスコーレ
私は今デンマークのフォルケホイスコーレという学校に通っていて、通っているというか暮らしていて、暮らしているというか、学び合っていて・・・・(いろんな経験をさせてもらっているからなんていうのが正解かわからない)
「学校」という側面から見ると、フォルケホイスコーレには授業がある。授業を受けることができる。私は主にデンマークの社会福祉を学んでいる。これは知識になる。
「生活・暮らし」という側面から見ると、ここにいる生徒はみんなで寄宿型の共同生活をしているから24時間ずっと一緒。学びはクラスだけでは留まらない。授業時間外で対話により学びを深め、学んだことを実践することができる。
じゃあ、なにがデンマーク政府からの恩恵か、というと、学費だ。
学費には授業料・生活費(食事・宿代)・修学旅行のお金など含まれているがデンマーク政府が留学生に対しても2/3負担してくれている分私が実際に支払う金額は1/3程度に留まっている。月額10数万円程度。海外に家なき子、デンマークの教育が知りたい・学びたい私にとってこれ以上のものはない。ありがとう。
VISA(学生ビザ・ワーホリビザなど)を持っていたら医療費タダ
私はワーキングホリデービザを取得してデンマークの滞在許可を得ている。ビザを所持していて、デンマークに住所が持てたら、役所で住民票の申請ができ、「イエローカード」というものをもらった。日本でいうマイナンバーカードに近いのかなあ?とにかくこのカードを持っていると、医療機関にかかる時の私の個人情報が全部入っている上、デンマークの医療は無償で受けられる。(薬代・ワクチンは例外だった)
デンマーク人はみんなイエローカードを所持しているからもちろん無償。(子供でも高齢者でも肩書きは関係なくみんな無償だよ)
日本人の私もVISA持ちだから無償で。
「え〜っと、海外保険、いらないかなあ。」と悩んでしまうほど。※実際ロストバゲージや歯の治療等はカバーされていないから保険はかけたけども
「いざ」という時を保証してくれているという「安心感」は生活の質を向上させるに違いない。
高TAX社会だから高福祉国家が実現できる
私が留学生として恩恵を受けていることをつらつらと書いてみたが、
日々支払っている物価はかなり高い。
消費税は25%です❤︎所得からの税金は40%前後❤︎だから給料は半分税金に持っていかれる❤︎
だけど高い税金というのが幸せ国家の秘訣。
「あなたは幸せですか?」と聞かれて「はい幸せです。」と答えるデンマーク人の割合は85%なのだそう。これは肩書きをもを超えて、子供から高齢者、男でも、女でも、障がいがあってもなくても、お金持ちでも、お金がなくても、みんながYESというから出る数字。
もし、「あなたは幸せですか?」と聞かれたら、「はい!幸せです!」と答えることができますか?
じゃあ「住みよい国ってどんな国ですか?」
食べ物があること、住む家があってお金に困らないこと、物価が安いこと、病院があること、交通の便が良いこと、仕事があること、夢が実現できること。まずは衣食住の面が満たされこと。
次に格差がない社会、平等、個人の自由、人権の尊重、障がい者や高齢者の生活保証、安心して老いられる国、自由に教育が受けられる、民主主義の国・・・と社会問題に目が向けられていく。
そして、緑が多い、空気が綺麗、天災害がない、紛争や戦争がない・・・と社会が置かれている環境、世界へと視野が広がっていく。
人間は誰もが1番身近な自分自身のことから考え始め、そして世界を考えるという順序になる。
「個人を大切にする」「誰一人取り残さない」そのための社会政策をやっとここからご紹介。(本当に前置きが長い)ここから本題。
デンマーク流ピザの分け方
デンマーク国民が納めた税金が、国民にどのようにして平等に分配されているのか、デンマークで出会った最強日本のおじいちゃんはピザを使って説明する。
「一枚のピザを三人で分けて食べるとき」
左のピザは一枚のピザをAさん、Bさん、Cさんの三人に同じサイズに切り分けた。三人とも等しく分配する。この考え方が日本の一般的な平等に対する理解。
右のピザはAさん、Bさん、Cさんのピザの大きさは同じではない。なぜこうなるのか。それはAさん、Bさん、Cさんがそれぞれ「必要なピザの大きさ」が違うから。つまり誰が1番支援を必要としているかを話し合った結果、1番お腹を空かせているAさん(高齢者や障がい者)のピザが大きくなり、Cさんはお腹があまり空いていないので少なくても満足ができる。ただし、1番大きなピザを食べたからといって、Aさんの支払額が大きくなるというわけではなく、支払額はそれぞれの収入に応じて決めるというのがデンマーク流の平等な切り分け方で、支払額はAさんが全体の10%、Bさんが30%、Cさんが60%だったりする。1番食べたAさんが1番安い支払額。日本人の理解している平等とデンマークの平等では少し意味が違ってくる。だから、デンマークの平等は公平という言葉に置き換える。デンマークでは国民が収めた税金を「必要な人に必要なだけ」分配するというやり方を持っている。
