【雑記】世界は”いびつ”だ〜意思決定の美学〜
「情報の非対称性(Information asymmetry)」という言葉がある。
これは、市場における売り手と買い手の間での情報格差、ならびにそれに伴うモラルハザード等の諸問題を指す言葉だ。
この言葉が象徴するように、私達が生きる世の中は、”いびつ”な構造を呈しているのだ。
周りを見渡すと、この事実を十分に理解しないまま(或いは、薄々気が付いていてもその重要性について深く考えないまま)大人になっている人が意外と多いことに驚く。
私は、たとえ中学生くらいの小さな子供に対してであっても、世の中が「情報の非対称性(Information asymmetry)」に溢れているという事実を教えることを厭わない。
なぜなら、この事実を知っているか否かで、意思決定の質が変わるためだ。延いては、その意思決定が、その人の人生を大きく左右しうると、信じている。
「情報の非対称性(Information asymmetry)」とは
私は、「情報の非対称性(Information asymmetry)」とは、資本主義の一種の誤算だと思っている。
アダム・スミスが提唱した自由競争に依拠した資本主義社会は、18世紀イギリスに端をなし、現在の先進諸国等にも引き継がれている基本理念だ。
「近代経済学の父」たる彼の思想は、私たちの生きる基盤を創ってくれた偉業そのものである。彼の功績は尊敬に値する。
しかし本日は敢えて、自由競争の理論に基づく市場経済の誤算について考えてみたい。
自由競争の下では、市場は「(競合商品よりも)良いもの」を売ることで成立する。これは、スミスが提唱した言葉を借りると、「個人の利己的な行動」、即ち売り手側の自然な行動だ。
つまり、売り手側は、自分の商品の良い情報を全面に謳う。他方で、商品の欠点やリスクについては、隠したほうが得だ。
勿論、昨今の日本では、法規制等により、産業/商材や企業活動全般の情報開示義務が厳格化してきており、特に人命に関わるような欠点やリスクが隠蔽されることは基本的にない。
それでもやはり、未だ、買い手側が売り手側と同等の網羅的な情報を得ることは、難しいケースが殆どだ。特に、商品の専門性が高まるにつれ、買い手側は、その良し悪しを判断することが難しくなる。
そう、買い手側である私達は、人生に関わる重要な意思決定においても、網羅的で平等な情報を得られないまま判断せざるを得ないことが殆どなのだ。
私達はこのような“いびつ”な構造の社会で生きているということを、たとえ子供であってもきちんと認識しておいた方がいいと、私は考える。
意思決定の美学
①第三者機関による評価を参考にする
では、そのようないびつな市場構造で、後悔しない意思決定をするには、どうしたらいいだろう?
人生を左右するような選択をする際、直感や世間のイメージに囚われて決断をすることは、リスクが大きいと、私は考える。
まず参考にすべきは信頼できる第三者機関による評価だ。例えば、進学先の大学を選ぶ際であれば、イギリスのTimesや、米国のQSなどが毎年発表している世界大学ランキングが参考になる。それぞれ、評価基準も公開しており、信頼できる情報源だ。
他方で、「女子校だとなんとなく結婚に有利そう」「早慶以上なら就職に困らなそう」、或いは「女の子で高学歴すぎるのはちょっと…」と言った、どこからともなく植え付けられた世間的イメージが先行した進学先選びは、率直に言うと根拠に乏しい。
②内情をよく知っている人からアドバイスを貰う
しばしば、医師家系や経営者家系の親が、子供に自分と同じ道を歩んで欲しいと願う話を耳にする。
TVドラマ等では、そういった家庭の子供が親に反発して夢を追う物語が描かれ、共感を得ていることもある。
しかし、私の私見としては、その世界の良いところも悪いところも両方を経験してきた親のアドバイスというのは、かなり説得力があると考えている。
きっと、親はその世界で辛い経験も苦労も沢山してきた上で、他の道を歩んだ友人や知人等と比較して、やはり自分が恵まれていることを知っているのだろう。或いは、辛いことが多くても、それ以上に大きなやりがいがあり、人の役に立つという感動があり、仕事に誇りを持っているからこそ、子供に同じ道を歩んで幸せになって欲しいのかもしれない。
よって、少なくとも私は、幼い頃から、そういった親の想いを、「信頼できる情報」として価値があるものと捉えている。現に、私は一度も彼等の想いを無下したことはない。
親というのは一例に過ぎない。親でなくても、買うか買わないか/進むか進まないかを判断する際、経験者の声を参考にすることは有用だ。
③自ら足を運んで実物を見に行く
ネットで情報が溢れており、決算も簡単にできてしまうご時世であるからこそ、大切な意思決定をする際は実地に足を運んでみることが重要だ。
例えば、就職先を選ぶにしても、可能であればオフィスに足を運ぶなり、工場や店舗を訪問するなりして、自分の目でその世界観を感じることで、そこで仕事をする自分が想像できるかを判断することが重視だ。
翻って、例えば企業の株式を買うにしても、本当に投資したいと思える企業かどうかは、経営者に会ってみないと分からないケースもある。
2023年、大きな買い物や重要な意思決定をするかもしれない貴方にとって、少しでも参考になれば嬉しい😊
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