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SUで学んだことー「New Media Management」のご紹介

そういえば肝心の、留学で何を学んだかという話を今までしていなかった笑

今回は、私がSU(Syracuse University)でどんなことを学んでいたか、についてのお話です。

私が通ったのは、SUにあるメディア系大学院「S.I.Newhouse School of Public Communications」、通称ニューハウス。学んだコースの名前はNew Media Managementという(現在はAdvanced Media Managementに改称)。ちなみにNewhouseの名前は、新聞や雑誌メディア王で学校に多額の寄付をしたNewhouse氏にちなんだものです。

Newhouseはざっくりメディア業界全体を網羅していて、学べるコースはジャーナリズムに関するもの、PR(広報)に関するものなど幅広い。大学院は現在、15のコースを提供しており、例えば「Magazine, News and Digital Journalism (MND)」や「Television, Radio and Film(TRF)」とといった様々なジャーナリズムの媒体や手法別に学べるものや、「Public Diplomacy and Global Communications」というように外交行政を学び、広報のプロを目指すコースもある。

じゃあ、New Media Managementって何…?っと思いますよね。
これが、いつも説明が難しい。ざっくり説明すると、今後のメディア業界を予測したり、未来にどんなスキルや強みが求められるかを考えたり、実際にそういったスキルを学んだり…といったことをするコースだ。ジャーナリズムそのものというよりは、周辺の様々な角度からジャーナリズムの意義を問い直し、未来に独り立ちできるよう起業マインドも身に着けよう…、という感じだ。

これでも「なんのこっちゃ?」と思いますよね。

具体的な授業をいくつか紹介する。

まず、ジャーナリスティックな授業から。
「Media Law」。タイトル通り、ジャーナリズムとジャーナリストに直接関わる法律を学ぶ。アメリカには「First Amendment」と呼ばれる「アメリカ合衆国憲法修正第一条」がある。これは「表現の自由、報道の自由」などを定めたもので、特にメディア人にとっては拠り所ともいえるとても大事な条項だ。ちなみに、ニューハウスの建物の中で一番新しいニューハウス3という校舎は外壁がガラス張りで、そこにこのFirst Amendmentの文言がでかでかと描かれている。それぐらい、メディア人にとって誇りと責務の象徴だ。

このFirst Amendmentを皮切りに、「報道の自由はどこまで許されるのか(隠しカメラ・録音は許されるか)」「名誉棄損はどうやって立証する?」、報道の責務はどこまで許されるか…といったトピックを、実際の判例をもとに議論し、「こんな時は訴えられるリスクがある。が、どこまで報道すべきか」といったようなことを考えていく。それこそ「ウォーターゲート事件」のような超有名な実例もたくさん、登場する。

実際に記者として働いていると「こういう時はどうしたらよいか?」と悩む状況に直面することも多々あるが、論理的に根拠を学んでいくのはとても面白い。この授業こそ、ジャーナリスト人生の最初に学ぶべきもの!と思う。

「Issues In Media Management」。
タイトルがそそりますよね?
この授業では、未来を予測する経済書やAI、デジタルスキルについて古今東西の知の巨人が書いた書籍をたくさん読まされた。必ず全員がプレゼンの用意をさせられるのだが、翌日の授業では教授に指名されただけ人が前に出てプレゼンをする、というなかなかにスリリングな形態でした。教授の意図も書籍の内容もなかなかに抽象的でつかみどころが難しかったが、それでもクラスの中であーでもない、こーでもないと議論するのは楽しかった。

実はこの2つが、留学して一番最初の夏学期に行われたものだ。2つだけ?と思うかもしれないが、それぞれ3時間ずつのコマが月~金まで、6週間続く。アメリカに渡っていきなりの洗礼、英語で読むのも話すのも苦労しながら必死で食らいついていった。

ちなみにこの夏学期の授業は「Bootcamp」と呼ばれ、あまりの厳しさに毎年脱落者も出るという…


Media Lawと、Issues In Media Managementの授業で使った書籍。Media Lawは2日で1チャプター、IMMでは1週間に1冊の本を読んでプレゼンするハードなスケジュール

他の授業には、これからの時代に必要不可欠なデジタル系の授業も。

「Designing Interactivity」。これは、ウエブサイトのページなどを作るためのコーディングを学ぶ授業。基礎を一通り学ぶので、ページ制作にどんな約束事があるか、どんな決まりがあるかを知ることができる。