そうして国民から集めた税金で、教育費は大学まで無料。医療費も無料。67歳になると年金が受給できる。無料なら全員が大学へ進学するかというとそうではないし、医療費が無料だからといってわざと病気になる人はいない。無料だから全員同じ処遇を受けることを平等とは言わない。その人その人に合ったものが与えられる、あるいは分け合う。要するに公平、これがデンマークの仕組み。
世界一貯金が好きな日本人。デンマーク人は貯金をしない。
一生のうちの家計のうち、教育・医療・老後が国によって保障されるデンマーク人。お給料は半分持っていかれるけど、それでも新卒で25万円ほど手取りがあるみたい。それに半分税金として持っていかれたお金は国の管理によって教育・医療・福祉事業に充てられ、その恩恵が十分に受けられるのだから、貯金なんて必要ない。
子供を産み、育てるための貯金、必要ない。
親の所得が低くても、希望すれば大学まで無償で通える。
老後のための貯金、必要ない。
大病に罹るかも、といういざという時の保険、必要ない。
国がやります。
手元に残ったお金(手取り)で、美味しい食事を食べましょう。旅行に行きましょう。経験に変えましょう。ギャップイヤーを使って世界一周がしたいな。
【教育】18歳で子どもは自立
さらに教育という面でいうと、デンマークでは18歳になると子どもは親から独立するもの(一人暮らしなど)という価値観が当たり前であり、国がその子どもをサポートする。
大学は無償な上、大学生はSUと呼ばれる返済不要の奨学金がもらえる。コペンハーゲンなどの大都市では不十分なところもあるみたいだが、そのSUという奨学金で大学生は自立した生活(一人で衣食住を成り立たせる)が送れる仕組みとなっている。
※大都市の大学に通う学生がこの奨学金の額では足りないと抗議を起こして実際に額が引き上がるなんてこともあるらしい。さすが民主主義国家。
だからこの間出会ったデンマーク人のおばあちゃんは子どもが45歳くらいの時に独り立ちしてから世界85ヵ国くらい回ったんだって言ってるおばあちゃんもいた。
【福祉】高齢者は専門家が介護します!
日本では自分の親の介護等で休職せざる負えない状況がしばしばあるが、デンマークでは高齢者のケアは専門の職業に就く人がみるのが一般的。親子というアイデンティティーは人生が終わるまで親と子のままで、決して「介護する側」と「介護される側」という姿に変化しない。
親の中でも子どもにお世話されたくない、もう子どもは自分の手を離れたのだから、と考える人も多いのだそう。
そしてそういったソーシャルワーカーを目指す学生たちは学生のうちからお給料が国からもらえる仕組みになっている。これも国民から集めた税金から。
日本の未来への展望
住みよい国にするため、教育・医療・福祉を国が保障する。
全て国の事業である。
だから私は、暮らしやすさを手に入れるために、「企業レベルの努力」でどうにかなるには限界があるって思ってしまう。「国レベルの努力」が必要に感じてしまう。デンマークのやり方はデンマーク人の考え方・価値観に合っているからこそ幸せにつながるわけで、そっくりそのまま日本に通用するとは思っていない。
税金が引き上げられるってだけで一大事の日本。
日本は民主主義国家じゃないから。
アメリカナイズされた資本主義国家じみてるから。
競走大好き社会だから。優越をつけたがるから。
だけど、どうにかこうにか、歩み寄って、中間地点の落とし所を見つけられたら「住みよい国」になるのかな。
私的には日本が生み出している製品って本当に質の良いものばかりだからもっと商品価値上げて、その分上がった利益や経済で、もっともっと上手く循環させられないのかなって思ってるよ。(でもビジネスに疎い何もわかってないただの凡人の甘い考えだけど)。売値を上げても良いくらいの製品たくさんあるのに。物価安すぎるよって思う。それでもっと地球や人に優しい事業をやっていこうよって思ってるよ。(まずは勉強しろ)
私は日本人として日本が大好きだしこれからも日本で暮らしていきたい。
私があと何十年も生きて、私が死ぬときに、「おばあちゃん良い国を作ってくれてありがとう」っていってもらえるように何かできることを考えていきたい。
まずは個人を大切にすること。
個人を大切にするから前後左右の人を大切にできる。
全員がそれをやったら個人が集まって社会になる。良い社会になる。絶対。
これが私がデンマークで教わったこと。
学んでいること。
出会いに感謝。挑戦に感謝。
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