「Web&Mobile Story Production」。
文字通り、インターネットやスマホ向けにこれらのデバイスを使って動画や音声番組を作る授業。「1分でSUに来て得たものを表現する動画」「履歴書替わりになるような自己紹介の動画」「できるだけ多くの効果音を使ったポッドキャスト」など、教授からお題が出され、それに沿う動画内容を発案・企画し、動画を作成するということを繰り返した。
私は今までペン(文章を書く)での記事執筆しかしてこなかったので、もっと表現方法を広げたいとこの授業を取った。文字とはまた異なる着眼点や素材集めが必要だと気づき、学びの多い授業だった。

「Applied Research in Content Management」
Hubspotの学習ソフトやGoogle Analysysを学び、コンテンツをいかに効果的にターゲットに届けるか、検索上位に表示されるようにはどうしたらよいか…などマーケティングを考える。学期の後半には、それまでに学んだ知識を生かして実際の企業やNPOに対し業務改善の提案をするというコンサルティングのフィールドワークもあった。これがとても楽しかった!

実はこの授業の教授も、ゲストとして話してくれたりコンサルティングの顧客となってくれたりしたNPOの代表者も、どちらも元大手メディアの記者。「記者の第二の人生にはどんなものがあるのか?」と興味津々だった私にとって、目の前に一気に2人も素晴らしいロールモデルが現れてくれたからだ。

ちなみに、MediaLawを教えてくれる教授も、元記者だ。こうやって記者のスキルや経験を活かし、さまざまな第二の人生を活躍している人が多いことも(もちろん現役記者もいる)、アメリカのメディア大学院で学ぶ利点ではないだろうか。

このお話もまた、別の機会に書きたいと思う。

授業の話に戻る。メディア系コースだが「Management」観点を学ぶのも主旨なので、ビジネス系の授業も多い。

「Financial Accounting(簿記)」
…もう、ほんとに、この授業には苦しんだ。教授も素晴らしい人だし、ビジネスには必須とはわかっていても、頭に入ってこない。英語でもわからないのに、日本語でもさらに意味がわからない😢ただただ、落第だけを避けるために必死で勉強していた。

「Emerging Enterprise Consulting」
スタートアップやスモールビジネス(中小企業や個人経営)を顧客に、コンサルをする。どうすれば売り上げ上がるか、コスト削減できるか、どのように事業拡大したらよいか。相手は、教授が選んだSyracuseや周辺に実際に存在する顧客。自分で希望が出せたので、私はSyracuse近郊で大麻草を育成しCBD事業に乗り出そうとしている農園を顧客とするチームに所属した(ちなみにNY州では娯楽用大麻の使用・所持は合法です)。コンサルそのものの理論や仕組みを学びながら、別の日には農園を訊ねて経営者に話を聞いたり、写真を撮って資料を作ったり。最後には顧客設定や販売経路、CBDに関連した地元貢献事業などなどをクラスの全員の前で提案した。

そして、私がとても学びたかった分野の授業も!

「Trendspotting in Digital Media」
「Entrepreneural Thinking in Media」
「New Ventures in Media」
 「Case Studies in Media Management」

どうでしょうか?皆さまもこのタイトルを見ただけで、わくわくしませんか?

メディア業界の最新の動向(特にAIの誕生がどう影響するか)を議論・予測し、その未来ではどのような考え・スキルであれば生き残れるかを議論する。実際に起業したビジネスの経営者を招いて話を聞く。さらに、我が身を振り返って自分の強み、嗜好をあぶりだして具体的なビジネスに落とし込むー。

これらのことを、たくさんの本も読んだりレポートを書いたりもするものの、基本的には学生全員と教授のディスカッションで考えていく。

これらの授業に共通しているのは「起業家マインド」を身に着け、養い、発揮するーということだ。別に必ずしも事業を起こす必要はない。何にせよ生き残るには、自ら課題を見つけ解決策を考えていくという「起業家精神」が必須だと思うのだ。

いずれも同じ教授が担当する。私がSUで一番好きで、尊敬する教授だ。
大変だったけど、この教授の授業の時は毎回とてもわくわくして、教室に行き教授やクラスメートに会うのがとても楽しかった。一度、大雪で休講になった時は本気で悔しかった。

この「起業家」についても、また別の機会にお話ししますね(そればっかり!)

以上で紹介した授業は、必須も選択もあります。私がNew Media Managementのコースで、主に学んだ授業をご紹介しました(『沈黙は降伏』の回でご紹介した教授の授業は入れていません)

この次は「なぜ私はNew Media Managementに進んだか」をお話しますね。




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